キヤンテ・ジョージ

ケガ人続出を受け、戦術をシンプルにしてミスを減らす

今シーズンのジャズはタンク狙いで勝利は期待できない。東カンファレンスでは同じような見方をされていたネッツが4勝、ピストンズが3勝を挙げる中、ジャズは開幕6連敗を喫していた。先発フォワードのテイラー・ヘンドリックスが右腓骨の骨折で今シーズン絶望となり、頼みのエース、ラウリ・マルカネンは背中の痙攣で、ベテランのジョーダン・クラークソンも左足裏の痛みで戦線離脱。もともと層が厚いわけではないジャズの競争力は大きく低下した。

フロントはこの事態にも動じていない。昨シーズン序盤にチームが好調すぎたのが『計算外』で、途中で主力を次々と放出したのが今のジャズだ。再建中のチームで勝利は求められていないし、ケガ人が出ても他の若手にチャンスが回るのは悪いことではない。

一方で、チームは1勝を挙げるために全力を尽くしていた。その努力が実ったのが現地11月4日のブルズ戦だ。前半にリードそ、第3クォーターに追い付かれるものの、勝負の第4クォーターに再びギアを上げて135-126で今シーズン初勝利を挙げた。開幕から6試合で平均100に届かなかった得点が135に伸びたことが勝利に繋がった。

マルカネン不在のオフェンスを牽引したのはキヤンテ・ジョージで、キャリアハイに並ぶ33得点に9アシストでターンオーバーはわずか2。「ついに勝ったぞ!」と叫んでロッカールームに戻り、仲間たちと健闘を称え合った。

指揮官ウィル・ハーディーは「スタッツも良かったが、それ以上に試合をどう進めたかが良かったし、そこにチーム全員が関与していたことが重要だ。すべてをゼロから見直して、バスケをよりシンプルにして、その代わりに遂行力を上げることを求めた。選手たちはその求めに応じてくれた」と言う。

ケガ人続出を受けて、今のジャズではコディ・ウィリアムズとカイル・フィリパウスキーという2人のルーキーが先発出場している。1巡目10位のウィリアムズはともかく、32位指名のフィリパウスキーは即戦力としては見なされておらず、先発起用は『苦肉の策』でしかない。それを機能させるためにハーディーは複雑な戦術を取りやめ、シンプルなプレーを堅実にこなすことを求めた。

ペースを速め、セットプレーを減らし、積極的に攻める。「選手たちはゲームプランを忠実に遂行してくれた。ボールを持ちすぎる場面はほとんどなかった。それがここまでの6試合との明確な違いだったと思う」とハーディーは言う。

こうしてチームバスケの足並みが揃い、イージーミスをなくすことでリズムが生まれると、それが誰かの爆発的な活躍を引き起こす足場となる。そして今回、その爆発的な活躍をキヤンテ・ジョージが見せた。「プライドを持って試合に臨むんだ」とジョージは言った。「今日はまさにそんな試合だった。選手もスタッフもチーム全員がもう負けるのは十分だ、自分たちが高いレベルで戦えることを示そうと一致団結していた」

ウォーカー・ケスラーは12得点16リバウンド、ジョン・コリンズは28得点13リバウンド、コリン・セクストンは24得点と多くの選手が自分らしいプレーで結果を残した。セクストンは疲れ切った表情で、それでも笑みとともにこう語った。「毎試合これぐらい力を出し切らなきゃいけない。NBAで一つ勝つためには、これぐらいハードに戦わなきゃいけないんだ」