熊谷航

ゲーム2で横浜BCの安藤誓哉を抑え込む

長崎ヴェルカは2026年試合初めとなった1月3日、4日の横浜ビー・コルセアーズ戦に連勝。27勝3敗、B1全体首位という成績でレギュラーシーズン前半戦を折り返した。

ゲーム1は出だしから持ち味を存分に発揮したバスケットで横浜BCを圧倒し、100-85で快勝したが、ゲーム2は序盤からダミアン・イングリスや安藤誓哉に得点を重ねられ、第1クォーターは25-30とビハインドからスタート。特に安藤にはこのクォーターだけで12得点を奪われた。

「彼は素晴らしい選手であり、非常に尊敬しています。彼は極めて多才です。オンボールでもオフボールでもプレーでき、カットも動きも鋭い。ドリブルからのシュートも、キャッチアンドシュートも、ペイント内でのフィニッシュも可能です。このような選手に対してできることは、とにかくハードに戦い続けることしかありませんが、それも十分でないこともあります」

長崎のモーディ・マオールヘッドコーチはこのような言葉で安藤を称賛し、そのマッチアップに「どのチームのガードにとっても悪夢のような存在」と表する馬場雄大と熊谷航をぶつけた。ゲーム1では馬場がメインでマッチアップを担ったが、ゲーム2は序盤からファウルがかさんだことも手伝い、熊谷が守る時間が多くなった。

接触を伴う至近距離でプレッシャーをかけたかと思ったら、すっと離れる。熊谷はそんな動きを繰り返しながら安藤を守った。そして、サイズとアジリティで安藤を上回る馬場と協働しながら、第1クォーター以降の彼の得点を零封し、第4クォーター中盤まで競った試合を91-78で制することに貢献した。

熊谷は安藤を守る上で意識したことを次のように明かした。

「安藤選手はリジェクト(スクリーンと逆方向に向かう動き)やファウルをもらうプレーが上手な選手なので、プレッシャーをかけすぎないことを意識していました。ベンチで試合を見ていて、審判が手の使い方を厳しく見る人だと思っていたので、そこも頭に入れながら。ただ、ピック&ロールが来た時にプレッシャーをかけなさすぎるとスクリーンに引っかかってしまうので、(味方の)『スクリーン』という声が聞こえた時は、なるべく間合いを詰めつつリジェクトされないよう意識していました。安藤選手もそういう僕の守り方が気になってシュートを外してくれたところもあったと思います」

横浜BCは、安藤だけでなく同じくガードのキーファー・ラベナも高い得点力を備えていて、2人を同時起用する時間帯もあった。「点を獲れる選手は何人もいるので」と、熊谷はとにかく2人の要注意選手を抑えることに注力していたと話すが、フィールドゴール3/5本(うち3ポイントシュート2/3本)の9得点と効率よく、しかもここぞというタイミングで得点をとり、移籍後初のMVPに輝いた。

熊谷航

「コウは試合を重ねるごとに成長している」

シーホース三河、信州ブレイブウォリアーズ、秋田ノーザンハピネッツでプレーした29歳の熊谷は、高いバスケットボールIQを武器とするポイントガード。今シーズンより加入した長崎では、その知性を生かして新たなプレーの扉を開いている。それはボールを持たずしてゲームを支配するということだ。

この横浜BC戦では、スタンリー・ジョンソンもしくはジャレル・ブラントリーがボールを運び、熊谷がコーナーに走るというシチュエーションが多く見られた。『敵陣にボールを運び、トップのポジションでゲームをコントロールする』という一般的なポイントガード像とは異なる熊谷の動きについて問うと、マオールヘッドコーチはまずチームコンセプトから説明してくれた。

「私たちのチームは、ポジションレスな形で構築されています。オフェンスを仕掛ける人間が、必ずしも定義上のポイントガードである必要はありません。私たちの目標は、可能な限り速いペースでプレーすることです。そしてそのためには複数のボールキャリアーが必要で、自分がボールを運んでいない時はコーナーへ全力疾走するなど自分の役割をまっとうしなければなりません。この多才さこそが、私たちのオフェンスが機能している大きな要因であり、全員に良い影響を与えています」

そして、熊谷の役割について話を進めた。「コウはこの役割において本当に成長していると感じます。彼は本来はポイントガードです。フロアを整理し、チームを動かします。しかし、ボールはマイクではないのです。自分の声をチームに届けるために、必ずしもボールを手に持っている必要はありません。彼はどんなときでもアグレッシブであり続け、交通整理をし、私たちを統率し続ける必要がありますし、それができるのが彼の強みです。彼は非常にバスケットボールIQの高い選手で、試合を重ねるごとに成長していると思いますが、まだまだ伸び代があります」