大倉颯太

アルバルク東京はEASL(東アジアスーパーリーグ)に初出場するが、大倉颯太は千葉ジェッツに在籍していた2023-24シーズンにEASL初代王者の一員となっている。EASLについて「タフな環境で鍛えられるからこそ、強くなるチャンス」と語る大倉に、今シーズンの意気込みを聞いた。

「復帰してから一度も悪い状態にはなっていません」

──A東京での移籍1年目となった昨シーズンは、レギュラーシーズンとチャンピオンシップ合わせて61試合に出場しました。膝のケガはもう過去のものになっていますか。

もう大丈夫です。復帰してから一度も悪い状態にはなっていません。良くなるポテンシャルだけまだあり続けるというか、今も日に日に良くなっている感覚があります。

──平均プレータイムは約12分と、役割は限られたものになりました。A東京への加入が決まる時点で、こういう使われ方は分かっていましたか?

そもそも自分がセカンドガードをやるというより、ジェッツでの最終年はそれほど長くプレーしておらず、全く出ない試合もあった中で、「まずはケガなくプレーして、2年目から」という話はしていました。だから僕の中で準備はできていました。

もちろん、プロ選手として10分前後しか出ない立場を心地良く感じるわけではなく、プレータイムを取りにいこうとしていたのですが、その時には役割を完全に与えられていたので、それを受け入れました。(テーブス)海を休ませてゲームを繋ぐ、そのために与えられた10分とか12分をチームのためにプレーする。そこでゲームを上手くコントロールしようという思いはありました。悪い状態で出たら良い状態にして戻す、良い状態でもらったら、それを続けるという考え方です。

──大倉選手としては復活を印象付けたい気持ちもあったはずです。同じベンチから出るにしてもゲームチェンジャーではなく繋ぎ役では『大倉颯太らしさ』が出しづらく、モヤモヤした気持ちを抱えていたのではないかと思います。

自分がこうプレーしたいという欲求はあったのですが、それを出せないままシーズンが終わってしまいました。シーズンの途中からはそれを出そうともしなかった感じですね。僕が試合に出るのは海とライアン(ロシター)がベンチに下がるタイミングで、セバス(セバスチャン・サイズ)と(レオナルド)メインデル、セバスとスティーブ(ザック)というツービッグのラインナップが多く、そうなるとビッグマンに良い形でパスを入れることが優先になります。40分のゲームの中でその時間帯を任されて、彼らがプレーしやすいようなパスを出したり、プレーセットをコールするよう意識していました。

──チームはチャンピオンシップのファーストラウンドで敗退しました。個人として昨シーズンを総括すると、どんな感じですか。

チームとしても、もがき苦しんだシーズンでした。僕たちぐらいメンバーが揃っていたら、チャンピオンシップ進出は当たり前で、そこから優勝するために何をするかを突き詰めていくべきだと思っています。それが実際は、なかなか上手くいかない状態が続いていました。僕の中では「このバスケで絶対に優勝できる」と思えるところまでいけずに、「優勝したいけど、これで大丈夫かな?」という気持ちは正直あって、それを認めたくない、打ち消したいと思いながらのシーズンでした。

大倉颯太

「様々な要素にモチベーションを左右されないこと」

──A東京での2年目のシーズンが始まろうとしています。1年前とはコンディションも違うし、チーム状況も変わったと思います。プレータイムを取りに行く、スターターを狙うという点はどう考えていますか。

海はすごく良いガードだし、日本代表でもプレーしているトップの選手です。僕が、というより僕らがチームを引っ張っていかなければいけない、という思いが強いです。もちろん自分自身が試合でプレーする状況を作っていきたい気持ちはありますし、その自信もあるので、そこは積極的にやっていきます。特に今はシーズン開幕前なので、チーム内競争でアピールするという意識は強いですね。

──テーブス選手は『国内組の日本代表』で言えば先発ポイントガードで、A東京でチーム内競争に勝てば、代表でもそのポジションまで行けるという考え方も成り立つと思います。テーブス選手と競争する上で、日本代表を意識するようなことはありますか?

