洛南はウインターカップ出場45回、4度の優勝を誇る名門だが、近年は京都府のライバル東山が強くなり、全国大会出場を逃す悔しさも味わってきた。その東山は今夏のインターハイで初の全国制覇を実現している。だが、今回のウインターカップ予選で洛南は東山を最後まで苦しめる善戦を見せた。大型選手が揃う今の洛南では、伝統のパス&ランのバスケがそのポテンシャルを大いに発揮できる。エースの松本秦は、高校日本一を狙える最後のチャンスに必勝の気迫で臨む。
「洛南のバスケが自分には一番合っている」
──まずは松本選手が洛南に入って、ここまでどんな経験をしてきたかを教えてください。
兵庫県出身、洛南のフォワードの松本秦です。中3の全国クラブ選手権で3位になりました。洛南では2年生になってプレータイムが伸びて、エースを任せてもらったのですが、結果が残せなくて悔しい1年になりました。
自分の一番の強みはオールラウンドにプレーできることだと思っています。もともとはインサイドの選手だったのですが、洛南に入って少しずつポジションアップさせてもらって、一番伸びたのは外からの1対1だったり3ポイントシュートだったりと、外から攻めるプレーです。それまでは全然できなかったので、そこは成長できたと思います。
──洛南は名門ですが、このところ全国では好成績を収めていません。兵庫出身の松本選手が洛南を選んだ理由は何でしたか。
一番はコーチ陣の指導方針ですね。「オールラウンドの選手を育てる」ことを重視していると聞いて、自分がこの先もバスケを続けていくためには、この身長だとどんどんポジションアップをしていくべきだと思っていました。実は東山も選択肢としては考えたのですが、東山は「ガードがメインでピックのチーム」という印象で、僕がいきなりガードポジションをやれるかといえば、そうじゃないと思いました。最終的に自分がオールラウンドな選手になるために、どういう道をたどっていったらいいかと先々まで見通した時に、洛南のバスケが自分には一番合っていると思いました。
──その『洛南のバスケ』がどんなものか、説明してもらえますか。
一言で言えば、ピックに頼らず全員で動いてパスランするバスケですね。だから全員がオールラウンドなプレーをしなければいけないし、スペーシングも重要です。そういうバスケを身に着けたいと思いました。
──河合祥樹コーチから一番学んだことは何ですか?
2年生になってプレータイムをもらえるようになった時期、最初は弱気なパスばかりさばいていたんですけど、そこで「空いたらドライブして打って、思いっきり行って決めてこい。外したらディフェンスで取り返せばいいから」とすごく励ましてもらって、そこから自分のプレーが変わったと感じています。
瀬川琉久に「負けてないぞという思いはあります」
──昨年は全国の舞台に出られず、今年のインターハイにも出場していません。
そうですね。僕は1年生の時にウインターカップに少しだけ出たぐらいです。その時は初戦でケガをしていた先輩の代わりにスタメンで出たのですが、その後はほとんど出番がなく、チームはベスト8で中部大学第一に負けています。そこから全国大会には出ていないので、今年のメンバーは全国の経験がほとんどないことになります。
──それでもウインターカップの出場を決めました。全国での経験は足りないかもしれませんが、松本選手に限らず3年生がメインのチームなので勝負の大会になります。京都府予選では東山とも接戦を演じています。今のチームの雰囲気はいかがですか。
ウインターカップ予選ではもちろん優勝を狙っていたので、最後に東山と良い勝負はできたんですが負けてしまって、ちょっと落ち込んでいるチームメートもいました。でも、すぐにU18日清食品ブロックリーグが控えていて、そこで雰囲気を落とさないように練習に取り組みました。
──近畿ブロックリーグでは6戦全勝で優勝しました。収穫はありましたか?
今年のチームには公式戦の経験が少ない選手も多いです。この近畿ブロックリーグには留学生のいるチームもいて、そういうチームと良い戦いができました。一番は勝てたことでチームに自信が生まれたことです。試合が連続で続くことも普段の僕たちにはあまりないことなので、そこでのコンディションの保ち方、モチベーションの保ち方という意味でも得られるものは大きかったです。
──洛南の下級生に話を聞きましたが、「ウチのエースの松本さんは東山の瀬川琉久選手よりすごいです」と話していました。この言葉をどう受け止めますか?
いやいやいや、うれしいですけど……(笑)。今やNBAの『バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・グローバルキャンプ』に招待されるレベルの選手なので、比べられるのは素直にうれしい部分はあります。
でも、少なくとも完敗はしていない、負けてないぞという思いはあります。僕も瀬川も同じ兵庫出身で、小学校の頃から知っているんですよ。ミニバスのコーチ同士が仲が良くて、よく練習試合をしていました。中学の時も違うクラブチームでやりあっていたので。
──それが今は洛南と東山のエース同士なのは面白いですね。ライバルという意識はありますか?
ミニバスの頃から「瀬川はできるのに、なんでお前はできへんねん」みたいにコーチからハッパを掛けられ続けているので、どうしても意識はしますね(笑)。
「自分を信じてプレーすれば結果は付いてくる」
──その東山とのウインターカップ予選では、接戦には持ち込んだものの74-79で敗れています。この試合を勝ち切るには何が足りなかったですか?
一番足りないと感じたのは勝負どころのもう一押しです。僕たちがリードして点差が開き始めた時のもう一押しが足りませんでした。第4クォーター最後の場面でも、東山は3ポイントシュートを確実に決めるのに、自分たちはボールが止まってしまってシュートも決められず、最後の最後で流れを相手に持っていかれました。シュートもリバウンドも含めて、勝負どころでの攻め方、守り方、集中力のところに差を感じました。
──そのクラッチタイムの勝負強さを身に着けるために、ウインターカップ開幕までの短い期間で何をしますか。逆に言えば、それができれば東山に勝てる、つまりは優勝のチャンスも出てくるはずです。
そのためには自分に自信を付けるしかないと思います。打つと決めたら自分を信じて打つしかないし、味方を信じてパスを出すこともそうです。最後は気持ちの問題だと思っています。チームメート同士で信じ合って、なおかつ自分を信じてプレーすれば、シュートが入るか入らないか、その結果は付いてくると信じています。
──では最後にウインターカップへの抱負を聞かせてください。
個人としてはエースを任されていますし、「最後は自分が行って点を取って勝つ」ぐらいの強い気持ちでプレーしたいです。チームとしては日本一を目標に掲げていて、その中で洛南の全員でバスケをする、パス&ランで攻めるという洛南の伝統のバスケを全国の方たちに見せられたらと思います。
──こういうプレーをするから見ててくれ! というものはありますか?
公式戦ではあまり成功したことがないんですけど、最後のウインターカップということもあるので、ドライブからダンクを決めます!