平下愛佳

大会を通じて「自分自身のプレーはそんなに悪くなかった」

『第92回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会』のファイナルラウンド準決勝で、トヨタ自動車アンテロープスは後に優勝を果たすENEOSサンフラワーズに55-60で競り負けた。

レギュラーシーズンでは4度対戦し、すべて勝利していただけに、一発勝負の怖さを思い知った形だ。平下愛佳は冷静に試合を振り返る。「ENEOSさんとはもう4回やっていて、お互いにやることは分かっていました。負けたら終わりなので、お互いに強い気持ちでやってきたのは間違いないですけど、その中でウチがちょっと受け身になってしまったのはあると思います。そこが勝ち切れなかった原因かなと思います」

立ち上がりはトヨタ自動車にとって理想的だった。中でも平下は速攻やアグレッシブなアタックから次々と得点を重ね、第1クォーターだけで10得点を記録。チームに流れを呼び込む活躍で、自身も「攻める場面が多くて、自分のプレーはできた」と言う。大会を通してシュートタッチは良好で、「自分自身のプレーはそんなに悪くなかった」という自己評価も納得だ。

しかし、試合は徐々にENEOSに傾いていった。強度が一段階上がったENEOSディフェンスの前に、トヨタ自動車のオフェンスは停滞。平下自身も得点を伸ばせず、チームとして「1本作りきれなかった」場面が続いた。リズムが欠如したことで打てるタイミングでシュートを躊躇してしまい、連携のズレも重なって、迷いながらのプレーを強いられた。

「ENEOSさんのディフェンスの特徴としてすごく手が出てきます。プレッシャーは当然強く、ディフレクションされたり、空いてるのに『今打っていいのかな?』っていうのが、自分だけじゃなくみんなにあったと思います。リーグ中ではあまりないようなミスも結構あったので、そこが課題かなと」

一瞬の逡巡が判断を遅らせ、トヨタ自動車の本来の良さである思い切りの良さやスピードを奪っていった。「ENEOSさんはトーナメントに強い」という言葉通り、相手には勝ち方を知っている選手が揃っている。試合の流れを読む力、要所を締める安定感。その差が若さと機動力を武器にするトヨタ自動車にとっては重くのしかかった。「勢いに乗せてしまった」という平下の表現が、この試合の本質を突いていた。

それでも、平下の17得点はチームに確かな推進力を与えていた。自身を「中堅」と認識する彼女は「最初から逃げずにプレーしよう」と決めてコートに立った。そして「走ることがすごい好きで、先頭を走って点を取るというのはチームに勢いをもたらせるプレーだと思っています。リーグでも、今日みたいにアグレッシブにどんどん攻めて得点を伸ばしていきたいです」と、リーグ戦でのリベンジを誓った。

昨シーズンの平下はキャリア初の大きなケガも経験した。長いリハビリ期間は不安も大きかったが、それを『進化の時間』に変えた。「ケガをする前以上にウエイトトレーニングをやれたり、シューティングも打ち込めました。そこはケガをして良かったことというか、自分が進化できたところじゃないかなって思います。フィジカルテストをやってもそうですし、ケガをする前よりコンディションは良くなっています。良い勉強というか、ケガをして良かったことだと思います」

ケガでさえもプラスに変える平下であれば、皇后杯での敗戦も糧にできるはずだ。迷いを経験したからこそ、何を修正すべきかは明確。思い切り走り、思い切り攻める。そしてトヨタ自動車らしさを取り戻す。平下は先頭に立ってそのミッションと真摯に向き合っていく。