志村雄彦

昨シーズンの11勝から、チャンピオンシップを狙える位置に

Bリーグは2月15日の試合を終え、約3週間にわたる代表ブレークに突入。今回がレギュラーシーズンにおける最後の長期中断となり、各チームにとってはシーズンクライマックスに向けて英気を養う大切な期間となる。

B1は全26チームの内、ポストシーズンに進めるのはわずか8チームのみと、世界的に見てもかなり狭き門だ。シーズンの65%を終えた今、すでにチャンピオンシップ出場の可能性がほぼ潰えた状態のチームも少なからずある。仙台89ERSは良い意味でのサプライズを起こし、この過酷なサバイバルレースで生き残っている。

昨シーズンの仙台は11勝49敗と前年の27勝33敗から大きく失速する厳しい1年を送った。しかし、今シーズンは現時点で23勝16敗と、B1では過去最高のペースで勝ち星を積み重ね、チャンピオンシップ最後の切符となる8位の琉球ゴールデンキングスと3ゲーム差と射程圏内につけている。

仙台はシーホース三河のアシスタントを務めていたダン・タシュニー新ヘッドコーチを招聘し、2019年のNBAドラフトで全体6位指名を受けたジャレット・カルバーにレバノン代表のセルジオ・エル ダーウィッチ、船生誠也、杉浦佑成に岡島和真らを獲得。新戦力が期待通りにチームにフィットしていることがこの大きな躍進を支えている。昨シーズンの不振を受け、チーム編成の抜本的なテコ入れを行なった成果がしっかりと出ている。

この改革を主導したのが志村雄彦社長だ。2008年から2018年にかけて仙台で長らく活躍し、160cmのサイズ不足を補ってあまりある圧倒的なリーダーシップと存在感でチームを牽引。『小さな巨人』の愛称で呼ばれたポイントガードで、仙台高校、慶應大学でそれぞれキャプテンとして日本一を経験している。

仙台はどんな苦しい状況であろうとも歩みを止めることなく、泥臭く乗り越えていこうという想いを込めた『GRIND』というチームカルチャーを大切にし、堅守とハードワークを基本とした粘り強いチームを作り上げてきた。このGRINDの精神を引き続き大切にしつつも、今シーズンはトランジションを重視することで、これまでにないオフェンスの爆発力を備えるチームへと変貌した。

仙台89ERS

「みんなと同じことをやったら絶対に無理」

この変革に至った背景を志村社長はこう語る。「Bリーグでずっと良い成績を残している強豪は、帰化選手の優れたビッグマンを獲得してポゼッションゲームで勝つスタイルが多いのでメンバーの編成も近くなっています。そういった強豪チームと同じスタイルを目指しても、勝つためのアップデートはできない。だから違う方向に進むことをコーチと話して最終的に決めました」

そして、タシュニーヘッドコーチの下、チームの基本戦術も大きく変えた。「彼のスタイルとして、オフェンスはまずはファストブレイクを多くしていくなど効率性を求め、ゴール下か3ポイントシュートに絞っています。去年までネイサン・ブースはミドルレンジのジャンプシュートが多かったですが、(戦術の変更を受け)今シーズンは大きく減っています」

現在リーグ1位の平均25.4得点を挙げているカルバーは新戦力の中で最も目立つ存在だが、他の選手たちの貢献もかなり大きい。「(外国籍3名と帰化/アジア枠1名が同時に立てる)来シーズンからのルール変更を見据えて、外国籍のペリメーターの選手が増えると思っていました。そこでウチとしては、セルジオが非常にフィットしていることが大きいです」

また志村社長は、昨シーズンは本来の力を発揮できずにいた船生や杉浦といった中堅選手の復活についても、このように語った。「彼らと話していた時、(活躍の場を求めて)飢えていると感じました。誠也は広島でチャンピオンを経験した後、結構出番を得られずに苦しんでいて、もう1回自分の力を証明したいみたいな部分もあったと思います。佑成も同じで、そういうマインドを持った選手は我々の『Grind』のカルチャーにすごく合うと思います」

Bリーグ発足当初に比べると、仙台も確実に財政基盤は強固なものとなり、資金力も増している。ただ、それでもリーグ上位チームとは確かな壁がありマネーゲームでは勝てない。この現状の中で、「みんなと同じことをやったら絶対に無理で、違うことにチャレンジしたことで今この位置にいると思います」と、変化を恐れないチャレンジ精神が今のステップアップを導いた。

勝ち越しているとはいえチャンピオンシップ圏外であり、今の地位に満足はしていない。ただ、シーズン後半戦に入ってもチャンピオンシップを狙える位置につけていることは、間違いなく大きな進歩だ。3月のリーグ再開後、仙台はダークホースとして大きな注目を集めることになる。