シーズン中盤戦に11連敗を喫し、勝率でリーグ最下位に沈む時期を経験するなど苦戦を強いられた滋賀レイクスターズ。しかし、シーズン終盤戦に怒涛の反攻に出て、4月以降は10勝3敗とリーグ上位クラブに匹敵する強さを見せた。最後は怒涛の6連勝でシーズンを締めくくり、14位でフィニッシュ。B1残留プレーオフを回避してシーズンを終えた。
大反攻を演出したのが並里成と狩野祐介、福岡第一高校の先輩後輩コンビだ。今年2月に対談取材を実施した際、勝率最下位だったにもかかわらず、並里は「上位チームを見ても自分たちより上回っているところが見あたらない」、狩野は「実際に倒してみせて、世間をびっくりさせたい」と自信満々だった。そして実際、残留争いのライバルより一足早く、シーズンを終えている。
オフに入る直前の2人に、シーズン終盤の巻き返しがどうやって実現したのかを聞いた。
残留を決めた最大の要因は「選手の絆が深まったこと」
──見事にB1残留を成し遂げました。勝率最下位の時点で平然と「残留しますよ」と言っていましたが、有言実行になりましたね。
並里 もちろんです(笑)。
狩野 言ったとおりになって驚いていますが、思っていたとおりの展開ではありました。勝てるメンバーが揃ってはいたので、後半戦ではそれがうまく嚙み合いました。
──シーズンを終えた感想はいかがですか?
並里 今年は一番負けが多かった年です。勝ってナンボなので、そこはやっぱり辛かったですね。2日ぐらいは『ホッとした』という心境でした。今は来年に向けてリラックスしつつ、良いスタートができる状態に持っていこうと思っています。
狩野 僕もホッとしました。最後の三河戦を終えて残留を決めた時は特にそうでしたね。でも、今はファイナルをやっていて、そこに行けなかったという悔しい思いがあります。
──シーズンを振り返りましょう。並里選手が途中加入して最初の試合に出たのが昨年11月11日の大阪エヴェッサとの試合。その時点で2勝12敗でした。そこから4勝5敗と少し上向いたと思ったら、年末年始を挟んでまさかの11連敗。それぞれの時期でどんな状況でしたか?
並里 最初の大阪戦はもちろん勝ちたかったのですが、チーム云々より久しぶりにコートに帰ってきて公式戦をした喜びが大きい2試合でした。それだけでいっぱいいっぱいでしたね。そして、自分なりにどういった形でチームを作っているのかを理解してきたところからの11連敗でした。開幕からちょっとずつ疲れが溜まってきた時期ではありました。チームの雰囲気ってどんな感じだったっけ?
狩野 別に悪くはなかったですね。まだシーズン前半戦で残り試合も多かったので、あきらめずに頑張っていこうという雰囲気はありました。
──クレイグ・ブラッキンズの加入も大きかったですが、すぐには効果が出ませんでした。今だから感じる「あそこが問題だった」という点はありますか?
並里 後半戦すごく良かったじゃないですか。コート内とかオフコートでも選手のコミュニケーション増えてて言いたいことも言えてて、選手の絆が深まった感じがしました。それが後半戦の勝利につながった、みんなで乗り越えられた理由だと思います。そう考えると、「前半戦はそれが足りなかったのかな」というのは今だから感じることですね。
狩野 確かに序盤はそれほどコミュニケーションが取れていたわけではなかったです。初めて一緒にプレーする選手が多かったので、仕方のない面もあります。成さんが入ってきて変わってきた面もあります。後半戦になると、それぞれ言いたいことがちゃんと言えるようになって、誰がどんなプレーをしたいかが分かってきて、チームが噛み合うようになりました。
狩野「10点差だったら逆転勝ちできる自信がありました」
──結果的に、並里選手がスタメンに固定されてから勝てるようになっています。
並里 それはヘッドコーチに言いました。リーダーシップも発揮しやすいから、スタートで使ってくれと。それで自分からどんどん発言するようになったし、周囲もそれに応えて僕にいろいろ言うようになったし、そうやってコミュニケーションができた面はあります。
狩野 僕も、高校で一緒にやっていた時より会話するようになりましたね。優しくなってきているので(笑)。コミュニケーションの部分が大きいのは間違いないのですが、それ以外だと、それぞれが自分の仕事をしっかりやった結果だと思います。僕だったらシュートを決めるとか、ブラッキンズだったらリバウンドを取るとか役割分担がしっかりしました。終盤戦になると、第3クォーターが終わって10点差だったら逆転勝ちできる自信がありました。20点とか30点離されないように、そうすれば負ける気がしなかったですね。
並里 あとは、女性のブースターがたくさん来てくれて、それでみんな頑張った(笑)。
──滋賀のブースターが熱心に応援してくれたおかげ、ということでいいですか(笑)。
並里 ですね。より気持ちが入りました(笑)。
──結局のところ、チームが劇的に向上した最大の要因は何なのでしょう?
並里 悪い時も選手たちで話をしてまとまったことですね。単純な話、僕らはバスケットボールの選手で、バスケットが好きで集まってるメンバーなんです。そんな僕らが試合をするわけで、悪い流れが来ても「チームでバスケットを楽しもう」という感じになれたのが一番です。そういうシンプルな考えになれたことが結果につながったんだと、僕は勝手に思っています。
狩野 そうですね。なんだかんだ、トップのチームと試合をしても、競っているし勝っている。嫌なチームがないんです。栃木も接戦だったし、アルバルク東京には勝ったし、シーホース三河にも相性が良いし。今ならどこのチームが来ても戦えると思います。
並里「個人スタッツを気にしたことがないんですよね」
──狩野選手は武器である3ポイントシュートの成功率が40.2%、リーグ6位の数字を残しました。並里選手はアシストが1試合平均4.2と高い数字を残しています。
狩野 ランクインしたのはうれしいですけど、プロである以上はトップを狙いたいという気持ちがあります。それに、打つ本数が少ないですね。次のシーズンは自分からもっと打っていきたいです。
並里 アシストは仲間が決めてくれないと意味がない数字なので、決めてくれた仲間に感謝です。でも、僕は個人スタッツを気にしたことがないんですよね。
狩野 僕もそこまで気にしないです。あくまで勝利が優先です。
──来シーズンの前に、まずはオフです。休むのも仕事のうちですね。
並里 ですね。今は遊ぶのに精一杯で、来シーズンのことは考えられないです。しばらくは家族の時間を大事にしたいと思っています。海外にも行こうと思っていますが、今年は『海外挑戦!』って感じじゃない可能性が高いです。チャンスがあれば海外でプレーしたい気持ちはありますが、Bリーグもありますし、自分から変にチャンスを作りに行かなくても大丈夫だと思っています。
狩野 今シーズンはスタートで出遅れたので、次のシーズンは開幕から連勝できるように準備をしたいという気持ちはあります。でも、今はとりあえず全部忘れてリセットしたいですね。
並里 次のシーズンに集中するためにもリラックスするのは大事ですからね。でも息抜きしすぎないように気を付けます!(爆笑)