西村文男

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

トランジションを操り、リードを拡大する働き

千葉ジェッツはサンロッカーズ渋谷との最終節に連勝し、レギュラーシーズンを終えた。今日の第2戦は立ち上がりからSR渋谷のペースで試合が進み、追いかける展開が続いた。それでも、お家芸のトランジションオフェンスから流れをつかみ、後半を56-27と圧倒し完勝した。

西村文男は14分の出場で3得点3アシストを記録。本人は「通常運転でしたね(笑)」と頬をゆるませたが、トランジションから田口成浩の3ポイントシュートをお膳立てするなど、特にリードを広げる部分で勝利に貢献した。選手が出場している時間帯の得失点差を表す±の数字で+19を記録したことからも、彼の存在がいかに大きいかが分かる。

『通常運転』という言葉には、『安定』という意味も含まれる。特にスポーツ選手は安定したパフォーマンスが求められるだけに、それを体現することは容易ではない。西村は、安定してプレーできる2つの理由を明かした。

「一つは試合に出てない時に、誰よりも試合について考えてる自信はあります。それが出せるのがうまくいってるとは思います。あとは、自分がやりたいこと以上にみんなが応えてくれてるので、逆に助けられてる部分も多いです」

そう仲間への信頼を語った西村は、ワンマン速攻の場面であえて自分でシュートに行かず、後ろから走り込んだマイケル・パーカーへパスをした。「自分がレイアップするよりも、マイクがダンクをかましたほうが勢いが出ると思ったので」とその理由を明かしたが、ベンチからは「大人!」と言われたそうだ。

西村文男

「圧倒的に勝った千葉ジェッツのほうが怖い」

来週にはチャンピオンシップが待ち受ける。千葉は52勝8敗という歴代最高勝率でホーム開催権を手にした。西村も「8敗という記録は自信を持っていいし、この自信をそのままチャンピオンシップに持っていきたい」と意気込む。

リーグ1位の千葉はクォーターファイナルでワイルドカード2位の富山グラウジーズと対戦する。富山には、昨シーズンまで千葉に在籍していたレオ・ライオンズと阿部友和が在籍しているが、「相手が誰であろうと分析して勝つだけです」と、西村に特別な思いはない。

チャンピオンシップは2戦先勝の短期決戦だ。そのため、どんな形であれ勝てばいいと考えるのが一般的かもしれないが、西村は「勝ち方も大事。理想は圧倒的に勝ちたいです」と、内容にもこだわりをみせる。

「初戦は富山ですが、次にやるチームに『今の千葉は違うぞ』って少しでも思わせるのは大事だと思う。接戦で勝った千葉ジェッツよりも圧倒的に勝った千葉ジェッツのほうが怖いと思うので、少しでも相手をビビらせるというか。40分通してジェッツは気が抜けないぞと」

昨シーズン、ファイナルで涙を飲んだ千葉にとって、目指す場所は優勝しかない。西村が言うように、クォーターファイナルで圧倒することができれば、それだけ頂へと近づく。そのためには『通常運転』以上のパフォーマンスを西村には期待したいところだ。