ジョエル・エンビードは今シーズンいまだ出場なし
セブンティシクサーズは現地11月6日のクリッパーズ戦を98-110で落とした。前半は接戦だったが、後半に失速しての完敗で、ワガママし放題で出ていった『因縁の相手』であるジェームズ・ハーデンにやられた悔しさもあったが、タイリース・マクシーが第4クォーターに出場しなかったことは、それ以上の危機感をチームにもたらした。
マクシーの交代は「右足ハムストリングに張りがあり、大事を取って下げた」との説明だったが、検査の結果は肉離れで数週間の戦線離脱となった。左膝をケガしていたポール・ジョージが復帰し、コンディション調整の遅れを取り戻しているジョエル・エンビードも来週には戦線復帰の予定。それでも『ビッグ3』の揃い踏みが見られるのは、まだ当分先のことになる。
マクシーは開幕から7試合に出場し、そのうち5試合でチーム最多の得点を挙げて他の主力が欠場するシクサーズのオフェンスを引っ張っている。平均27.6得点はキャリアベストの数字だが、フィールドゴール成功率40.6%と3ポイントシュート成功率28.6%はいずれもキャリア最低の数字。本来なら効率的に得点できるマクシーも、エンビードとジョージ不在で相手ディフェンスが集中する状況で、イージーな得点が生まれず苦労している。
しかもチームは1勝6敗。キャリア5年目で飛躍の時を迎えているとはいえ、マクシーが一人ですべてを背負い込むのは無理だ。エンビードがダブルチームを引き付けてズレを作り出す、相手で一番優れたディフェンダーがジョージのマークに付く、そういう状況でマクシーの突破力を活用するのが理想だが、それが見られるのは数週間先になる。
この場合の『数週間』は、早くて2週間、長くても4週間ほどを意味するが、ハムストリングの肉離れは再発しやすく(ハーデンはこの『古傷』に長く苦しんでいる)、無理に復帰を急ぐのもリスクが高い。しかし、復帰したところでエンビードもジョージもケガを抱えており、タイプの異なる3人が揃うことで発揮される効力を考えれば、とにかく早期復帰が望まれる。
そして、開幕からわずか20日で、シクサーズにはすでに余裕がなくなりつつある。シーズンは82試合の長丁場とは言え、序盤の大きなつまづきは最後まで響く。『INQUIRER』によれば、開幕1勝6敗からプレーオフに進出したチームは過去20年間で1つしかない。バックスも1勝6敗で、こちらはヤニス・アデトクンボとデイミアン・リラードの組み合わせがプラスをもたらしておらず、指揮官は周囲の信頼を失っており、空中分解寸前の状況にある。それに比べればシクサーズは「3人が揃えば」という前提はあれど先行きに期待は持てる。
だが、今の低調なペースが続けば、取り戻すのは厳しくなる。プレーオフに進出できたとしても、レギュラーシーズン終盤にコンディション管理という悠長なことをする余裕がなく、プレーイン・トーナメントを経由して疲労困憊で上位チームとのファーストラウンドに挑んで、ケガ持ちの主力が力を発揮できるのだろうか?
しかし、話題がエンビードとジョージ、マクシーの3人に集まる中で、そうは思っていない選手がいる。ベテランのカイル・ラウリーだ。「この状況から抜け出すにはどうするか。それを考えるのは『僕たち』だ。これをすれば勝てる、これをすれば抜け出せる、という魔法の言葉は存在しない。昔から言われ続けているように、解決策を見つけるまで努力し続けるしかないんだ」とラウリーは言う。
「努力しているつもりでも結果が出ず、自分たちのプレーにも満足できない今はチームの雰囲気も良くない。どうしても落ち込んでしまう。でも、そこで僕らにできるのは、ただ努力し続けることなんだ。彼らの不在は痛手だけど、僕らはもっと頑張れるはず。高いレベルのプレーを安定して発揮する、そこまでたどり着けばチームはきっと良い方向に進む」