
活躍が目立った石井は「超えていかなければいけない存在」
シーホース三河は8年ぶりに『第101回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会』で決勝戦に駒を進めたが、アルバルク東京に64-72で敗れタイトル獲得を逃した。
第1クォーター中盤にコートに立った角野亮伍は早々に2得点2アシストを挙げたが、3ターンオーバーを喫するなどプレーが安定せず、その後は終盤まで出番が回ってこなかった。「個人的にはもっとやれたという思いがあります」と、後悔を口にするのは当然だろう。ただ、それよりも「こういう場でチームとしてやるべきことをしっかり遂行できる力を、もっとつけていかなければいけない」と、チームへの危機感を口にした。
三河にとって『古豪復活』を印象づける大会となったが、そこには須田侑太郎や石井講祐らベテランのリーダーシップが大きく寄与していた。特に石井はリーグでは平均6分のプレータイムと出番に恵まれてこなかったが、天皇杯では先発も務めチームハイの得点を挙げるなど大いに活躍した。角野もベテランの経験値を素直に称賛する。「石井さんはレギュラーシーズンであまり出場時間がない中で、スタートに抜擢されて結果を出しました。そこは見習いつつ、超えていかなければいけない存在だなと感じました」
頼りになるベテランがいることはチームにとって心強い。しかし、同じポジションの選手にとって、手放しで喜べる状況ではないとも言える。「2番、3番の選手が多いので、その中でライバル関係を築いて切磋琢磨していくのはもちろんある」と角野は言う。
「自分のやるべきことを全うするのが仕事で、それは僕の好きなことでもある『点を取ること』です。だからといって声を出さないわけじゃないですけど、そこの意識にプラスして、先輩方みたいにディフェンスをハードにやったり、味方に声をかけて鼓舞したりする。自分の調子が上がっていない時でもそれをやらなきゃいけないというのは、今大会を通じて感じることができました」

「たくさんの注目を浴びる選手に、もう一度返り咲きたい」
8点ビハインドで迎えた最終クォーター残り1分21秒、角野は再びコートへ送り込まれた。3ポイントシュートを徹底的に封じ込まれ、得点がほしかったからこそ、『点を取ること』を仕事とする角野が起用されたのだろう。角野はここから3本の3ポイントシュートを放ったがいずれも決められずタイムアップを迎えた。序盤以来の出場だとしても「後半にプレータイムが少ないのは今シーズンに何度かあったので力不足です」と冷静に語る。そして角野は自身のこれまでの歩みを振り返りつつ、頂点に立ったA東京の姿をしっかりと目に焼き付けた。
「高校の後にアメリカに行ったのもありますが、僕のバスケット人生を振り返っても、全国大会の決勝で負けたり、準決勝や3位決定戦で負けたり、『万年2位』じゃないですけど、優勝チームを間近で見てきた大会は結構あるんです。タイトルが懸かるのは大事ですが、きっとそこを意識せずに、やってきたことを出せるチームがやっぱり勝つチームなんだなって思いました」
勝負強いの一言では言い表せない、頂点に立つチームとの違いを肌で感じ取れたのは収穫と言える。さらに角野にはもう一つ得るものがあった。それは自身の置かれている立場の尊さ、目指すべき姿を再確認できたことだ。角野は言う。
「プレータイムが少なからず何分かあるという立ち位置でずっとバスケットをさせてもらえていますが、今後B1だったり、『Bプレミア』でそれが続くとは限りません。それは勝ち取っていくモノなので、『コートに置いておかないとダメな選手』になっていかないとなって思いました。もっとチームの中心になってたくさんの注目を浴びる選手に、もう一度返り咲きたいです」
明日からレギュラーシーズンは後半戦に突入する。三河は序盤こそ苦戦したものの、その後は9連勝を記録するなど調子を上げ、西地区3位(20勝10敗)につけている。これは全体6位の成績でチャンピオンシップ圏内ではあるが、ワイルドカード7位の群馬クレインサンダースとは1ゲーム差で気の抜けない状況が続いていく。「この借りを返すのはもうレギュラーシーズンしかない」と強い覚悟を持つ角野がステップアップできれば、長崎ヴェルカと名古屋ダイヤモンドドルフィンズらを超えての、地区優勝も可能なはずだ。