ロシターのオールラウンドな活躍で栃木が先手
東地区の2位と3位、栃木ブレックスとアルバルク東京の第1戦。競り合いから栃木が抜け出し、A東京が盛り返してまた接戦となる息詰まる攻防となったが、最後に攻守で上回った栃木が87-83で先勝した。
どちらも堅守とリバウンドに定評のあるチームだが、意外にも序盤から試合は点の取り合いになる。前からのプレッシャーを巧みに外し、高確率でシュートを決めていく展開に。栃木が先行するものの、A東京は遠藤祐亮にアレックス・カークがプレッシャーをかけてターンオーバーを引き出しての速攻で反撃開始。第2クォーターの序盤に竹内譲次とカークが立て続けに3ポイントシュートを決めて24-25と接戦に持ち込んだ。A東京の3ポイントシュートはこの試合を通じて17本中9本と高確率で決まり、栃木ペースになりそうな中で踏み留まる大きな要因となった。
それでも34-34で迎えたオフィシャルタイムアウト明けに栃木が突き放す。オフェンスのテンポを上げてA東京を面食らわせ、特にミルコ・ビエリツァ、カークをスピードで振り回すことで再び優位を作り、43-37で前半を折り返す。
そして後半立ち上がりからロシターが恐るべきオールラウンダーぶりを発揮。ディフェンスの裏を取ってペイントエリアに飛び込んだ遠藤を見逃さず絶妙なアシストを送り、巧みなボックスアウトで竹内譲次のファウルを引き出す。ドライブから右腕を大きく振るフックシュートで1on1を制したかと思えば、田中大貴のターンオーバーを突いて速攻に持ち込み、ジェフ・ギブスのバスケット・カウントをお膳立て。これで栃木が一気にリードを2桁へと広げた。
心身ともにタフな試合、「やり続けた結果」の勝利
それでもA東京は集中を切らすことなく耐え続ける。カークを休ませている時間帯、逆にディフェンスの強度を上げてザック・バランスキーとビエリツァの3ポイントシュートで追い付く。そして比江島慎からボールを奪った馬場雄大がそのまま走ってバスケット・カウントをもぎ取り、逆転に成功。ここから終盤まで一進一退の攻防が続いた。
両チームともに水曜の試合から中1日、それでこのカードで大混戦なのだから心身ともに負担は大きかったに違いない。結果的に栃木が競り勝てた理由を、安齋竜三ヘッドコーチは次のような言葉で説明する。「40分間我慢して、自分たちのバスケットをやってくれた。3ポイントを多く入れられましたが、どんなに入れられてもゲームプランを崩さずにやり続けてくれた結果、最後はウチに流れが来た」
均衡が破れたのはラスト1分39秒、遠藤がフリーになった瞬間を見逃さず決めた3ポイントシュートで、栃木が81-79とリードを奪う。そして残り45秒、リスタートからの攻めで落ち着いてボールを回し、チャンスを託されたのは比江島だった。ギブスのスクリーンを使って田中大貴のマークを引きはがすと一気に加速。カークが狙うブロックショットをかいくぐって得点を決めた。
それでもまだ83-79、A東京としては当然あきらめずに追いかけるのだが、タイムアウトを取って立て直そうとしたところ、リスタートのスローインで馬場が痛恨のミスを犯す。ビエリツァへのパスがロシターの伸ばした腕に引っ掛けられてターンオーバーに。ファウルゲームも実らず、接戦を落とす結果となった。
比江島、殊勲のクラッチシュートを決めるエースの働き
終盤に微妙な判定もあり、さぞ怒り心頭だろうと思われたA東京のルカ・パヴィチェヴィッチだが、試合後は「勝っておめでとうと言いたい」と栃木を称え、「力強く、インテンシティの高いプレーが目立った。お互い良い意味でライバル意識を持って、素晴らしい戦いになったのは間違いない」と、敗れはしたもののレベルの高い試合ができたことに一定の満足はあった様子。
「40分間、そして最後の数分、タフな戦いだった。敗因は最後のところで遂行できなかったこと。冷静さを失い、ミスが起きてしまった。終盤のディフェンス、特に栃木のオフェンスを抑えることができなかった。休んで、明日は今日以上に強く戦っていきたい」
比江島は25分半のプレータイムで8得点とスタッツは伸びなかったが、大混戦に終止符を打つクラッチシュートを決めたインパクトは大きい。「ギブスとかロシターに、オフェンスリバウンドを取るから打ち切れって常に言われていて。今日はシュートタッチが良くなかったですけど、決めきれて良かったです」と、エースの仕事を果たしたことにホッとした様子だった。
明日の第2戦も激闘必至。最高のゲームとなった今日にしても、両チームともに課題は少なくないはず。明日までにどう修正し、どんな駆け引きがあるのかが楽しみだ。