文=丸山素行

NCAAトーナメントは「正直、甲子園よりはるかにすごい」

ゴンザガ大の八村塁は5月16日に帰国し、休む間もなくU-19日本代表に合流。昨日、代表合宿が行われるナショナルトレーニングセンターで会見を行った。

もっとも、まずはアメリカの話だ。八村は「これまで生きてきたのと同じぐらいやった」という英語の勉強を経てゴンザガ大に入学すると、『レッドシャツ』を避ける決断を自ら下して選手登録。思うようなプレータイムは得られなかったにせよ、初のNCAAトーナメント決勝進出を果たしたゴンザガ大の一員としてシーズンを過ごした。八村にとって入学前の予想をはるかに上回る体験だったのは言うまでもない。

全米が注目するNCAAトーナメントは、日本では高校野球の『甲子園』とよく比較される。だが八村はこう言う。「正直、甲子園よりはるかにすごい。アメリカ人ならみんな、バスケをしているかどうかに関係なく見る大会です。ゴンザガ大が決勝に行って、街を歩いていても、別の地方に行っても、ゴンザガ大と言えば声をかけられたりするので。国全体が注目している大会です。すごい経験ができたと思います」

シーズンを通してのプレータイムは平均4.6分。2.6得点1.4リバウンドという数字。本来であればもっとプレーしたかっただろうが、今シーズンのゴンザガは歴代最強のチーム。1年生の八村には厳しすぎる競争だった。それでも、八村に焦りはない。この1年で成長の手応えは十分に得られているからだ。

「この1年間はコーチとも話して、英語の勉強とゴンザガのバスケのシステムに集中しようと。次のシーズンのつなげる1年と言われたので、そういう1年でした」と八村。英語の勉強は欠かさなかった。そして高いレベルのチーム練習を日々こなし、個人練習も怠らず、「すごく伸びたと思います」と胸を張る。

ノースカロライナ大に惜しくも敗れた決勝では出場機会がなかった。ただ「ファウルトラブルが多かったのでコーチから『準備しろ』と言われて、気持ちは準備していました。そういう経験ができて良かったです」と明かす。NCAAトーナメント決勝の会場の雰囲気は、NBAでもファイナル級だ。確かに貴重な経験を積んでいる。

「そういうところではすごい自信が付きました。そういう人たちとやってる中でも通用したし、失敗もしたりして、次のシーズンに向けて自信にはなっています。日本ではデカい人たちとやることがあまりなかったので、デカい選手とプレーするところでは自信が付きました」

U-19は八村塁という規格外の才能をどのように生かすか

ポジションは4番に加え、3番にも挑戦。「3ポイントシュートとドライブで十分、そこが一番大事と言われた」という理由でジャンプシュートを封印したことも。「それでドライブで自分の身体を使って広く行くところを学べたと思います」と語る。

渡米会見を行ったのはちょうど1年前。様々な経験を積み自信を付けたが、振り返ればあっという間の1年だった。「時間が経つのが早く感じました。ずっと毎日勉強とバスケで忙しい1年を送ってきたので、本当に早かったと思います。アメリカという国は自分自身を大事にするところが大きくて、自分の個性をどれだけ出すかが大事かを学びました」

もっとも、今はAKATSUKI FIVEでの戦いに集中する。U-19日本代表はこの3月に高校を卒業した年代が中心となるが、早生まれ(1998年2月8日生まれ)の八村にはU-19ワールドカップへの参加資格がある。「U-19で日本のバスケがどれだけすごいのかを世界に見せられたら」と野心は大きい。

チームに合流したばかりで動きに戸惑うシーンも見られた昨日の代表合宿だが、身体つきもジャンプ力もチームメートをはるかに凌駕しているのは一目で分かる。強い、早い、うまいの3拍子揃った八村がU-19日本代表の中心になるのは間違いない。だからこそ、ケミストリーの構築が急務なのだ。

戦いの先には2019年のワールドカップ、そして2020年の東京オリンピックがある。自国開催のオリンピックについて「期待をされてずっときています。日本バスケのためになるように自分のプレーをしたいと思っています」と語るように、自覚は十分。八村塁という規格外の才能をどのように生かすか。そして八村自身がどれだけ自分を表現できるか。U-19日本代表にどのようなケミストリーが起きるのか、楽しみでならない。