ゲーム2ではハッスルプレーで追い上げの立役者に
琉球ゴールデンキングスはホームで迎えた開幕節で、横浜ビー・コルセアーズに痛恨の連敗スタートとなった。ゲーム1は75-77、ゲーム2は75-79 と共に惜敗だったが、2試合ともにやるべきことを遂行していたのは横浜BCで、妥当な結果となった。
今オフ、琉球は佐土原遼、横浜BCは安藤誓哉と、ともにリーグ屈指のトップ選手を獲得した。開幕節から2人が新天地でどんなプレーを見せるのか注目を集めたが、結果は対照的だった。安藤は2試合続けて接戦で迎えた終盤にビッグショットを決めるなど千両役者ぶりをいかんなく発揮し、初戦から見事なフィットぶりを披露した。一方の佐土原は2試合合計で4得点という数字が示すように厳しいスタートとなった。
もちろん、まだシーズンは始まったばかりで、安藤と佐土原では置かれている状況がまったく違う。佐土原は昨シーズンファイナル進出を果たしたコアメンバーが全員残留し、連携の取れたチームにいきなり入る難しさがある。そして、今回の結果はさらなる進化のために必要な成長痛で、あせる必要はまったくない。例えば琉球のヴィック・ローは昨シーズン大暴れを見せ、今シーズンはキャプテンとしてもチームを支えているが、加入1年目はシーズンを通して中々フィットできず、今とは別人の姿を見せていた。
チーム全体を通して集中力の欠ける場面『らしくない』場面が多々あった琉球にとってポシティブな話題となったのが、2番手ポイントガードとしてプレーした新戦力、小針幸也の奮闘ぶりだ。佐土原と同学年で、大学まで地元の神奈川で過ごした点も同じ小針は、2試合続けて13分以上プレー。特にゲーム2は3ポイントシュート2本成功に加え、ディフェンスでもインパクトを与えた。琉球が後半に反撃し、あと一歩まで迫ることができたのは、小針のハッスルプレーが流れを変えたことが大きかった。
昨シーズン、小針はリーグ下位に沈んだ川崎ブレイブサンダースで確固たるポジションを確立できず、1試合15分プレーすることもあれば勝敗が決したガベージタイムまで出番がないこともあった。そこからリーグ屈指の強豪である琉球に加入し、まずはしっかりとローテーション入りを果たしたことは1つのステップアップだ。
激しいチーム内競争は「良いモチベーションになっています」
しかし、本人は「キングスはEASL(東アジアスーパーリーグ)に出場するなど、年間80試合以上を戦います。その中でまだ2試合が終わっただけなので全然、安心はしていないです」と語る。そして、常に自分の立場が保証されていないことをポジティブにとらえている。
「(同じポジションの)平良彰吾選手、崎濱秀斗選手が、自分のポジションを奪い取ろうと目をぎらつかせて、練習中から良いパフォーマンスをしているので安心できません。ただ、それが僕にとっても良いモチベーションになっています。チームメートと良い競争ができていると思います」
そして、自身のプレーについてこう振り返る。「(岸本)隆一さんがいない時間帯に、どれだけチームに勢いをつけられるかが僕の仕事だと思います。ずっと悩んでいた3ポイントのタッチが戻ってきたことにはホッとしていますが、全体を見てみるともっとやれた部分がたくさんありました」
小針の持ち味は一瞬でトップギアに入るスピード。「今シーズン、チームのテーマとして、去年よりペースを上げることがあります。それを個人としてどれだけ体現できるか意識しています」と続けた。
昨シーズン、琉球の司令塔2番手は広島ドラゴンフライズへと移籍した伊藤達哉が担っていた。サイズが小さく、スピードがある2人は一見すると似たタイプの選手だが、小針は「伊藤選手のやっていたようににやろうとはあまり思っていないです。僕には僕の良さがあるし、できることがあるので、そういった部分を少しずつ探り、桶さん(桶谷大ヘッドコーチ)のやりたいバスケットを理解しながらプレーしています」と話すように、自分らしさを強く意識している。
この『小針らしさ』が表れたのがゲーム2で見せた、相手に文字通りくらいついてターンオーバーを誘発したハッスルプレーだった。この時のことを聞くと、「キングスの強みの1つが、1つのディフェンスで会場が沸くことだと思います。そういった意味で、少しは貢献できたと感じました」と少しはにかんだ表情を見せてくれた。
琉球は明日8日、アウェー台湾でのEASL開幕戦といきなりの過密日程だ。小針のエナジー全開のプレーは、タフなスケジュールを乗り越えるための起爆剤としてチームの大きな武器になっていく。