
「セカンドがあまり崩れないのは、無理にやるバスケットを変えていないから」
3月5日、シーホース三河は水曜ナイトゲームで川崎ブレイブサンダースと戦い、オフェンス爆発によって104-91と快勝した。
三河は試合の立ち上がりから川崎の緩慢なディフェンスのスキを突き、ゴール下へのアタックからイージーシュートを次々と決めていく。しかし、自分たちのディフェンスも強度に欠け、川崎に確率良く3ポイントシュートを決められて点の取り合いに持ち込まれ、前半を55-50と互角の展開で終える。
だが、三河は第3クォーターに本来のディフェンスを取り戻し、堅守からのトランジションで川崎を圧倒。このクォーターで27-13と圧倒して、一気に突き放す。第4クォーターに入っても着実に得点を積み重ね、危なげない展開で楽々と逃げ切った。
第3クォーター残り5分から終始、2桁のセーフティリードを保ったことも影響しているが、この試合の三河は11選手が11分以上のプレータイムだった。今回に限らず、今シーズンの三河の好成績を支えている大きな要因には、タイムシェアできる層の厚さがある。
あくまで1つの指標でしかないとはいえ、ジェイク・レイマンを筆頭に長野誠史、石井講祐、角野亮伍らセカンドユニットのメンバーはいずれも、出場時間の得失点差を示すプラスマイナスで高い数字を記録。相手と比べて三河が層の厚さで優位に立っていることを示している。
このリーグ随一とも言えるセカンドユニットを支える角野は、この試合でも11分50秒の出場で8得点1スティールを挙げるなど攻守でしっかりと役割を遂行し、勝利に貢献した。
角野は「後半、みんなで気持ちを入れ直し、簡単な試合は一つもないと共有しました。ディフェンスから入ろうと臨んだことが良かったと思います。ただ、前半で50点取られてしまうのは僕たちのやりたいバスケットボールではないです。後半は何かを変えたというより、やるべきことを再確認して実行できたことが良かったと思います」と試合を振り返る。
そして、ここまで好調なセカンドユニットの強みについて聞くと、まずは「ファーストユニットは全員がハンドラーをできて相手に対してしっかりアジャストできています。それが強みです」と強調した上で、良い意味でスタイルを変えていないと考えている。
「セカンドがあまり崩れないのは、無理にやるバスケットを変えていないからだと思います。セカンドの強みとして、ライアン(リッチマンヘッドコーチ)のやりたいディフェンスを前からやって、全員で走って、空いたら打つ。このシンプルなバスケットを遂行できています」

「ディフェンスでも期待してもらっていると感じます」
自身のパフォーマンスについては次のように分析。「オフェンスは要所で打つべきシュートを決められている印象です。そこは変えずに自分の打ちたいシュート…レイアップ、ミドルジャンパーを含め、3ポイントシュートだけではないところをもっと見せていきたいです」
そして大きな変化としてディフェンス面を挙げる。「自分はディフェンスが得意ではないと思っていました。でも(相手の得点源に)フェイスガードをする役割を任されるなど、ディフェンスでも期待してもらっているとライアンヘッドコーチから感じます」
角野といえば藤枝明誠高では世代屈指のスコアラーとして名を馳せるなど、オフェンス面で注目されてきた選手。だが、今の彼はリーグ有数の堅守を誇る三河でディフェンス面でも頼りにされ、本人も自信を増している。この変化にはリッチマンヘッドコーチの存在が大きいと角野は語る。
「元から好きではなかったというだけで、できないのとは別だとヘッドコーチに勇気づけてもらった感じです。コーチにルールを作ってもらい、それを遂行することでディフェンスがうまくいく成功体験を得たことで、良い方向に変わっていると思います。ライアンヘッドコーチにうまく使ってもらって、ディフェンスを得意にしてもらっています」
現在、三河は28勝12敗(中地区3位)でチャンピオンシップ出場争いの真っただ中にいる。2年連続のポストシーズン進出に向けて全く油断できない状況が続いているが、角野はチームの進化に確かな手応えを得ている。
「ライアンの2年目になって完成度が高くなっています。去年は負けている時間帯で、バラバラになって個人で点を取ろうとしていることもありました。それが須田(侑太郎)さんを含めてハドルを組む回数が増え、全員が我慢して、最後に1点でも勝つというところをより意識できている部分に違いを感じます」
そして「僕らのやってきたことを、しっかりやれれば優勝できるポテンシャルはある。そこは強い相手でも臆することなくしっかり自分たちのバスケットをやりたいです」と言い切る。
攻守にバランスの取れている三河だが、その中でも一番の強みは激しいディフェンスからのトランジションだ。この堅守速攻をより多く繰り出すためにも、角野の攻守両面に渡る貢献は欠かせない。