20得点10リバウンドのダブル・ダブルで勝利の立役者に
ウインターカップ2024の男子準々決勝では、昨年の覇者である福岡第一(福岡)と一昨年の優勝チーム開志国際(新潟)が激突。ともに相手の強度の高いディフェンスに苦しむ中、最後まで堅守速攻を貫いた福岡第一が70-63で激闘を制した。
試合の出だし、福岡第一は宇田ザイオンが過去2試合で試投数ゼロだった3ポイントシュートを決めると、さらに宮本聡のスティールから宮本耀が得点を決め9-2と先制パンチに成功する。しかし、清水脩真の連続得点などで盛り返した開志国際に対し、福岡第一はトランジションを繰り出してもレイアップを決めきれないなど決定力を欠いて得点が停滞。29-35とリードを許して前半を終えた。
それでも後半には宮本兄弟を中心にトランジションからイージーシュートを作り出す機会が増え、徐々に流れを引き寄せていく。第4クォーターに入っても一進一退の攻防が続く中、福岡第一は強度の高いディフェンスで相手にタフショットを強いる場面が増えていく。ここから攻守の素早い切り替えによって走る展開に持ち込み、60-61で迎えた残り5分から6連続得点で逆転。そこから最後までディフェンスのプレッシャーを緩めずにリードを守り切った。
この大会前、福岡第一の井手口孝コーチは、チームの状況を「全くダメですね」と苦笑混じりに語っていたが、ウインターカップの大舞台でしっかりとチームを仕上げてきた。試合後には「よく我慢できましたね、偉いです」と選手たちのハードワークを称えた。
チームの好調の原動力となっているのはディフェンスだ。井手口コーチはこう語る。「いろいろとディフェンスを考えて、1年を通してオールコートからゾーンまでありとあらゆることをやりましたが、ここにきてハーフコートマンツーマンにたどり着きました。それも昨日くらいからで、本当にやっとここにきてディフェンスができるようになりました」
井手口コーチ「頼れる3年生になりました」
福岡第一は優勝した昨年も先発だった3年生エースの八田滉仁、そして抜群の連携を見せる双子の宮本兄弟がスポットライトを浴びることが多い。しかし、今日の主役は20得点10リバウンドと攻守で躍動した宇田ザイオンだった。
特に前半、チームとしてオフェンスが機能しない中、宇田がフィジカルの強さを生かしたローポストからのジャンパーを確率良く決めたことは、6点ビハインドとワンチャンスで追いつける点差で折り返す助けとなった。井手口コーチは、今日の宇田の活躍に「明日はどうなるかわかりませんよ(笑)」と冗談を言いつつ「あのくらいやれます。頼れる3年生になりました」と目を細める。
宇田本人は、「最後まで全員でディフェンスを続けることができた」と勝因を語るとともに、「あきらめずにアタックをしていこうと話していました」と振り返る苦しい時間帯の強気のアタックでチームを救った。
このオフェンスの活躍について、宇田は「周りがきつくなるので自分が攻めないといけない感じでした」と覚悟を持って臨んでいた。これは「試合に出ている3年生は滉仁と自分しかいないので、頑張らないといけないです」という最上級生の責任から来るものだ。
今日の福岡第一は一度も選手交代を行わなかった。40分フル出場について宇田は、「ちょっと足に来ました」と明かすが、それでも明日の準決勝でも今日と同じ強度で40分間走り回るつもりだ。そこには「自分たちは、どのチームよりも一番練習してきました」という絶大な自信がある。
明日のベスト4、明後日の決勝と連戦が続くが、福岡第一以上の運動量を持ってタフに戦えるチームはいない。「連戦となりますが、もう一段粘ってディフェンスから走って勝ちたいです」と宇田が目指す戦い方を遂行できれば、自然と結果はついてくる。