文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

「シーズンの延長」という意識で挑む、東アジア選手権

5月30日にメディア公開された日本代表合宿で、比江島慎が精力的に身体を動かす姿が印象的だった。セットオフェンスの練習では、同じグループになった小野龍猛と盛んに言葉をかわし、細かな確認を重ねる。身体はよく動き、意欲的にトレーニングに取り組んでいるように見えた。

チャンピオンシップのセミファイナルで、比江島の所属するシーホース三河は栃木ブレックスに敗れた。接戦を演じながらも、最後の最後で比江島がミスを犯し、逆転負けを喫したのだ。敗退直後は「頭が真っ白になって何も考えられない」と語っていた比江島だが、代表に合流したことで「自分でもびっくりするぐらい切り替えられているので大丈夫です。多分、みんなが思っている以上に切り替えられています」と語る。

代表チームに加わっての手応えも感じている。「シーズン中から合宿をやっていたので。みんなの動きもだいたい決まっていて、それも分かっていますし、僕の役割も把握できています。仕上がっています」

失意のセミファイナルはもう過去のこと。「その日はめっちゃ落ち込んで、次の日になったら切り替えられます」と、普段から切り替えはできるタイプという比江島。「負けた日は自分のダメだったシーンが頭の中に流れたりします。次の日も多少は落ち込みはあったんですが、すぐに代表に行ったことで助かりました。一人だけだったら落ち込んでいたと思うのですが、みんなと話をしたりできたので」

メンタルだけでなく身体的にもタフな戦いになる。60試合のレギュラーシーズンとチャンピオンシップを戦い、疲弊しているのは間違いないが、比江島は闘志十分だ。「ルカコーチはシーズンの延長だと言っているので、僕もその意識でいます。あと少し、この東アジア選手権が終われば休みがもらえると思うので、そこをモチベーションにやっていきます」

代表のバスケットを「100%に近いぐらい理解している」

日本代表でも、比江島に求められる役割は変わらない。「自分の役割はピック&ロールなので、そこを使いながら相手のディフェンスを収縮させて、アシストだったり自分の得意なドライブから得点を取っていきたい」と抱負を語る。

ルカ・パヴィチェヴィッチがやってきた昨秋から、ピック&ロールの活用には徹底して取り組んできた。今となっては高校生のチームでも使うピック&ロールだが、ルカコーチはその精度が違う。突き詰めたピック&ロールは今後の日本代表の武器になると比江島は確信しているし、その仕上がりに手応えも感じている。

「最初はルカが言っていることを理解するのにも時間がかかりました。どういうバスケをするのかも分からなかったので」と、ルカコーチが来た当初と今を比江島は比較する。「今はルカがやるポイントが分かっています。(練習中に)プレーを止められても、指摘されるポイントは分かっていて、100%に近いぐらい理解していると思います」

チャンピオンシップでの屈辱は代表で晴らす──。比江島は燃えている。「僕は出ても多分20分ぐらいで、キツくなったら交代すると思うので、最初からアグレッシブに行きます」と宣言。自他ともに認めるスロースターターの比江島だが、明日開幕する東アジア選手権ではティップオフの瞬間から『比江島タイム』を見せてくれそうだ。