「少しずつ勝つ文化を作れてきています」

11月10日にシーホース三河vs仙台89ERSのゲーム2が行われ、三河が80-74で競り勝ち同一カード連勝を達成した。三河は戦績を9勝6敗としている。

両者は出だしから互いに強度高くプレーし、一進一退の展開となる。仙台がトランジションから得点を重ねる中、三河は効果的に3ポイントシュートを決めることで応戦。ともにビッグランを繰り出すことができず、僅差で試合は進んでいく。第4クォーターに入っても息詰まる試合展開となるが、三河はここ一番での決定力で仙台を上回った。西田優大、ダバンテ・ガードナーと中心選手が2人で23得点のうち17得点を挙げて仕事を遂行。4点リードで迎えた残り1分には、西田が熱戦に終止符を打つ値千金の3ポイントシュートを沈めて試合を決めた。

西田は14得点4リバウンド4アシスト2スティールと、攻守にわたってハイパフォーマンスを披露。特に第4クォーターで9得点と、エースの貫禄を示した。

三河はここ7試合で6勝。敗れた1敗も絶好調の千葉ジェッツに惜敗だった。今のチーム状況を西田は次のように見ている。「少しずつ勝つ文化を作れてきています。最終局面でどういう戦い方をすれば勝てるのか、という感覚が少しずつチームに根付いてきていると感じています。千葉ジェッツ戦のように最後に競り負けた試合もありますが、全体として良くなってきていると思います」

先発ポイントガードの久保田義章が欠場していることについては「誰か故障した時は『ネクストマン・アップ』でみんなで穴を埋めることを大切にしています。久保田選手がいない中、(西田)公陽や僕がポイントガードとしてプレーしたり、長野(誠史)さんのプレータイムが増えることで補っている。そこも一つ良いところで、チームのケミストリーは上がってきていると思います」と、互いに補い合いながら成長を続けていることに手応えを感じている。

この試合、三河はゲームハイの21得点を挙げたジェイク・レイマンが序盤から得点を重ね、ガードナーの調子も悪くなかった。だが、勝負どころでは西田がハンドラー役としてオフェンスをけん引し、チームを勝利に導いた。

ここ一番で責任を担うエースの役割について、西田は「今シーズン、特に意識しています」と語り、周囲のサポートに感謝する。「ライアン(・リッチマンヘッドコーチ)もああいう局面になったら、僕から仕掛けるプレーコールをしてくれる。チームとして共通認識ができていて、僕自身もやりやすい状況です。自分の得点が伸びていくだけでなく、ダバンテと2メンゲームで支配できていたりなど良い感じでやれています」

西田優大

現状への自信「ちゃんとプロセスを踏めている」

西田と共に三河のオフェンスを支えるガードナーは、Bリーグで1位の通算得点を挙げている屈指の点取り屋だが、34歳となった今も衰えを感じさせない。さらに今シーズンは、ここまで平均19.3得点に加え3ポイントシュート成功率47.2%と、例年以上にシュートタッチが良い。ただ、ガードナーがこの好調を維持し、チームとしても質の高いオフェンスをしていくためには、ここでガードナー頼みにならず自身が率先してアタックしていく必要があると西田は語る。

「ダバンテがいくら強烈でも、彼を抑えるだけなら簡単かもしれないです。ただ、他のところも警戒しながらダバンテを抑えるとなったら、これほど難しいことはない。そういった意味でも僕のペイントアタックなどは相手から嫌がられている部分だと思います。そこを上手くできればと最近の試合は特に意識しています」

現在は白星が先行している三河だが、開幕当初に長崎ヴェルカ、宇都宮ブレックスといった強豪に敗れ2勝5敗と出遅れていた。過去2シーズン連続でチャンピオンシップ出場を果たし、さらなる飛躍を期す三河にとっては序盤とはいえ借金生活は想定外だったはず。しかし西田は「僕やすっさん(須田侑太郎)は結果ほどあせってはいなかったです。チームとしてこれまで大切にやってきた部分はそんなに崩れていなかった。それに序盤から上位のチームとやれたことで、早めに戦い方をつかめてきた部分もあります」と、動揺はなかった。

そして、「過去2シーズン作り上げてきた三河らしさが戻ってきています」と手応えを得ている。また、さらなるステップアップへ「良い部分に繋げるため、どうポゼッションを増やしていくのか。オフェンスリバウンドだったりと課題は明確なので、これから積み上げるだけだと思います」と取り組むこともはっきりしている。

今、西田は「ちゃんとプロセスを踏めている」とチームの歩みに自信を見せている。それは、エースとして責任を担う覚悟を持つ、自身のプレーについても同様だ。「得点のバリエーションは広がっていると思います。ペイントに入った時のフィニッシュ力は、去年の後半あたりから個人的に手応えを感じていて、正直、ペイントに入ってしまえば結構余裕を持ってプレーできているので、これを続けていきたいです」

仙台と戦った今節、三河はチームの前身にあたるアイシンの創設60周年記念として、天皇杯4連覇を達成した2004-05シーズンをベースとした復刻ユニフォームでプレーした。相手の粘り強い戦いに苦しめられながらも、要所で得点を重ねることでリードを常にキープして逃げ切るこの試合は、アイシン時代の試合巧者ぶりを彷彿とさせた。今回のような戦いぶりを続けていければ自然と勝ち星は増えていく。そのためには、ここ一番で決定的な仕事をする西田のエースとしてのさらなる覚醒も求められる。そして彼はその重圧を真正面から受け止める覚悟を持っている。