ケシャド・ジョンソン

「文字通り夢の世界。感情は言葉では言い表せない」

今年のNBAオールスターのダンクコンテストは、マック・マクラングが出場を見合わせた。小兵ながら抜群の身体能力と独創的なアイデアを持ち、圧倒的なパフォーマンスでダンクコンテストを制している彼が、4連覇の懸かった大会を回避した理由は、「彼がいると勝ち目のない他の選手が出場を辞退する」との噂を聞いたからだという。

その真偽はさておき、ダンクコンテストにはもう長らくトップスター選手が出場していない。ザック・ラビーンとアーロン・ゴードンが最高のダンク・ショーを見せたのは10年前で、その後は年々エンタテインメント性を落としている。

今年のダンクコンテスト参加者は、カーター・ブライアント(スパーズ)、ジェイス・リチャードソン(マジック)、ケシャド・ジョンソン(ヒート)、ジャクソン・ヘイズ(レイカーズ)の4人。『NBAの顔』と言えるネームバリューはなく、さらにマクラングのように観客を驚かせるパフォーマンスがあったわけでもなく、盛り上がりを欠いた。

本来あるべきトップ選手の不在は、もはや当たり前のこととして受け入れられている。3ポイントシュートコンテストはトップスターが揃い、デイミアン・リラードの登場がファンを喜ばせた。それに比べてダンクコンテストはケガのリスクもあるし、失敗して嘲笑されるリスクはもっと大きい。しかし、レブロン・ジェームズやアンソニー・エドワーズ、あるいはヤニス・アデトクンボが出場すれば、ファンを楽しませることができたはずだ。

昨年のオールスター本戦では選手たちの低調なパフォーマンスが批判され、対応としてレギュレーション変更が行われた。ダンクコンテストも何らかのテコ入れが必須だろう。

ただ、それらすべては今回のダンクコンテストで優勝したケシャド・ジョンソンを否定するものではない。彼は同郷のラッパー、E-40を引き連れて踊りながらコートに現れ、『ラッパー越えダンク』を決めた。決勝では自ら上げたロブを股下に通してのダンクを決め、再びダンスを披露し、続いてはフリースローラインから一歩踏み込んでのウインドミルを決めた。マクラングのような奇想天外なダンクはなくても、この手のイベントは『楽しんだ者の勝ち』であり、ジョンソンはオールスター・ウィークエンドを通して誰よりも喜びを表現した選手だった。

ダンクコンテスト優勝を決めた会見でジョンソンはこう語る。「この場所にいられることに本当に感謝している。毎年ダンクコンテストを見ては、いつかあの場所でみんなを楽しませたいと夢見てきた。僕はオークランド出身で、西海岸をホームだと思っている。西海岸独特のスタイルや雰囲気を感じられたし、夢の中にいるような気分でもあった。夢の中なら何だって可能だよね。ファンの後押しも感じたし、自分の持てる力すべてを出すだけだった」

彼にとってのダンクは「過去のダンクに自分なりの個性を加えて表現するものであり、僕ならではのエネルギーを伝え、観客や審査員を巻き込みながら、自分が何者であるかを伝えようとするもの」だという。

「先人をリスペクトし、そこから学んできた」という彼は、ずっとあこがれてきたダンクのレジェンドたちに認められる栄誉を得た。

「ステージでジュリアス・アービングやドミニク・ウィルキンスと並び、ビンス・カーターやT-Mac(トレイシー・マグレディ)と握手を交わすなんて、文字通り夢の世界だし、その感情は言葉では言い表せないよ。僕はずっと彼らのことが大好きだったけど、今は彼らも僕のことを知っている。これからもっと関係を深めたいと思う。そして、次の世代が僕のダンクを見て真似するかもしれない。そんな世代に会えた時には、僕も彼らに敬意を払い、力になれる存在でありたい」

ジョンソンは2つの大学でプレーし、ドラフトで指名を受けられず、NBAキャリア2年目にして24歳という苦労人だ。「僕は逆境をはねのけてここまで来た。サンディエゴ州立大は注目度の低い大学だったけど、2023年には0.1%の可能性を突破してマーチ・マッドネスの決勝に進んだ。その時に僕は、信仰が自分をどこに連れていってくれるかを知った。今ここにいられるのは神への揺るぎない信仰があったからだ。『ケシャド・ショータイム・ジョンソン』としてこの舞台に立ち、優勝できたことを、主の名において光栄に思うよ」

「僕の旅はまだ終わらない。僕の人生という物語を書いているのは僕ではなく神であり、神は最高の執筆者だからね」