カイリー・アービング

勝負をあきらめてもおかしくないチーム状態で大健闘

マーベリックスはルカ・ドンチッチが左ふくらはぎのケガで欠場している約1カ月間で4勝10敗と勢いを失っている。エースが抜けた後、その穴を埋めようと無理をしたカイリー・アービングが古傷の椎間板ヘルニアを悪化させて戦線離脱となったのを始め、直近のデレック・ライブリー二世の右足の疲労骨折までケガ人続出が止まらない。

現地1月23日のサンダー戦ではドンチッチとライブリー二世、クレイ・トンプソンという本来のスタメン3人、さらにドワイト・パウエル、ナジ・マーシャルという有能なロールプレーヤーが欠場となり、ケスラー・エドワーズを初めて先発させる苦しい台所事情となった。

両チームともバック・トゥ・バック(2日連続の試合)の2日目で、ホーム2連戦のサンダーに比べてマブスはダラスでのティンバーウルブズ戦を終えてオクラホマシティに移動していた。さらに試合が始まれば、ライブリー二世に代わって先発センターを務めるダニエル・ギャフォードは試合中のケガで23分しかプレーできず。ドンチッチ不在の約1カ月で4勝10敗と勢いを失っているマブスがさらにこれだけのアクシデントに見舞われては、サンダーに勝つ見込みはないと思われた。

しかし、大方の予想に反してマブスは最高の試合運びを見せる。そして、ヘッドコーチのジェイソン・キッドが「今シーズン最高の勝利」と表現した121-115の快勝へと繋げた。

腰に痛みを抱えるカイリーを休ませるのも一つの選択肢だったが、そうしないことでキッドはチームに「全力で戦い、勝ちに行く」というメッセージを伝えた。そしてカイリーが、そのメッセージをコート上で一番に体現した。スペンサー・ディンウィディーとPJ・ワシントンが攻守両面で最大限に集中して隙のないプレーをして、ベンチからはオリビエ・マクセンス・プロスパーがステップアップした。

若く才能のあるサンダーに対し、マブスはフィジカルを前面に押し出してハードワークを惜しまなかった。連戦でコンディションは悪く、ベンチの層も薄いために、試合のどこかでガス欠になっても不思議ではなかったが、それより先にサンダーがマブスの激しさに音を上げて集中力を切らしていった。

トランジションディフェンスの最初の一歩が遅れ、ボックスアウトを怠ってボールを見るだけになり、攻めはシェイ・ギルジャス・アレクサンダーの個人技ばかり。いつものサンダーの良さは消え、アレックス・カルーソが守備からハッスルして悪い流れを変えようとしても他の選手がついてこない。終盤、シェイの個人技で点差を詰めてもディフェンスとリバウンドにいつものエネルギーがなく、マブスの勢いを押し返せなかった。

24得点を挙げたアービングは「全員が健康で勝っていたらこうは言わないけど、今は疲れ切っていて勝利を祝う気分になれない」と疲労困憊の表情。前日に38分プレーし、この日も39分プレーした。「昨夜は良いトレーニングができたし、目が覚めた時に気分が良かった。スタッフは練習開始の4時間前から僕の身体のケアをしてくれた。もうすぐ32歳の自分が今日プレーできたことを誇りに思うよ。そして仲間たちを誇りに思う」

前日、健闘虚しく1点差でウルブズに敗れた後に「このメンバーで優勝できるという自信に変わりはない」と豪語したPJ・ワシントンは、22得点19リバウンドの大活躍を見せた。「取れるリバウンドは全部取るつもりだった」と彼は言う。「本当は20リバウンドのはずなんだけど、1つはチームリバウンドと記録されていた。でもまあ勝てたからいいや」