「プレッシャーに対して、受け身になってしまった」
開幕から14試合を7勝7敗で終えた京都ハンナリーズは、アウェーの地で名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦した。第1戦は前半に点差をつけられ後半に巻き返したが6点差で敗戦。第2戦も終始追い上げる展開で一歩及ばず、80-88で連敗を喫した。
試合後、京都のロイ・ラナヘッドコーチは「名古屋Dさんのプレッシャーに対して、自分たちは受け身になってしまいました」と振り返る。
序盤からフルコートで激しいディフェンスを仕掛けてきた名古屋Dに対して、京都はターンオーバーを連発してしまった。名古屋Dは第1戦も同様なディフェンスで流れを作っていたため、この試合でも同じようなディフェンスを仕掛けてくることは容易に想像できた。対策として第1戦ではベンチスタートで効果的にボール運びを行っていた澁田怜音を第2戦では先発に起用して臨んだが、第1クォーターだけで8本のターンオーバーを喫してしまった。
ラナヘッドコーチも敗因はターンオーバーだったと話す。「最終的に8点差でしたが、自分たちのターンオーバーから29失点している現実があります。ターンオーバーがなければ昨日も今日も勝てるチャンスはあったと思います。名古屋Dさんのプレッシャーに対して、自分たちがいい判断をできなかったです」
名古屋Dに終始リードされる展開ではあったが、十分に戦えている時間帯も存在した。昨シーズンは若手中心のロスターで大きく崩れる試合も多かったが、この試合ではベテランが要所で仕事をして、最後まで勝利のチャンスがある展開を作った。
この試合で奮闘したのが37歳のベテラン、古川孝敏だった。今シーズンはケガで約3週間の欠場があったが、京都を強豪チームにすべく奮闘を続けている古川には、ラナヘッドコーチの期待も大きい。「やっと戻ってきてくれて、感覚を戻しているところだと思います。彼がもたらしてくれる経験は非常に大きいです」
「勝ちに繋げることを第一にして、全員で戦っていく」
古川もラナヘッドコーチ同様にターンオーバーを悔やむ。「ターンオーバーから自滅したかなぁと。ファストブレイクでも27点取られてしまっていますし、簡単な得点を許してしまいました。それを抑えれば勝てたかというわけではないですが、もう少し落ち着いてゲームを運ぶことはできたかなと思います」
なかなかうまくいかない時間帯も多い中で、チームメートと話す姿も多く見られた。アウェーの試合でも完全に飲み込まれなかったのは、常に連携を確認して自分たちがすべきことに集中した結果だろう。コート上のコミュニケーションについて古川は振り返る。「ミスが生まれた時に全員が前を向いていけるような声掛けを意識しました。試合中は一つのプレーに一喜一憂せず、次にどうするかを常に考えて話しています」
さらにベテランとしてチームの中で自分がどうあるべきか考える言葉が続く。「ハンナリーズというチームがある中で、自分の良さをどう出していくかを考えてやっています。自分がアプローチして、周りを動かすというよりも、他の選手の良さがある中で自分がやる意識です。もちろん積極的にコミュニケーションをとって、どうすればやりやすくなるかという話もします」
その意識を象徴するような場面があった。追い上げが必要な最終クォーター中盤、ルーズボールからトップの位置でボールを持った古川は自らのシュートではなく、ワイドオープンとなっていた川嶋勇人へのエクストラパスを選択。川嶋が3ポイントシュートを成功させて6点差に詰めた。京都に来て周りを生かす意識が強くなっていると感じていたが、古川は謙遜してこう話す。「周りを生かすのは得意じゃないので(笑)。生かされる側ですね。自分が生かされる中で、周りの選手が生きてくるというシチュエーションが今までは多かったです」
最後にチームファーストな姿勢と前を向く言葉で締めた。「自分で切り開いていくタイプではないですけど、しっかりとチームの中で自分の良さを表現していって、シーズン通して成長していければと。今回は2連敗してしまいましたが、勝ちに繋げることを第一にして、全員で戦っていきます」
京都はラナヘッドコーチ3年目となり勝負のシーズンを迎えている。過去2シーズンは思ったように戦績が伸びなかったが、今シーズンは上位相手にも十分に戦う姿を見せている。新チームで奮闘する古川と成長を続ける京都の躍進に期待せずにはいられない。