渡邊雄太

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部

「1年間やり通せたことは意味のあること」

NBAのグリズリーズと2ウェイ契約を結び、激動のシーズンを送った渡邊雄太が昨日帰国した。

田臥勇太以来2人目となる、日本人NBAプレーヤーとなった渡邊。夢を叶えた達成感はあるものの、NBAに定着できなかった悔しさが勝り、「満足は一切していない」とシーズンを振り返った。

「小さい時からの夢だった、NBA選手になるということを達成できました。でも、1年を通してはNBAの試合に出ることができなかったので、満足した1年ではなかったです」

NBAではいきなり契約解除が言い渡されることも少なくないシビアな世界。渡邊と同じ2ウェイ契約だった2人の選手は、シーズン中に解雇されている。だからこそ、こうしたNBAサバイバルに生き残った事実については、渡邊も自信にしている。

「生き残りが難しい世界でグリズリーズ、ハッスル(Gリーグ)の一員として1年間やり通せたことは意味のあることだったと思っています。満足はしていないですが、いわゆるスーパースターと呼ばれる人たちと同じコートでやり合う中で、やっていけると思いましたし、自信になった1年にはなりました」

そのNBAで対戦した選手の中で印象に残った選手を聞かれた渡邊は、2人のスーパースターの名前を挙げた。「一人はバックスの(ヤニス)アデトクンボ、もう一人はロケッツのジェームズ・ハーデンです。アデトクンボに関してはあの身体で、あの技術で、あの身体能力という。NBAの中でもトップクラスだと思っています。ハーデンに関しては、あの得点力に加えてパスをいつでも出せます。同じコートに立ってプレーはできなかったんですけど、ベンチで見ていて、彼がボールを持てば得点されそうな嫌な感じがあるプレーヤーでした」

渡邊雄太

「大好きなバスケットが仕事という部分で幸せ」

NBAでは15試合の出場に終わった渡邊だが、ハッスルでは主力として活躍。33試合(うち32試合で先発)に出場して平均14.1得点、7.2リバウンド、2.8アシスト、1.2ブロックを記録した。

渡邊も「Gリーグでは自分でも良い試合ができたなっていうのが何試合もありました。それに関してはフロント、コーチ陣含め評価してもらったと思います。そこでの活躍がカットされなかった理由の一つ」と言う。

もちろん、次なる目標はNBAでコンスタントにプレーすることだ。NBAとGリーグには想像以上に厚い壁が存在し、「Gリーグで簡単に決められたシュートが、NBAに行くとなかなか決めれなかったです」と振り返るが、その経験も次の挑戦に向けた糧になる。「NBAでもGリーグくらいのプレーができれば、当然使ってもらえると思う」と、NBA定着に意欲を燃やしている。

また渡邊は、「練習態度に関しては一番評価されたと思っている」と、グリズリーズから解雇されなかった理由の一つに練習への取り組み方を挙げた。日本人特有の勤勉さはアメリカでも高評価なのだろう。それに加えて、グリズリーズのスター選手であるマイク・コンリーに影響を受けたと明かした。

「コンリーは尊敬しています。スーパースターではあるんですけど、そういう振る舞いは一切見せずに、常に貪欲でリーダーシップもあって、最後まで残って練習しているんです。このレベルの選手がやるんですから、当然彼より練習しないといけないという部分で、練習後は一番最後まで残ってやるようにしてました」

NBAとGリーグを行き来し、精神的にも肉体的にもタフなシーズンを送った渡邊だが、バスケを愛する心が過酷さを乗り越え、充実感に変わったという。

「2ウェイ契約なので、とにかくバスケ漬けのシーズンでした。大好きなバスケットが仕事という部分で幸せを感じていますし、充実した生活ができました。最高な1年を送ったけど、満足は一切してないので。今後が大事になってきます」

「そんなに休んでる暇はなく、5月の頭にはメンフィスに戻ってトレーニングを始める」という渡邊。滞在期間は決して長くないが、日本で心身ともにリフレッシュし、再び訪れるアメリカでのタフな挑戦に備えてほしい。