大敗した第1戦とは見違える、気迫溢れるプレーを披露
第1戦では栃木ブレックスが103-57の大差で滋賀レイクスターズを下したが、19日の再戦では、滋賀が見違えるようなプレーを見せた。滋賀のホーム、ウカルちゃんアリーナの入場者はクラブ史上最多の4123人。不甲斐ない試合の翌日にもかかわらず、開始1時間前には札止めとなる大盛況だった。
両チームとも外国籍選手のオン・ザ・コート数「1-2-1-2」で迎えた第1クォーター。滋賀は菅原洋介が3ポイントシュートで先陣を切ると、ファイ・サンバの7点を挙げる活躍などで栃木を圧倒する。スコアは19-10だった。
両ヘッドコーチに第1クォーターの分析を求めると、似たような答えが返ってきた。滋賀の遠山向人ヘッドコーチは「システム的なことはあまりいじっていない。一番強調したのはインテンシティですね。激しさ、気迫です」と説明する。栃木のトーマス・ウィスマンヘッドコーチは「自分たちが激しさを持って試合に臨むことができなかった」と振り返る。昨日の結果が一方にとってはモチベーションとなり、もう一方にとっては緩みを生む理由になっていた。
また栃木は第1クォーターのシュート成功率が「18.8%」という異例の低さだった。ライアン・ロシターはこう振り返る。「いい形でシュートは打てていましたが、昨日は決めていたシュートが入らなかった」。そのようなチグハグさが10点というロースコアにつながった。
3点差とされた第3クォーター後半に飛び出したビッグラン
ただ第2クォーターは栃木が押し返す。ジェフ・ギブスが2本のダンクシュートを含む6得点を決めて攻撃を活気づけ、31-32と1点差まで追い上げてハーフタイムを迎える。第3クォーターの残り9分15秒には、ロシターがジャンプショットを成功。栃木はこの試合初のリードを奪った。
ただ、この日の滋賀は二枚腰だった。滋賀はサンバの連続ポイントでリードを取りも押すと、第3クォーター残り6分37秒には並里成が田臥勇太からスティールを決める。並里が「あそこで流れが変わったと思う」と振り返る大きな潮目だった。
直後の残り6分1秒、滋賀はロシターに決められて42-39と詰められたが、そこから連続17得点のビッグランを見せる。
大観衆の盛り上がりが最高潮を迎えたのは、狩野祐介の3ポイントシュート3連発。狩野は残り2分36秒、残り1分56秒、1分35秒と1分間で立て続けに決めて、滋賀は62-41と栃木を突き放す。第3クォーター終了時点でスコアは65-48。昨日とは対照的な展開だった。
終盤に目覚めた栃木、ロシターがエースの本領発揮
しかし試合は決まらず、栃木が驚異的な粘りを見せる。田臥はビハインドに立ち向かうチームの姿勢をこう説明する。「一気に追いつく、逆転するのは難しい。ディフェンスでいかにリズムを作るかということだった」
ウイスマンヘッドコーチが「状況的にそうせざるを得なかった」と説明するように、オフェンス回数を増やすためにも、前から激しくプレスを掛けるしかない。17点差という絶望的な状況下でも、栃木の選手は気持ちを切らさずにそれを遂行した。
栃木が最後の10分間に決めたスティールは何と9つ。指揮官は「自分たちのディフェンスができたのは第4クォーターだけ」と硬い表情で振り返っていたが、まさに栃木の真価が出た10分間だった。
滋賀にとっては計算通りだった部分と、計算外の部分が両方あった。遠山ヘッドコーチはこう振り返る。「多くのフリースローを与えたけれど、パーセンテージの高くない選手に打たせていたので、そこはOKという感じ」と説明する。ロシターに10分間で7本のフリースローを与えているが、成功は2本。「古川(孝敏)選手や渡邉(裕規)選手にビッグスリーを決められるより良い」という狙い通りだった。一方で彼は「オフェンスの終わり方が悪かった」と悔いる。栃木のハードな守備に、滋賀は苦しんだ。
栃木は第4クォーターの入りからランの『お返し』を見せる。ロシターが2ポイントシュートを3本連続で決めると、残り8分30秒には遠藤祐亮が3ポイントシュートを成功。57-65まで点差を戻す。
残り4分48秒のオフィシャルタイムアウト時点で、栃木のビハインドは64-72と8点。その後にジェフ・ギブスがファウルアウトしたものの、ロシターとトミー・ブレントンが得点を重ねてさらに滋賀を追い詰める。ロシターは第4クォーターだけで16点、試合を通しても30点を挙げる大活躍だった。
大逆転負けを喫するも4000人が熱狂する『夢のアリーナ』に
栃木は残り1分6秒、ロシターのディフェンスリバウンドから遠藤がジャンプショットを決め、81-80とついに逆転。お互いにシュートを1本ずつ外して迎えた残り24秒、滋賀の並里がディフェンスリバウンドを確保する。点差は1点差。滋賀は2ポイントを1本決めれば逆転という状況だった。
並里がボールを握って残り10秒過ぎまで待ち、クレイグ・ブラッキンズが上手くスクリーンをかけて彼のスペースを空けた。並里は左に膨らんで、フリーでジャンプショットを放つ。しかしこれはリングを捕らえられずに、ラインを割ってしまう。時計の表示は残り「1.2秒」だった。ロシターが触ったようにも見えたが、審判団が映像を精査した結論はエアボール。試合は栃木ボールで再開される。
滋賀は当然ファウルプレーに出たが、栃木の古川孝敏がフリースローの1本目を成功。2本目はリングに当てて相手の時間を奪い、試合を終わらせた。
滋賀にとっては勝てる試合を落とす悔しい結果となった。一方で彼らが昨日の大敗から奮起し、大観衆を熱狂させる試合を見せたことも確かだ。遠山ヘッドコーチは「第3クォーターは皆さんの声援がなかったらあんなに乗ることができなかった。改めてレイクスターズファンの皆さんの力、4000人の力は非常に大きいと思いました」と感謝を口にする。選手とファンの気持ちが一つになり、夢の空間が生まれた素晴らしい第3クォーターだった。