晴山ケビン

東日本大震災による津波の被害を受けた岩手県の陸前高田市で行われた、子供たちにスポーツの機会を提供することで勇気づけるイベント『東北絆カップ』に、地元出身の晴山ケビンが駆け付けた。「バスケで故郷に恩返しがしたい。子供たちに何か良いきっかけを与えられれば」と言う晴山は、ここで同郷の子供たちに顔と名前を覚えてもらい、次はBリーグのコートで活躍する姿を見せることを誓う。京都ハンナリーズから千葉ジェッツへの移籍が決まり、まさにキャリアの勝負どころを迎えている晴山に、移籍についての心境と新シーズンの抱負を聞いた。

「千葉で活躍できれば『本当に勝ち取った』と言える」

──まずは京都での話を聞かせてください。もともとBリーグ1年目の川崎でプレータイムをなかなか得られずに京都へ移籍しました。その京都で先発になり、この2シーズンでプレータイムも伸びて結果も残しました。京都での2シーズンでは手応えを得られたと思います。

そうですね。京都に行った時はプレータイムを得ることが目標だったので、たくさん試合に出してくれたことにはもちろん感謝しています。でも、試合に出て気づくこともすごく多くて、自分に足りないものがこんなにあるんだと分かる2年間でした。

最初はとにかくプレータイムが欲しいと思っていたのですが、試合に出るようになると、他のチームメートの代表として選ばれてコートに立っているんだから、最低限の活躍をしなくてはならないと考えるようになりました。自分はそこでもっと自覚を持ってプレーする必要があるし、なおかつ数字がモノを言う世界です。自分はシューターとして使われていたので、それならシュートの確率はリーグ1位を目指さなくてはいけない。そこで自分が1位にならないとチームは勝てない。そんな考え方をするようになったのは自分の中での明確な変化です。

──シュートの成功率でリーグトップとは行きませんでしたが、それでもプレータイムは30分近くまで伸びて(28.2分)、60試合すべてに先発出場。スタッツも軒並み伸びました。それでも足りないものを感じていたのですか?

いろんな考え方がありますけど、プレータイムを勝ち取ったというよりは、ベテランもルーキーも多いチームの中で自分が使われたと感じています。「出させてもらった」という感覚です。プレータイムを得ることを目的に京都に行ったので、それはすごくありがたいんですけど、「もっと力をつけなきゃいけない」と思うこともたくさんありました。今回は千葉に移籍しますが、同じぐらいの年代の選手が多くて、僕よりもレベルの高い選手がいます。そこで自分がどれだけできるか、そこでも活躍できるのであれば「本当に勝ち取った」と言えると思っています。

晴山ケビン

「強みはディフェンスとリバウンドとルーズボール」

──シュート成功率の話が出ましたが、晴山選手はそもそもオールラウンドな能力が売りで、特に京都で重用されたのはハッスルの部分だと思います。ベテランが多いし、両外国籍選手が疲れ果てたら戦えないチームで、その分も誰かがエナジーを出さなきゃいけない。そんな状況で晴山選手が長くコートに立って、スタッツに残らない部分も印象に残りました。

自分の強みは高校の時から変わらずディフェンスとリバウンドとルーズボールで、そこさえ崩れなければどこに行っても試合には出られるんじゃないかと思っています。チームがどういう状況であれ、スタッツ以上に大事なことを自分から率先してやる選手であり続けたいので、そう評価してもらえるのはすごくうれしいです。

──エナジーを出す自己犠牲的なプレーがベースとしてあって、さらに3ポイントシュートを高確率で決めることでチームを勝たせる選手になる、というわけですね。

決めなきゃいけないと思うと入らないものなんですけどね(笑)。それもあるので無心でやるのがベストなんですが、なかなか難しいです。

──今回の移籍は、晴山選手が出たいと思ったのが先か、千葉からのオファーが先か、どちらから始まったのですか?

