文=大島和人 写真=B.LEAGUE

ギブスをケガで欠く栃木、オン・ザ・コート「2」で苦戦

B1のレギュラーシーズンは今週末の2試合も含めて残り5試合の山場だ。栃木ブレックスは29日、30日の連戦を前に、東地区の優勝決定まであと1勝まで迫っていた。とはいえチャンピオンシップに弾みをつけるためにも、より良いトーナメントの組み合わせを得るためにも、千葉ジェッツとの連戦は大切になる。

千葉ジェッツは東地区3位だが、39勝16敗でアルバルク東京と1ゲーム差。ワイルドカードでなく「東地区2位」でチャンピオンシップへ出るために、こちらも栃木戦は大切になる。

外国籍選手のオン・ザ・コート数は両チームとも「1-2-1-2」だった。ただし栃木は前節の秋田戦で負傷したジェフ・ギブスを欠いていた。

栃木は試合の出だしからライアン・ロシターを中心にポイントを重ねる。20-14となった第1クォーター残り3分3秒にロシターがベンチに下がると1点差まで詰められたが、ここから熊谷尚也が3ポイントシュート、アリウープとビッグショットを連発。栃木が25-19とリードを取り戻して第1クォーターを終える。

しかし今日の栃木はオン・ザ・コート「2」の時間帯に噛み合わなかった。ロシターも「ギブスがいないことでよりタフだったことは間違いない」と認めるように、彼の不在がその一因。第1クォーターは14-7と栃木が完全に上回っていたリバウンドの争いも、第2クォーターは2-8と完敗だった。

千葉は第1クォーターの途中からコートに入ったタイラー・ストーンが、第2クォーターの10分間に12得点。他にも西村文男、荒尾岳といったセカンドユニットが活躍を見せ、第2クォーターは26-17と圧倒する。千葉が46-41と5点をリードして、試合はハーフタイムに入った。

第3クォーターになると栃木は竹内公輔、ロシターのインサイド陣がリバウンドの優位を取り戻す。ロシターはこの10分間で12得点を決め、さらにオフェンスリバウンドで圧倒したことにより千葉のオフェンス機会を減らした。栃木が58-57と再逆転をして、試合は勝負どころの10分間を迎える。

小野を2番、荒尾を3番に起用するビッグラインアップ

第4クォーターの千葉は、ポイントガードに富樫勇樹でなく西村文男が入った。大野篤史ヘッドコーチは起用の理由とその評価をこう述べる。「富樫の調子があまり良くないと判断して、今日は西村の方がいいと思った。彼がその期待に応えてくれた。ディフェンスもハッスルしてくれて、すごく良いパフォーマンスだったと思う」

指揮官も「富樫が今までやってきてくれたことへの信頼は変わらない」と付け加えたように、シーズンを通せば富樫の貢献は極めて大きい。しかしこの試合の中で千葉の司令塔、得点源として光ったのはケガから戻ってきた30歳のポイントガードだった。

千葉は1番に西村を置き、2番に小野龍猛、3番に荒尾岳を起用するビッグラインアップで最終クォーターに臨んだ。大野ヘッドコーチは理由をこう述べる。

「石井(講祐)のファウルが込んでいて、原(修太)の状況判断がちょっと悪かった。外してはいけない選手のマークを外し、3ポイントのキャッチ&シュートを2本決められていた。経験のある小野を2番にして、荒尾も足があるので試してみようと決断した」

小野は197㎝、荒尾も198㎝というビッグマンで、機動力も持っている。そんな強みもあり、ぶっつけ本番のラインアップが見事にハマった。キャプテンの小野はこう胸を張る。「最近は練習中からいろんな組み合わせでやっている。あの組み合わせはやったことがないですけど、コミュニケーションが大事だという部分は、大野さんも言っていたところ。そこが上手くできた」

