デニス・シュルーダー「再建という言葉に屈しない」
今シーズンのネッツは注目も期待もほとんどされないままスタートを切った。ケビン・デュラントとカイリー・アービングの時代は過去のものとなり、今オフにはエースのミケル・ブリッジズも放出して、チームは完全な再建モードに突入した。
『豊作』と言われる来年のNBAドラフトでの上位指名権を得るためには、今シーズンはむしろ負けた方が良い──。しかし、そんな考え方にチームは同意していない。新たにチームを率いるジョルディ・フェルナンデスは、これがNBAで初めてヘッドコーチを務める機会でモチベーションはこの上なく高い。非凡な得点能力を発揮しながらも移籍市場では注目されないキャム・トーマス、ドイツ代表を世界一に導いたにもかかわらず正当な評価を得られないデニス・シュルーダー、ケガの連鎖で『ガラクタ』と罵声を浴びせられるベン・シモンズといった面々が、NBAにおける自分の価値を証明しようと躍起になっている。
ネッツは開幕から敵地でのホークス戦、マジック戦を落として連敗スタートとなったが、現地10月27日のホーム開幕戦では、接戦で迎えた第4クォーターにヤニス・アデトクンボとデイミアン・リラードというビッグネームを擁するバックスを圧倒。10-0のランを含む猛攻で106-89と突き放し、残り3分半の時点でバックスに主力を下げさせる快勝を収めた。最終スコアは115-102。バークレイズ・センターに集まった1万8000人のファンに、素晴らしいバスケを披露してシーズン初勝利をプレゼントした。
ジョルディ・フェルナンデスはヘッドコーチとして迎えた記念すべき初めてのホームゲームに、故郷のスペインから家族を呼び寄せていた。「家族と素晴らしいファンの前で勝つことができてうれしい」と彼はホーム初勝利を喜んだ。
キャム・トーマスは開幕から36得点、24得点、32得点とコンスタントに大量得点を挙げ、エースとして堂々たるパフォーマンスを見せている。それでも彼は「相手の攻撃を防ぐこと。それが勝利の秘訣なんだ」とディフェンスが機能していることを強調した。「相手の勢いに飲み込まれそうな時にも下を向かず、自分たちのプレーを続けた。それが今日の勝利に繋がったんだ。でも僕らは満足していないよ。今シーズンはすべての試合で勝ちにこだわっていきたい」
シュルーダーは29得点6アシストを記録。ディフェンスでもリラードを圧倒し、コートに立っていた35分間で+27のリードを作り出した。それでも彼は自分の活躍ではなく、チームのパフォーマンスに胸を張った。「オールコートの守備でボールを奪い、攻めへと繋げたい。全員がそう意識している。たくさん走って良い3ポイントシュートのチャンスを作る。そのためにはペイントタッチや仲間のためにスペースを作る動きも大事で、そのすべてを48分間やり続けることができた」
シュルーダーは昨シーズン途中に加入したネッツで、強烈なリーダーシップを発揮している。トレーニングキャンプから事あるごとに口にしているのは「再建という言葉に屈しない」だ。再建だから負けてもいい、とは彼は考えない。そんな考え方がチームにあることを受け入れもしない。
「自分たちのやるべきことに集中したいんだ。僕たちはコートに出てプレーする。それは何のためかと言えば試合に勝つためだし、プレーオフに行くためだ。『プレーオフに行く必要はない』なんて考え方は間違っている。誰も信じないとしても、ウチのロッカールームにいる全員が雑音は気にせず、一つでも多くの勝利を挙げたいと思っている」