根來新之助は攻守に力強い働きを見せるオールラウンドな日本人ビッグマンだが、Bリーグ3年目の今シーズンは出場機会が激減。チームが結果を残せなかったこともあり、葛藤ばかりが続く1年となった。シーズン終了後に大阪エヴェッサからの退団が決定。注目された行き先はシーホース三河だった。意外な選択ではあるが、指揮官の鈴木貴美一と根來は旧知の仲。「興味ある?」とかかってきた1本の電話が、関西一筋で過ごしてきた根來のキャリアを大きく変えることになった。「正直、優勝のチャンスやと思っています」と語る根來に、新天地での意気込みを聞いた。
「自分としてはまだまだ挑戦したいと思いました」
──まずは大阪での出来事を振り返ってください。在籍3年でキャプテンも務めた根來選手が大阪を出るというのは、ファンの多くを驚かせました。
僕にとって大阪は地元ですし、Bリーグになってずっと大阪でプレーさせてもらっていました。チャンピオンシップ進出を使命だと思ってやってきたので、それを果たせずにチームを離れるのは悔しいです。もともとは大阪でずっとプレーしたい気持ちを持っていました。ただ、大阪がチームの変革をしたいと考え、そこで僕を必要としていない状況となったんです。
僕も今年で32歳と若くはないし、ここから選手としてそう長くできるわけではありませんが、そういう状況になった時に自分としてはまだまだ挑戦したいと思いました。
──今シーズンはプレータイムが激減しました。これはどういった理由だったんですか?
シーズン最初の時点で「4番ポジションで頑張ってほしい」とヘッドコーチから言われていました。レギュレーションが変わることもあって、3番でも練習したいと思っていたのですが、若いヘッドコーチで勝ちたい気持ちはすごく強いので、選手としてはヘッドコーチの求めることを体現するのが仕事だという思いもありました。それでシーズン序盤からあまり試合に出られず、ケガ人も多くてチームが苦しいにもかかわらず4番起用だけで、葛藤はありました。
試合に出られないのはやっぱり悔しいです。「これがダメだから出られないんだ」と言ってもらえるのであれば、そこを突き詰めてレベルアップしていけばいいのですが、「そのままやり続ければ絶対チャンスは来る」と言われていました。それでメンタル的に厳しくなって、年明けぐらいに3番でもやらせてほしいと直訴して、それを受け入れてもらいました。ただ、そういったことがあったにしても、結果が残せなかったのは自分の責任だと受け止めています。
「それやったらシーホース三河で優勝したいと思えた」
──そうして三河への移籍が決まりました。決断するまでの経緯を教えてください。
試合に出られないシーズンを過ごしていたので、正直プレータイムは欲しかったですね。そこに(鈴木)貴美一さんが「興味ある?」と連絡をくれました。僕は「めちゃめちゃ興味ある!」と思いながら、3番4番で身体を張ったプレーだったり、ディフェンスで流れを持ってくること、また外からもシュートを決められる部分を評価していると聞かせていただきました。
このチームは選手層が厚くて試合に出られるチャンスは少ないかもしれないですけど、魅力的な話だと思いました。それまでに話はいくつかいただいたんですが、正式なオファーは三河だけでした。やっぱりまだどこも様子見なんですよ。ところが貴美一さんは「また連絡します」と電話を終えて、僕としては何日か待つものだと思っていたのですが、その1時間後に電話がかかってきて、正式なオファーをくださいました。
もともと僕が中学で府選抜に選ばれた時、当時アイシンのヘッドコーチだった貴美一さんにクリニックしていただいたことがあります。大学の時には誘っていただいていたのを断ってパナソニックに入った経緯もあります。そういった昔からの思いもあるし、何よりこの早い時期に必要だと言ってもらえたことがありがたくて、「それやったらシーホース三河で優勝したい」と素直に思えました。こうして「是非一緒にやらせてください」と契約を決めました。
──日本人ビッグマンにとってプレータイム確保はすごく難しい問題ですよね。外国籍選手と戦って勝ち取らないといけないし、レギュレーションにも左右されます。それでアウトサイドでのプレーを覚えたり、3番にポジションを上げたり。根來選手はどう考えていますか?
僕は4番としては身長が低いですし、これから帰化選手がどんどん増えていく中で限界は正直あると思います。でも、今まで培った4番のプレーはあるわけですから、体格の面ではチームメートのヘルプを必要とするかもしれませんが、外国籍選手に負けない身体を作りつつ、別の良さを出すことは可能だと思っています。
それこそ三河はシューター揃いで、オフェンシブな選手が多いので、そこにマークが寄りますよね。そこに合わせる、そういう選手を生かす動きをする、僕は(桜木)ジェイアールに代わって4番で出たら走って流れを変えたり、スクリーンを掛けたり、3番だったらスペーシングをしっかり取ってディフェンスで頑張って、空いたところで3ポイントシュートを打てばいい。
身体を張ったディフェンスができることと、外のシュートがあること。貴美一さんはそこを明確に評価してくださったので、あとは自分ができるかできないかだけです。
「個性がうまくミックスされれば絶対に行ける」
──新加入ではあってもベテランですし、キャプテンシーも発揮していくつもりですか?
もちろんです。若手が多いので、日々どうやって身体を作り、どんなルーティーンで試合に備えるのか、そういった姿を見せていければと思います。あとは個が強い選手の集まったチームですから、そうした個性をミックスする架け橋になりたいという思いがあります。それこそ僕は金丸(晃輔)とパナソニックで、川村(卓也)さんとは和歌山で一緒でした。(アイザック)バッツとも1年間一緒にプレーしていますからね。
川村さんとは連絡を取り合っていたんです。2人の移籍が決まった後、「一緒に優勝したいね」と話をしました。僕らが和歌山で一緒だったNBL最初のシーズン(2013-14)には、ファイナルで東芝に負けて準優勝だったんです。だから今度こそ、という思いがあります。
──三河は主力選手が入れ替わる過渡期にあってチャンピオンシップ進出を逃しましたが、自力があるのは間違いありませんよね。
僕自身、このチームは個性の強い集団だと思っていて、さっきも言ったようにその力がうまくミックスされれば絶対に行けると思うんですよ。僕がキャプテンではないのですが、個性をミックスして良いチームになれるように、それぞれをフィットさせる架け橋になりたいんです。それができれば絶対に優勝できるチームだし、僕個人としても大きなチャンスをいただいたと思っています。そもそも僕より年上なのは(桜木)ジェイアールと川村さんだけなので、遠慮せずにやっていきたいです。
──『関西の選手』というイメージが強いのですが、ご自身ではいかがですか?
ずっと関西にいて、初めて出ることになったので、そこは完全にドキドキしてますね(笑)。
──根來選手の新天地での活躍を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。
身体を張って泥臭いプレーで、すごい選手たちみんなを生かせるようなプレーでチームを盛り立てたいし、ディフェンスとかで良い流れを持ってこれるように。自分は縁の下の力持ち、みんなの架け橋になれるように頑張ります。優勝します!