[CLOSE UP]中山拓哉(秋田ノーザンハピネッツ)秋田を残留に導くキーマンは、新人ながらすでに『プロ精神』の塊

2017/05/05
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

安藤と田口を出し続けるしかない『課題』を解消する駒に

秋田ノーザンハピネッツの苦しい戦いはなおも続いている。水曜には千葉ジェッツとの接戦を落とし、これで通算成績は18勝40敗に。同率で並んでいた滋賀レイクスターズが勝利して一歩抜け出したため、残留プレーオフ回避の可能性は急降下してしまった。

リーグで最も勢いのある千葉を相手に、攻守ともに素晴らしいパフォーマンスで互角の勝負を繰り広げながら、最後の1分で踏ん張り切れない痛い敗戦。ただ、まだプレーオフも含め残留争いに先がある現実を直視すれば、「内容よりも結果」ではなく、チームとしてのクオリティ向上にまだ目を向けるべきだ。

その秋田の大きな伸びしろになっているのが、特別指定選手としてチームに途中加入した中山拓哉である。秋田は安藤誓哉と田口成浩、得点力のあるガードの2人がチームを引っ張ってきたが、控えの層が薄い弱点を抱えていた。安藤のプレータイムが1試合平均34.1分でリーグ1位、田口の33分が同2位ということは、終盤の勝負どころでガス欠を起こすことを承知の上で、2人のエースを引っ張り続けるしかない苦しい事情の表れだ。

ところが、ここに来て中山が大きく成長し、チームを支える重要な戦力となっている。「ルーズボールにリバウンド、それからディフェンスにものすごくハッスルしてくれる。ボールも運べるので誓哉の負担も少なくできる」と長谷川誠ヘッドコーチが評する中山が、チームにエネルギーを注入するとともに選手層の問題を解消しているのだ。

3日もアグレッシブなプレーで千葉を苦しめた。コート上の中山に「新人だから」という遠慮は一切感じられない。2月のBリーグデビュー当時からそうだったが、ディフェンスでのバンプと激しいプレッシャー、そこから速攻の先陣を切る走りなど、迷うことなく自分らしいプレーを貫いた。

終わってみればチームハイかつシーズンハイとなる32分のプレータイムを得て、3試合連続となる2桁得点をマーク。腰を痛めて欠場した白濱僚祐に代わり先発を務めただけでなく、第2クォーターには司令塔の役割を果たして安藤を全休させている。その結果、最後までフレッシュだった安藤は第4クォーターに12得点を挙げ、最後まで千葉に抵抗する要因となった。

「勝たなければどれだけのスタッツを残しても意味がない」

敗れはしたが、収穫はあった。とりわけ中山にとっては会心のパフォーマンスだったはず。ところが試合後の中山は「まだまだ、全然まだまだです」と浮かない表情だった。10得点という攻めの貢献についても「空いたら全部打とうと思っていました。何度かチャンスあったんですけど決めきれなかったので、そこは練習不足、反省です」と、外したシュートの方を気にする。

試合を重ねるごとにフィットし、戦力として認められている。だが、彼にとってそれはもはや当然のことで、意識はその先、『秋田の戦力』としての責任に向いていた。「入って来た時より一つひとつ良くなってきてはいます。でも、勝たなければ自分がどれだけのスタッツを残しても意味がないと思っています」

大学を卒業したばかりの中山が、自分の実力がプロで通用するかどうかに興味がないはずはない。だが、彼の性格もあるだろうし、チームの置かれた状況もあるのだろう。彼は訥々とこう語る。「自分のスタッツに興味がないわけじゃないんですけど、なんと言うか……やっぱりチームが勝つためにやっているので。試合に勝って、それで自分もスタッツを残せていればうれしいですが、負けた試合のスタッツは関係ないです」

「大学を卒業して初めての試合がA東京で、勝てている」

今週末の最終節、秋田は何が何でもアルバルク東京に連勝しなければならない。「大学を卒業して初めての試合がアルバルク東京で、それで勝てているので、そのイメージがあります」と中山は難敵との対戦にもポジティブだ。

「入りからがむしゃらに、アグレッシブにやっていけば、結果は出せると信じています。心も身体もしっかり作って試合に臨みます」

プレーもコメントも新人らしからぬ中山だが、伸びしろはまだまだある。長谷川ヘッドコーチに問うと「オフェンスの駆け引き、ディフェンスの駆け引き」とのこと。「相手を見ながら判断するのが大事。それはゲームをしながら学んでいかなければならないところです」

ただ、恐れを知らぬ22歳は試合を重ねるごとに一足飛びに成長を続けている。指揮官から突き付けられた課題も、ほどなく乗り越えてくれそうだ。