文=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、B.LEAGUE

『ポスト2020年』を見据えたスポーツ産業の市場規模拡大は、政府の成長戦略にも掲げられて大きな注目を集めている。中でも新設の施設という意味で大きく注目を集めているのが、2020年にキングスのホームタウンである沖縄市に完成する1万人収容のアリーナだ。

そのコンセプトの1番目に「バスケットボールを中心としたスポーツ興行を開催する『観せる』施設」が掲げられている。Bリーグが掲げる『夢のアリーナ』に最も近いこのアリーナへの取り組みについて、安永に話を聞いた。

沖縄に適した、将来性のあるアリーナを作りたい

──キングスとしては、新しいホームアリーナに対してどのような希望があったのですか?

チーム創設3年目くらいから、もっとキャパシティの大きな施設が欲しいと思っていました。さらに言うと今の日本には、体育館はあっても観戦に適したアリーナはなかなかありません。来場客に目線を合わせたところが少ないんです。

例えば席数だけ多くても、座り心地が悪くては良くない。これまでインドアスポーツはプロレベルで繁栄していなかったので、アリーナが存在しなかったのも当然だったのかもしれません。ただ、プロバスケが伸びてきたことで体育館ではない、見る人のために施設としてのアリーナが必要だとずっと考え続けてきました。

──今回のアリーナを琉球の本拠地とする話はどこから出てきたのでしょうか。

「新しい体育館を建てるからホームゲームで使わないですか」というお誘いはいくつかいただいていました。その中で、沖縄市は体育館ではなくアリーナを作るという計画でした。話を聞くと、我々の理想とする施設のコンセプトに近いものがあり、沖縄市と一緒に新しいアリーナを作ろうということになりました。

大きなコンセプトのところから我々のアリーナに対するビジョンを理解してもらい、タッグを組んでプロジェクトを進めています。プロジェクトにかかわる人たちとNBAのアリーナを視察したりもしています。ただ、僕たちが作りたいのはNBAのアリーナではありません。日本に合う、もっと言えば沖縄に適した、将来性のあるアリーナを作りたいんです。

沖縄市が発表した資料より、新アリーナのイメージイラスト。基本方針には「日本トップレベルの試合を観戦することで、スポーツの良さや楽しさを実感させ、スポーツへの関心を高めることができる施設を作る」とある。

常設のメインコンテンツがある初めてのアリーナに

──首都圏にはなりますが、横浜アリーナやさいたまスーパーアリーナはアリーナとして成功を収めています。沖縄市と一緒に作るアリーナはどこが新しいのでしょうか。

単発の興行を続けるのではなく、常設のメインコンテンツがあることが大きな違いです。新アリーナは常設のメインコンテンツがある日本初のアリーナになります。2020年代に入れば日本も新しいアリーナの時代になりますよ。

キングスが常駐するアリーナができることで、試合当日だけでなく、日常から様々な影響が出てくるはずです。今の試合会場は、キングスの試合がない日は「普通の体育館」で、キングスの雰囲気は全くありません。ただ、新アリーナができれば、普段からキングスの本拠地としての存在感が出てきます。

──それは具体的にはどのようなものですか?

例えばマジソンスクエアガーデン(NBAニックスの本拠地)やリグレー・フィールド(MLBカブスの本拠地)に行けば、試合がなくても施設をバックに記念写真を撮るファンが大勢います。試合のない日でも行きたくなるような、そんな価値のある空間を作れるようになります。新アリーナは1万人収容となります。席数が増えるということは、お客さんに提供できる楽しみ方の選択肢が増えます。より幅広い人たちに楽しんでもらえるアリーナになると思います。

──キングスとして目指すアリーナ像はありますか?

『聖地』にしたいですね。やはり『聖地』と呼ばれるものが日本人は好きなので。日本一ではないかもしれませんが、2020年に完成した時には、日本で一番新しいコンセプトを持ったアリーナになります。その点は期待していただきたいです。

──逆に言うと、3年後には3倍の観客を集めなければならないということですね。

Bリーグができたことで、今までキングスを見たことのない初めてのお客さんがすごく増えていると感じます。熱心に応援してくださっている人たち以外の層にも、キングスがどんどん広がり始めています。ファンの方が、家族や友人を誘ってくださる。人が人を連れて来てくれるのは本当にありがたいです。

僕たちはチケットが売れたことを喜ぶのではなく、それで来てくださるお客さんに楽しんでもらうための準備に力を入れなくてはいけません。選手たちがすごいプレーを見せて、お客さんを興奮させてくれることを期待しますが、勝負事なのでそれは保証できません。それ以外のところでどれだけ楽しんでもらえるか。そこに僕たちは力を入れていきます。

『Bの現在地』を探る
vol.1 比留木謙司(富山グラウジーズ)「お客さんが満足して帰れば僕らの仕事は大成功」
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vol.3 安永淳一(琉球ゴールデンキングス)「日本で一番新しいコンセプトを持ったアリーナに」

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