
手術は回避も『ハーデン効果』は絶大だっただけに痛手
キャバリアーズは開幕からケガ人が多く、優勝を目指すチームにもかかわらずなかなか勝ち星を伸ばせず、昨年末の時点で18勝16敗と貯金をほとんど作れなかった。ここでフロントはテコ入れを決断。ケガ続きで成長が頭打ちになっていた生え抜きのダリアス・ガーランドを放出し、ジェームズ・ハーデン獲得という勝負に出た。
1月から復調気配にあったチームに、ハーデン獲得は『特効薬』となった。キャブズ加入後のハーデンはメインのハンドラーを務め、18.9得点、8.0アシストを記録。そしてチームは6勝1敗と結果を出している。
ただ勝つだけでなく、エースのドノバン・ミッチェルの負担が大きすぎる問題も目に見えて改善した。ジャレット・アレンはハーデン加入後の8試合中7試合でダブル・ダブルを記録し、『ピック&ロールの達人』と組んだ成果がスタッツに表れている。より多彩なプレーのできるエバン・モーブリーはケガがあってハーデンと一緒にプレーする機会がまだ少ないが、彼のカッティングなどアレンとの息の合った連携にハーデンが絡むようになれば、攻撃力はさらに増すだろう。
ただ、ハーデンにとってはまだ順応の過程だ。現地2月24日のニックス戦に109-94で完勝した後、彼は「今はまだ何が機能して何が機能しないか、そこからどう改善していくかを見ている段階だ。NBAで長くプレーしているから、選手たちの好みやプレーの傾向は理解しているけど、実際に新しいチームでプレーすると勝手の違うところはある。そこに順応しつつ、得点とプレーメークをして、良いリーダーになろうと努めている」と語った。
ドノバン・ミッチェルは長らくの相棒だったガーランドとの別れを悲しんでいたが、今は意識を切り替え、ハーデンがチームを一つ上のレベルへと引き上げてくれると確信している。「ジェームズは単にパスが上手いとかボールを運べるのではなく、チーム全体を動かすことができる」と彼は言い、「どちらかがベンチにいることが多かったから、僕ら2人のプレーの構築はまだこれからだ。最初は彼がボールを持って僕がスペースを作るか、その逆か。これから試合を重ねるにつれ、2人の連携はより良いものになっていくと期待している」と続けた。
ニックス戦はこの時期としては珍しく、優勝候補の2チームが主力にケガ人がほとんどいない状態での対戦となった。その試合でニックスにリードを許したのはティップオフ直後の1ポゼッションだけという快勝を収めたことは、大きな自信に繋がる。デニス・シュルーダーの経験、キーオン・エリスの果敢なディフェンスと、ハーデンだけではない補強の効果も確認できた。
ヘッドコーチのケニー・アトキンソンは『ハーデン効果』をこう語る。「彼の加入でチームに新たな自信が芽生えた。その自信がプレー強度を引き上げ、守備への意欲を強めるマインドに繋がっている。以前は少し欠けていた勝利への執念を取り戻しつつある」
しかし、過酷なNBAですべてが順調に進むことはあり得ない。ニックス戦でハーデンは右手の親指を痛めていたが、検査で亀裂骨折との診断を受けてバックス戦の欠場が決まった。アトキンソンは現時点ではどの場面で骨折したのか分かっておらず、復帰の予定もこれから検討すると語った。『ESPN』はハーデンが手術を行わず治療を行うと報じている。患部を固定しての早期復帰も可能だろうが、プレーの質は落ちるし、さらなるケガに発展するリスクもある。その一方で万全でなくとも試合数をこなすことでハーデンと周囲の連携を高め、今のチームの勢いを継続させたい意向もあるはずだ。
36歳のハーデンは自身初のNBA優勝に意欲を燃やしているが、大ベテランの年齢だけに完璧なコンディションでシーズンを走り抜くのは不可能に近い。現実と理想の間で、慎重な舵取りが求められる。