「最終クォーターのディフェンスとリバウンドで勝てた」
「正直、負けゲームでした」。群馬クレインサンダーズとのアウェー第2戦に77-72で勝利した長崎ヴェルカの山口颯斗は、そう試合を振り返った。
リーグ1位のオフェンス力を誇る長崎が第4クォーターまでの40分間で80得点以下だった試合は、これまでのレギュラーシーズン38試合のうち、わずか3試合のみ。うち2試合は1月の中断期間明けのシーホース三河戦と宇都宮ブレックス戦で、オーバータイムまでもつれた三河戦は4クォーター終了時点で72点、宇都宮戦は74点に抑えられて敗戦した。
この群馬戦は序盤から持ち味のトランジションバスケが発揮できない時間が続いた。特に前半は自慢のファストブレイクポイントがわずか6得点にとどまりトータルでも34得点。ハーフコートバスケに追い込まれたことでリズムを崩し、劣勢に立たされた場面では個々のプレーで打開しようとしてタフなショットが続いた。
長崎は前日に続きアキル・ミッチェルが欠場。インサイドの起点を失い、スクリーンプレーが封じられた。山口は「アキルがいない影響はありましたが、チームとしてオフェンスで何をやっているのかが分からない場面が続き、1対1に走ってしまいました」という前半の反省点を踏まえて、後半はチームで戦えたと話す。「後半はゴーストスクリーンやピックを使うなど、連動してオフェンスが作れたのがよかった点です」
最終クォーターで26得点を計上した長崎は、最大13点ビハインドをひっくり返した。山口は群馬の後半の得点を28得点に抑えたことも勝因だったと続ける。「相手のペースが続いて、JB(ジャレル・ブラントリー)が4ファウルになったり、我慢の時間が長かったですが、4クォーターのディフェンスとリバウンドで勝つことができたので、収穫のある試合でした」
長崎はシーズン前半戦の30試合でわずか3敗と好成績だったが、中断明けから前節までの7試合は4勝3敗と勝率を落としていた。この敗戦はいずれもアウェーゲーム。チームとして対策を考えて臨んだと山口は明かす。
「アウェーということもあり試合の入りが悪くなったのが敗因でした。それをモーディ(マオールヘッドコーチ)も気にしていて、食事や睡眠、トリートメントなどすべての部分を変えていこうとやっていました」
さらに敗戦を糧にして、苦しい展開を跳ね除ける力強さが備わってきたと山口は言う。「スタンリー(ジョンソン)がコートで『三河戦は自分たちが崩れて負けてしまったから、ここで崩れずにやろう』と話していました。今日の展開は、今までの負けパターンでしたが、コートの中にいるメンバーで踏ん張れたのが1番大きかったです」
「チームから求められていることをやるしかない」
この試合、山口は12月末ぶりの先発起用。チームとして試合の入りを課題として挙げていたため、意気込んでコートに立った。「今日は僕がスタートで同じ入りにしてはいけないと思って、打てるシュートは全部打って、良い入りにしようと意識しました」
その言葉の通り、開始1分半、トランジションで駆け上がったところから、迷いなく3ポイントシュートを打ち沈めると、残り6分43秒にはコーナーでボールを受けてドライブから得点を決め、序盤からリードを奪う立役者となった。「ケガ明けから微妙でしたが、ここ2試合はシュートタッチも戻ってきましたし、プレーの質も上がってきているので、良い感触はあります」と自身のプレーに手応えを感じている。
結果的にシュートの試投は、第2クォーター以降なかったが、これはチームファーストな姿勢の表れでもある。スコアラーの多い長崎においては、山口は得点よりもディフェンスでチームを支えることを求められている。実際、この試合でも山口は序盤から群馬の得点源テレンス・ウッドベリーとマッチアップ。最終盤の重要な場面で熊谷航がファウルアウトした際には、代わりに群馬のオフェンスの起点を潰すディフェンスで、チームの勝利に貢献した。
キャリアを通じてスコアラーとして活躍してきた山口にとって、自分のやりたいプレーとチームから求められることのギャップをシーズン開幕前のインタビューで聞いていた。「今シーズンは今シーズンの役割ですし、チームから求められていることをやるしかないので、それを全力でやることを心がけています」という言葉に、「大人ですね」と返すと、山口は「大人というか……。難しいですよ、実際」と満面の笑みで言った。理想のプレーヤー像とのギャップに多少の葛藤は残しつつも、充実している様子がうかがえた。
長崎は今節で連勝し、リーグ首位の33勝6敗、西地区優勝マジックを18として中断期間を迎える。クラブとしても山口個人としても初のチャンピオンシップ進出が見えている状況だが、山口には一切の油断はない。「まずバイウィーク明けの1発目がアルバルク東京さんですし、この後の1試合1試合が大事になってきます。全員がやるべきことをやらないと勝てないので、そこに集中するだけですね」
さらにチャンピオンシップに向けて前を向く。「地区1位で終われたらチャンピオンシップは1回戦も2回戦もホーム開催。今シーズンはホームで1敗しかしていないので、ハピネスアリーナでやりたいですね。残りのレギュラーシーズンもチャンピオンシップの相手だと思って大事に戦っていきます」
チームのエースではないが、強い長崎にとってなくてはならない選手であることは間違いない。役割が変わっても、山口の価値が揺らぐことはない。そのことをさらに証明するために、奮闘を続ける。

