
復帰戦で21得点10アシストも勝負強さは見せられず
グリズリーズのジャ・モラントが右ふくらはぎの肉離れから10試合ぶりに戦線復帰を果たし、ホームのジャズ戦に臨んだ。25分の出場でフィールドゴール20本中7本成功の21得点、10アシスト。ベストな出来ではないが、約1カ月ぶりの復帰戦と考えれば及第点と言ったところだろう。
しかし問題は、モラント不在のグリズリーズは良いリズムでプレーをして7勝3敗と結果も出していたが、そのリズムが失われたことだ。運動量が多く、誰かがスペースにカッティングすれば、そこで生まれた別のスペースに次の選手が飛び込んでパスが流れるようなバスケを展開していたが、ボールを持ってチャンスを作り出すモラントの復帰で良いリズムが消えてしまった。
さらに言えば、クラッチタイムの勝負強さこそがモラントの持ち味だったが、それも失われた。プレータイム制限があったこの試合、モラントは第4クォーターの前半を休み、残り6分でコートに戻った。この時点で112-116と4点ビハインド。指揮官トゥオマス・イーサロは「可能な限り最高のラインナップをコートに送り出した」と語る。
モラントとしては「自分の力で」と意気込むところもあったのだろう。しかし、それは時間の経過とともに空回りしていく。残り4分、ミドルジャンパーから変化してのパスが合わずにカットされ、イージーな失点に繋がった。タイムアウトを挟んでスピンムーブでゴール下に飛び込んでダブルクラッチを沈める好プレーもあったが、あとが続かない。
残り1分にドライブを仕掛けたところでハンドリングミスでボールを失い、続くポゼッションではディフェンスの狭い間を低い姿勢のドライブでかいくぐったものの、シュートはケビン・ラブにブロックされた。さらにその次のポゼッションでは正面から3ポイントシュートを放つも大きくショート。エースが3ポゼッションを連続で無駄にしてしまえば、チームは勝てない。
「シュートを打っていくしかない」。試合後のモラントはそう語った。「外したシュートがあり、決めたシュートがあり、フリースローになるべきシュートもあった。結果は変えられないから、ただ受け入れるしかない」
「勝ちたかったし、勝たなければいけない試合だった。プレーの強度で相手に劣っていた。リバウンドでも負けた。セカンドユニットに差があった。でも一番は、僕がもっと良いプレーをすべきだった。ビッグマンをもっとサポートし、判断を良くしてミスを減らし、シュートを決めなければいけなかった。次に向けて改善するしかない」
しかし、モラントが不在だった時にあれだけ良かったリズムが失われたことが一番の問題だ。この1カ月間の好調を支えたザック・イディーがモラントと入れ替わるように戦線離脱となり、ピック&ロールの選択肢が狭まったのはマイナスだが、モラント中心のバスケが復活した途端に、それまで絶好調だったジェイレン・ウェルズもセドリック・カワードも存在感が消えてしまった。
モラントがここからコンディションと試合勘を取り戻せば、多くのことは解決するだろう。しかし、この1カ月の良いリズムがこのまま失われるのは惜しい。モラントが本来の爆発力を取り戻し、なおかつリズムも維持できればベストだが、モラントが活躍するにはボールを持ち続ける必要があり、それではパスワークが犠牲となりリズムが生まれない。グリズリーズとモラントは、これからこのジレンマに向き合うことになる。