プレーに集中し17得点6アシスト3リバウンド2ブロック
1月25日、東地区首位の宇都宮ブレックスはアウェーで西地区首位の琉球ゴールデンキングスと対戦。相手の強みであるリバウンド争いを制して流れをつかみ、高確率でシュートを決め続けて105-86で圧勝した。
試合の立ち上がり、宇都宮は第1クォーターだけで12得点を挙げたグラント・ジェレットを軸にゴール下で確実に得点を重ねて主導権を握る。琉球もヴィック・ローのドライブ、ジャック・クーリーのインサイドアタックなどで盛り返し、第2クォーター残り5分までは宇都宮の35-33と互角の展開だったが、ここから宇都宮はディフェンスの強度をさらに高め、琉球にタフショットを次々と打たせることで残り5分をわずか2失点に抑える。一方、オフェンスでは比江島慎、ジェレットが高い決定力を見せ、前半を45-35として折り返した。
第3クォーター序盤、宇都宮は琉球の反撃をくらい2ポゼッション差まで詰め寄られるが、慌てることなくパスを散らしてのチームオフェンスで得点し、流れを渡さない。そしてこのクォーターの終盤になるとD.J・ニュービルが持ち前の爆発的な得点力で試合を支配。リードを15点にまで広げて第4クォーターを迎えると、そのまま危なげなく逃げ切った。
1月17日、宇都宮はケビン・ブラスウェルヘッドコーチが、心臓の疾患によって緊急搬送された。幸いにも手術は成功したが、合併症もあって入院が続いている。バスケに集中するのが難しい状況で、宇都宮は攻守に渡り40分間を通して集中力の高いプレーを遂行した。
代行ヘッドコーチを務めたジーコ・コロネルは、次のような姿勢で試合に臨んだと明かす。「自分たちにとって、今までに経験したことのない難しい状況でした。みんないろいろなことを考えてしまう中、この試合に臨むにあたりシンプルに、基本に立ち返ってやっていこうという意識でした」
ブラスウェルヘッドコーチと、コロネル代行はニュージーランドで一緒のチームで活動していた経験のある旧知の仲だ。「KB(ブラスウェル)と私は10年以上前からの関係で、2つのチームで一緒に働きました。彼が退任した後のヘッドコーチに私が就任したこともあります。彼のおかげで初めてヘッドコーチを経験しました。(NBLニュージーランド)ブレイカーズで彼がヘッドコーチで私がアシスタントの時には、彼の家族と一緒に住んでいて、彼の子供に本を読んであげることもありました。すごく関係性は深いです」
コロネルが何よりも重視したのは、「KBはバスケを楽しむことを大切にしています」というブラスウェルの信念だ。「毎日の練習でハグしたり、ハイファイブしたり、みんな楽しみながら取り組んでいます。それを今回の件で失いたくなかった。これを継続することにフォーカスして臨みました」
「ケビンもいつまでも落ち込むことを望んでいない」
宇都宮の大黒柱である比江島は、3ポイントシュート6本中4本成功を含む17得点6アシストに加え3リバウンド2ブロックを記録。出場時間の得失点差でプラス31が示す大活躍だった。「僕らにとってすごく大事な一戦で、入りからしっかりと集中力高く、インテンシティで相手を上回ってやれたと思います。終始僕らのペースで、プラン通りに試合を運ぶことができました」
こう試合を総括した比江島だが、ブラスウェルコーチの入院については「その日に知りました」と明かす。この時はオールスター期間中で、比江島は動揺を感じさせずにファンを楽しませていた。プロとしてのさすがの振る舞いに敬服するしかないが、「初日は、精神的に難しい状況でしたけど、手術が成功したと聞いて少し安心したところはありました」と振り返る。
そして今回の試合には、次の強い覚悟を持ってコートに立っていた。「最初から気持ちを切り替えられたわけではないですが、試合は目の前にあります。ケビンもいつまでも落ち込むことを望んでいないと思います。切り替えないといけない中、ジーコが指揮を執っていろいろな言葉をかけてくれました」
「4ターンオーバーをしているし、完璧ではありません。ただ、チームから与えられた役割をこなすために集中力高く臨み、今やれることをやったつもりです。明日も切り替えてプレーしたいと思います」
また、「相手には佐々(宜央)さんがいて、弱気になってしまったら戦術にはまってしまうと考えていました。とりあえず攻め気を出し、空いたら打つ、ドライブに行ってその次にアシストを意識しました。こういうフィジカル、ディフェンスが上手い相手には自分から仕掛けていかないといけないです」と、アグレッシブなプレーを何よりも重視した。
ブラスウェルの状態が心配なことに変わりはないが、比江島は指揮官の信頼に応えるためにもベストのプレーを見せることに集中する。「ケビンは『僕たちは優勝に値するチームだ』と常に自信を与えてくれています。習慣付けのところでリバウンドだったりをしっかりやっていければ間違いなく優勝できると言ってくれていたことを思い出しました。今日はケビンが見ても恥じないプレーができたと思います」
本日の第2戦、琉球は最初からよりエナジーを出して臨んでくるはずだ。比江島は、それ以上の強気のプレーでチームを引っ張り、価値ある同一カード連勝へと導く準備が心身ともにできている。