あきらめたとの意見に「誰一人として満足していない」
ウォリアーズが再建チームのラプターズに敗れて勝率5割を切った時、ステフィン・カリーは「ヤケになってチームの資産を投げ売りすることはない」と語った。NBAではトップスター選手を擁するチームは、将来の資産を投げ打って最強のロスターを編成して優勝を目指す。例えばレブロン・ジェームズは異なる3つのチームで優勝しているが、彼はその都度、将来の資産を投げ打つことを所属クラブに強いてきた。これがNBAの『定石』である。
カリーはそれを否定し、指揮官スティーブ・カーもドレイモンド・グリーンも同じことを語った。この発言はメディアに大きく取り上げられ、そのニュアンスは「彼らはあきらめた」だ。チームのサイクルが終わりつつあることを認め、現役引退へと向かう、そうでなければ新天地を求める──。実際、ウォリアーズが将来の資産を最大化するには、カリーがトップレベルをキープしているうちにトレードするのがベストだろう。
そんな視線が向けられる中、ウォリアーズは現地1月15日に敵地でティンバーウルブズと対戦した。第1クォーターを34-12と圧倒して今回は楽勝かと思われたが、今のウォリアーズにその力はない。最大24点あったリードは次第に溶けていき、第4クォーター残り1分で追い付かれた。ミネソタのファンは大逆転勝利の予感に大騒ぎし、ウォリアーズには重圧がかかる。追い付かれるまでの過程でデニス・シュルーダーが退場し、つまらないミスも続いており、絶体絶命の状況だった。
しかし、ここでカリーが真価を発揮する。スクリーンでスイッチを強いて、ビッグマンのナズ・リードと3ポイントラインを挟んで対峙。この時はリードに適切な距離感を保たれて3ポイントシュートは打てなかったが、インサイドにパスを入れて揺さぶりをかける。リードは慌ててゴール下へと戻り、フリーになって左コーナーへと走るカリーをウルブズの選手は誰も見ていなかったが、ケボン・ルーニーはそれを見逃さずにパスを返す。慌てて寄せるリードをカリーはサイドステップでかわし、落ち着いて3ポイントシュートを沈める。こうして再びリードを奪ったウォリアーズは、その後も必死に食らい付くウルブズを振り切って116-115で勝利した。
今のウォリアーズは決して強いとは言えないチームだ。楽勝で勝つべき展開でも最後の最後までもつれてしまう。だが、接戦のラスト3分で2本の3ポイントシュートを決め、最後のファウルゲームのフリースローも全く外す気配を見せず2本を決めきったカリーの勝負強さとリーダーシップは健在だ。
STEPH CURRY ‼️
Pump fake, calm side-step. CASH.
Warriors by 3 under a minute on ESPN… pic.twitter.com/RatU9qFcmw
— NBA (@NBA) January 16, 2025
試合を終えてのコートインタビューで、カリーはこう語る。「激しい展開になって、屈しない力は求められた。ケガ人が多くて試合のほとんどで苦戦を強いられたけど、その状況でみんながステップアップし、ウルブズが何度も猛攻を仕掛ける中でも落ち着きを保って戦い続けた」
「そして今日は幸運にもボールがウチに転がってきた。このところそんなことは起こらなかったんだけどね(笑)」
カリーがそう言うのは、2点リードで迎えた残り10秒、ゲイリー・ペイトン二世がフリースローを外したリバウンドだ。ゴール下にはウルブズの選手が待ち構えていたが、リムで弾んだボールはそこに落ちず、ペイント外のアンドリュー・ウィギンズに拾われた。ここでウルブズがリバウンドを確保していたら、もう一回チャンスがあった。カリーはこれを「幸運にも」と言って笑った。
先の発言からトレードだ解体だと、ウォリアーズは今までにないレベルの雑音に取り巻かれていた。それでもこの1勝で勝率を5割に戻したことで、しばらく落ち着くはずだ。
「メディアは24時間フル稼働で、それは時には滑稽に見えるよ」とカリーは言う。「僕らの誰一人として現状に満足しておらず、『そこそこ』で良いなんて思っちゃいない。SNSでトレードを論じる人たちは、僕らが解決策を見つけるまで少し黙って見守っていてほしい。僕たちには戦う力がある。今日はタフに戦えることを示した。誰にも負けないという自信を持っているよ」
しかし、少なくとも2月のトレードデッドラインを過ぎるまでウォリアーズが勝ち続けない限り、人々が口を閉ざすことはないだろう。勝率5割で西カンファレンス10位は決してリラックスできない状況であることに変わりはない。