PJ・ワシントン

ケガからの復帰戦で29得点12リバウンドと奮起

現地3月16日、マーベリックスはホームでセブンティシクサーズに敗れた。相手はシーズン終了となったジョエル・エンビードとポール・ジョージに加え、タイリース・マクシーも欠場していたが、後半に逆転を許し、巻き返せなかった。直近の12試合で10敗目、西カンファレンス10位でプレーイン経由でのプレーオフ進出の可能性は残されているものの、そこで結果を残せる気配はない。

今のマブスはリーグで最もケガ人の多いチームとなっている。ルカ・ドンチッチとのトレードで加入したアンソニー・デイビスは加入早々の1試合に出場したのみで戦線離脱となり、ようやくコート上での練習を再開したところ。カイリー・アービングは左膝前十字靭帯断裂でシーズン終了となり、デレック・ライブリー二世とダニエル・ギャフォードも長期欠場中。ダンテ・エクサムは左手を骨折し、ジェイデン・ハーディーは足首、ケイレブ・マーティンは臀部の痛みでプレーできない。

シクサーズ戦では使える選手が8人しかいなかった。2ウェイ契約のケスラー・エドワーズとブランドン・ウィリアムズはあと数試合しか出場できず、マブスの非常事態はまだ続きそうだ。

PJ・ワシントンは足首のケガが癒えて2週間ぶりに復帰した。「やっとバスケができるという興奮で朝早く目覚めた」という彼は、勢い勇んでコートに立ったが、そこには思いがけない状況が待ち構えていた。第3クォーターの残り8分、彼がフリースローを打つ場面で、『ニコをクビにしろ!』とファンが叫んだのだ。

普通、ホームゲームでフリースローを邪魔されることはない。大差で負けているならともかく、その時点ではマブスがリードしていた。そしてワシントンは前半だけで20得点5リバウンドと攻守に奮闘していた。彼は1本目のフリースローを決めた後、「黙っていろ」と吐き捨てた。

「誰がコートにいるにしても、応援してもらいたい」

試合後、彼はこの場面をこう振り返る。「トレードはもう起きてしまったことだ。今の僕たちは新しいチームで戦っているのに、いまだに『ニコをクビにしろ!』なんて言われたら気分が落ち込むよ。僕たちは戦っている。誰がコートにいるにしても、ファンには応援してもらいたい。それが僕の気持ちだ」

だが、ファンの鬱屈は晴れそうにない。ドンチッチが去ったことに打ちひしがれているだけでなく、マブスと同じぐらいケガ人続出のシクサーズを勝利に導いたクエンティン・グライムスの活躍も、不満の一因となっている。マブスでも結果を残していたグライムスは、シクサーズでさらに調子を上げ、この試合では28得点6アシストとオフェンスを引っ張った。今のマブスファンはドンチッチ放出だけでなく、サラリーの安い伸び盛りの24歳を簡単に放出したことでも、ニコ・ハリソンGMに腹を立てている。

ドンチッチとのトレードでデイビスとともにマブスに加わったマックス・クリスティは「僕らはプロとして、バスケをプレーすることで稼いでいる。コート外の雑音が気になっても影響されてはいけない。前に進み、乗り越えるんだ」と語った。

ただ、一番の難関は約3週間後に控えている。ホームでのレイカーズ戦でドンチッチが戻って来る時こそ、『ニコをクビにしろ!』の勢いは最高潮に達するはずだ。それまでにチーム状況が好転し、ファンが前向きな気持ちを取り戻せるかどうか。おそらくワシントンは、まだしばらくは不愉快な思いを抱えながらプレーすることになるだろう。