チームで結果を出したいという思いは強いですが、そこに「代表に入るために」という意識はないですね。それは結果としてついてくるものだと思っています。自分自身が満足できるプレーをすること、チームが勝つこと。それが合わさればすべてが良い方向に進むと思っています。

──大倉選手は千葉ジェッツでEASLを経験しています。アジアのクラブチームと対戦することについて、どんな印象を持っていますか。

EASLで戦ってみて、やっぱりBリーグのレベルは高いと僕は感じたんですね。もちろんEASLに参加するからにはアジアのチームに勝ちたいんですけど、EASLだけを見るのではなく、Bリーグの試合と続いているものなので、まずは過密日程の中でケガをしないこと、様々な要素にモチベーションを左右されないことが大事になると思っています。

食事も違えば遠征の移動時間も長くなり、知らないチームとの対戦も多くなります。そういう部分に動じない忍耐強さが鍛えられるのがEASLです。アジアだからと意識しすぎるのではなく、EASLもBリーグも粘り強く戦ってタイトルを取りに行く。タフな環境で鍛えられるからこそ、強くなるチャンスだと思っています。

──過密日程をどう乗り越えるかが一番難しい部分になりますか?

そう思います。他のチームが休んでいる間に自分たちは海外に遠征して試合を戦って、戻ったらすぐに1週間休んでいたチームとBリーグで対戦することになるので、かなり不利だとは感じていました。ですが、「しんどいな」という思いはあったんですけど、そこでチームが鍛えられたのは間違いありません。結果的に(千葉Jでは)優勝できたこともあって、僕はすごく良い経験だったと思います。

大倉颯太

「戦う気持ちの部分で昨シーズンとは違うチームに」

──BリーグとEASLでは戦い方も変わってくるものですか? その中で大倉選手が「こういうプレーをしたい」というものがあれば教えてください。

特にないんですけど、絶対に成長できるチャンスなので、それを最大限に生かしたいとは思います。知っている選手はほとんどいないし、スカウティングもそれほどできない中で試合をしなきゃいけない。それは自分たちの力が試されます。逆にスカウティングがしっかりできても、それ頼みでは勝てません。いろんな局面でチームの本質的な強さが問われます。正直、昨シーズンのチームのままでは全然勝てないと思っているので、EASLで経験を積んで強くなって、EASLでもBリーグでもタイトルを取りたいです。

──他にEASLで印象的だったことはありますか?

オフコートでのホスピタリティがすごく良かったです。フィリピンでは警察がチームバスを先導して、信号も全部そのまま通れるみたいな。あれは良い経験でしたね。オンコートではスカウティングが全然できない状態で試合をしたこともあったのですが、そういう時は自分たちのバスケをするしかありません。いつもと全く違う試合になりますが、そこで自分たちの強みを発揮できたのは、試合をやっていて楽しかったです。

──昨シーズンのままでは勝てない、だから良い方向への変化が必要だと思うのですが、その部分で大倉選手が個人として出していこうと思う要素は何ですか。

EASLに限らずBリーグでもそうですが、僕らは自分たちのリズムでやれていない時に崩れてしまうところがあります。そこで自分たちのリズムに戻すというよりは、シンプルに相手に負けない、相手に打ち勝つというスタイルに切り替える、そういうメンタルの強さが必要だと思うし、その部分を自分が担いたいという気持ちがあります。新しく入った外国籍選手もすごくリーダーシップを発揮するタイプなので、戦う気持ちの部分で昨シーズンとは違うチームになれるんじゃないかと思っています。

──今シーズンは『大倉颯太らしさ』を是非見せてもらいたいと思います。こういうプレーが出ている時は『大倉颯太らしさ』が出ている、というのはどんなプレーですか?

僕は「ゲームを支配したい」と思っています。どんなプレーをしている時がそれだと言語化するのは難しいですね……。でも、逆に観客の皆さんが僕のプレーに引き込まれるような瞬間があったら、「ゲームを支配しているんだ」と感じてもらいたいです。そういうプレーを何度も出して、皆さんを魅了できるように頑張っていきます。