ケガ人続出の状況に警鐘「リスクが高くなっている」

セルティックスのジェイソン・テイタムは昨シーズンのプレーオフでアキレス腱断裂の大ケガを負って戦線離脱中だ。先日、『ESPN』のトーク番組に出演した彼はリハビリの様子を語り、同じケガからの復帰を目指すデイミアン・リラードやタイリース・ハリバートン、デジョンテ・マレーと連絡を取り合い、互いに励ましていることを明かした。

アキレス腱断裂のケガが増えている状況を受けてNBAは原因究明のための調査を行った。しかし、NBAコミッショナーのアダム・シルバーが語った調査結果は「試合数とケガに直接的な因果関係はない」と結論付けられていた。

これに反論したのがキャバリアーズのコービー・アルトマン球団社長と、ヘッドコーチのケニー・アトキンソンだ。トレーニングキャンプ開始の1週間前に、選手に先駆けて会見を行った2人は、リーグの調査結果に異議を唱えた。

アルトマンは「ケガには多くの要素が複雑に絡んでいる。そこで我々が注視しているのは『意味のある試合』が増えていることだ」と語る。

「インシーズン・トーナメントの試合でのインテンシティはプレーオフと変わらない。シーズン序盤にあの負荷の試合をすればリスクは高くなる。プレーインも同じで、シーズン終盤の一試合一試合が、プレーオフ進出を懸けた戦いになるのだから、プレー強度が上がってリスクは増す。レギュラーシーズンが82試合なのは変わらなくても、選手にかかる負荷ははるかに大きくなっている。過去5年間でポゼッションも増えている。試合のペースが速くなり、選手はスプリントが増え、走行距離が伸びる。このすべてが絡み合い、多くのケガに繋がっているんだ」

キャブズは昨シーズンのプレーオフで、ファーストラウンドではヒートをスウィープで一蹴したものの、セカンドラウンドではペイサーズに1勝4敗で敗退した。ダリアス・ガーランドは左足親指のケガを抱えながら強行出場を続けており、ドノバン・ミッチェルもプレーオフが進むにつれて古傷のふくらはぎに痛みが出て、万全からはほど遠かった。敗退が決まった後にミッチェルがベンチから立ち上がれなかったのは、精神的なショックだけでなく、シンプルにすべてのエネルギーを使い果たしていたからだ。

プレーオフは『健康勝負』の様相がどんどん強くなっている。その中でキャブズはどんなアプローチで優勝を目指していくのか。彼らの用意した回答は、ロスター全員を活用することだ。「ベンチの端にいる選手をローテーションに定着させる。ミッチェルが毎試合38分プレーするような状況は持続可能ではない。このサラリーキャップ制度の中で、ベンチの選手をいかに使うかは非常に重要になっている。そしてケニーは、それを恐れない」とアルトマンは言う。

アトキンソンは、昨夏にキャブズのヘッドコーチに就任したが、この時はフランス代表のアシスタントコーチとしてパリオリンピックを戦っており、オフの時期にキャブズを見る時間がなかった。「昨シーズンはずっと走り続けていたようなもので、このオフになってようやく人間関係を構築する時間が取れた。選手、フロント、コーチングスタッフのすべてとのコミュニケーションを計画的に取った」とアトキンソンは言う。

「オフは選手たちと毎日一緒にいられるわけではないが、オフシーズンの計画を一緒に立てて、その進捗を見守ってきた。若手はオフを通してほぼチームの練習施設にいた。ルーク・トラバーズやジェイロン・タイソンが勝利に貢献できる選手へと成長することは、主力の成長と同じぐらい大事なんだ」

それと同時に、レギュラーシーズンにプレー強度を落として選手のスタミナを温存したり、ケガを避けるつもりはないとアトキンソンは断言した。「プロセスを維持し、毎日向上する。そのためには『この試合は軽く流そう』なんてことがあってはならない。そうやってプレーオフで壁を乗り越えるためのメンタリティを作る。アクセルから足を離しはしない。レギュラーシーズンを軽視するような戦略が機能するとは、私は絶対に思わない」