京都はチャンピオンシップに行くことができずに早くシーズンが終わってしまったので、来シーズンに向けた話し合いがスタートしていました。実は、千葉から話をいただいた段階では京都でもう1年頑張ろうという話が進んでいたので、京都に申し訳ないと思って浜口(炎)ヘッドコーチに相談しました。そこでヘッドコーチが「もし俺がその立場で千葉からオファーが来たら行くよ。お前の人生だから気にするな、応援するよ」と言ってもらいました。それで「すごく良い人ですね、炎さん」と僕が言ったら、「こうやって良い人ぶって、俺は京都に残ってほしいと思っているだけだから」って(笑)。本当に全部をさらけ出してくれたヘッドコーチの言葉に、本当に救われました。

──京都での2シーズンでプレータイムを得てプレーヤーとして正しい評価も得られていました。それでも千葉からのオファーに魅力を感じたのは、優勝を争いながらプレーできることが大きいですか?

そうですね。昨シーズンが終わった時に「優勝したい」と強く思うところが出てきたので。最初は「プレータイムが欲しい」で、「数字も残していきたい」になり、次には「優勝したい」と思うようになったんです。東芝時代にも優勝を経験させていただきましたが、その時はベンチ外から見ている立場でした。優勝できたのはうれしかったですが、みんなと同じぐらい「やったぞ!」という気持ちにはなれなかったのが正直なところで、それはやっぱり悔しかったんです。もう一度優勝を経験して、次は自分が貢献したと言えるような日を千葉で迎えられたらと思います。

晴山ケビン

「求められたことは全部できるオールラウンダーに」

──対戦相手として見ていた千葉のバスケットボールに、自分のプレースタイルがどうハマるとイメージしていますか。

ディフェンスをベースにして走る、ハッスルするというのはピッタリだと思います。自分のスタイルに合わせてもらおうとは一切思っていません。どんな形だろうと、泥臭いプレーでもチームに貢献できればいいです。求められたことは全部できるオールラウンダーが僕の目指すところです。基本的にはディフェンスとリバウンド、シュートが売りというのを評価してくれたと思っているので、そこをやりつつ自分でスキルアップもしてチームの力になっていきたいです。最初の貢献としてはディフェンスリバウンドの部分じゃないかとざっと考えていて、そこから認めてもらって自分の良さをどんどん出したいですね。

──ポジションは2番になるでしょうか、3番になるでしょうか。

どちらもやると思います。千葉も2番とか3番よりもウイングという考え方だと思います。

──千葉ブースターの心理としては、晴山選手の加入よりも石井講祐の退団のインパクトのほうが大きいのが本音だと思います。彼らの心に空いた穴を埋められるでしょうか?

成績はもちろん石井さんのほうが上ですけど、僕はその成績以外のところ、ディフェンス、リバウンド、ルーズボールの3つが持ち味だと思っているので、そこを120%出してチームに貢献します。千葉のファン全員に「晴山ケビンが千葉ジェッツにいるぞ!」と印象づけるぐらいのハッスルプレーをするつもりなので、是非とも背中を押してもらいたいです。

──晴山選手は優勝したいし、千葉は2シーズン連続でファイナルで敗れて、Bリーグ優勝だけを見据えていると思います。目標達成のために、晴山選手は何をしますか?

何でもやりますよ。そしてみんなと一緒に優勝します。千葉に来たからには「晴山ケビンがいたから優勝できた」と言われるぐらいのインパクトを残すプレーヤーにならないといけないと思っています。逆にクラブからも「優勝するために君が必要だ」と言っていただいたので、その期待に120%応えて絶対に優勝します。目標はそこだけなので、練習から高いレベルで取り組んでいきます。

──千葉をBリーグ王者に押し上げるほどの働きができれば、日本代表入りも見えてくると思います。代表についてはどう考えていますか?

もちろん、欲はありますよ。メラメラと狙っています。でも正直、もうオリンピックまで1年なので、今から新しい選手を入れるよりも今いる選手でチームワークを深めるべきだとも思います。なので僕としては現実的に代表に入るかどうかは抜きにして、今の代表選手だったり見ている人たちに「晴山って代表でもやれるよね」、「イケるんじゃね」って言ってもらえるようになることを目標に、モチベーションでは(八村)塁や馬場(雄大)に負けないように頑張ります。