千葉はコミュニケーション力でこの『アドリブ』を見事に乗り切り、勝負どころで勢い付く。

ロシターが悔いる、突き放す場面で出た手痛いミス

栃木は逆にスモールラインアップを採用した。ヘッドコーチのトーマス・ウイスマンはこう振り返る。「トミー(ブレントン)、(竹内)公輔、ライアン(ロシター)という大きいラインナップを起用して、第2クォーターにオフェンスが止まってしまった。より得点を取りに行くという意味も含めてスモールラインアップを引いたが、どちらのクォーターも得点を伸ばすことができませんでした」

ロシターは第4クォーターについて、残り8分8秒のワンプレーを悔いていた。「打つべきシュートを打たずパスにしてしまった。熊谷がオープンだと思ってコーナーに投げたパスを、(マイケル)パーカーにスティールされた。2点勝っていた状況で、熊谷が3ポイントを決めていれば5点差だったのに、ターンオーバーから相手の得点になってしまった。そこは大きなプレーだったと思うし、すごく悔しい」

その後も1ポゼション差で試合が進んでいたが、千葉は残り3分40秒に小野がファウルを受けつつ3ポイントシュートを決め、「プラス1ショット」のフリースローも含めて一気に4ポイントを獲得。70-67と逆転する。残り2分19秒にストーン、残り1分38秒に西村と3ポイントシュートを成功させ、77-69とこの日最大のリードを得た。

栃木も直後に田臥勇太が3ポイントシュートを返して、3957名の大観衆を沸かせる。しかし千葉も残り1分12秒、再び小野がジャンプショットを沈めて79-72となお7点差。千葉は残り40秒にも西村がフリースローを2投して1本成功させ、80-72までリードを広げる。

栃木は古川孝敏がようやく最初の3ポイントシュートを決め、直後のスローインをブレントンがスティール。決めれば流れが一変する場面だったが、遠藤祐亮が立て続けに放ったシュートをいずれも落としてしまう。こうしてファウルゲームに行くも、ストーンがフリースローを4本とも冷静に決め、84-77で栃木を下した。

大野ヘッドコーチは苦笑まじりに「よく勝ったな」

第4クォーターはストーンと西村が9得点ずつ、小野が7得点という活躍。ただ内容を振り返れば千葉にとって『勝ちに不思議の勝ちあり』を地でいく試合だったのかもしれない。

大野ヘッドコーチは苦笑まじりに展開をこう振り返る。「リバウンドがキーになると選手たちにはゲームの前に話していた。約50%以上のディフェンスリバウンドを、相手のオフェンスリバウンドとして獲得されて、それでよく勝ったなというのが第一印象」

ウイスマンヘッドコーチは展開をこう説明する。「こちらはシュートを70本以上打っていて、相手が56本。勝つべき試合だったと思っています。ポゼッションの数は『14』上回り.オフェンスリバウンドも『19』取った。それだけオフェンスの機会を得たわけですけれど、得点に変えることができなかった。そしてディフェンス面で判断が良くなかった。外からのシュートがあるストーン選手をオープンにしてしまって、そこで決められてしまった。ディフェンスの判断が悪くて、勝ちを落とす結果になってしまった」

カギになったのが第2クォーターと第4クォーター。外国籍選手のオン・ザ・コート数が「2」の時間帯だ。ウイスマンヘッドコーチはこう続ける。「第2クォーターと第4クォーターで合わせて54点を取られてしまった。自分たちはディフェンスを激しくやることを強みとしているチームなのに、2つのクォーターでそんなに取られてしまった。千葉はアウトサイドの能力が高いチームと分かって臨んだわけですが、ゾーンディフェンスをした際にそこのカバーができなかった」

試合を通してみれば栃木はリバウンドで上回り、ボールもよく動いていた。須田侑太郎は14分31秒のプレータイムで3ポイントシュートを3本成功させ、指揮官に「オフェンス面での貢献がかなり高かったので、もっとコートに残しておけば良かったかなという思いもある」と言わしめる活躍だった。しかし最終的にはオン・ザ・コート「2」の時間帯に上回り、コミュニケーション力で急造ラインアップを機能させた千葉が84-77で初戦を取っている。