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不振の古巣を気にしながらも、新天地でスター選手へ

キャバリアーズにおいて、シックスマン、そしてディフェンスのスペシャリストとして重宝されているイマン・シャンパートにとっての分岐点は、2015年1月だった。

2011年のドラフト全体17位でニックスから指名されたシャンパートは、先発に定着するなど順調なキャリアを歩んでいたが、2014-15シーズンはケガに苦しんでいた。そんな中、2015年1月初旬にJR・スミスとともにキャブズへのトレードが決定。『HoopsHype』の取材に対しシャンパートは、負傷離脱している間の電撃トレードについて「転校に近い感じだった」と本人が振り返っている。

当時のニックスは開幕から連敗に次ぐ連敗で不振の真っ只中にあり、チーム再建の一手としてシャンパートとスミスのトレードを決めた。トレードされた先のキャブズは、『キング』ことレブロン・ジェームズがヒートから復帰して1年目ということもあり、球団史上初優勝に向けて必要なピースを揃えている時期だった。守備の能力を買われ、ヘッドハンティングされたことは選手冥利に尽きる。だが、当時シャンパートはニックスで貢献できなかったことを悔やんだ。

「違った形でニックスでのキャリアを終えられていたら良かったと思う。ニックスの一員としてのラストゲームを経験できていたら良かったね。トレードされた当時はケガで1カ月近く離脱して、チームに貢献できずに終わってしまったという感覚を持っていたんだ。チームが連敗を続けていた時期ということもあって、嫌な心境のままチームを去るのが辛かった」

さらには、移籍先のキャブスは連勝街道に乗っており、1月15日から12連勝。ニックスとは全く異なる環境に身を置いたシャンパートは状況の違いに戸惑ったが、個人よりもチームを優先するタイプのプレーヤーとして、すぐに戦力として重宝されるようになった。

ケガとの戦いは続いたものの、移籍1年目にキャリア初のNBAファイナルを経験。カイリー・アービングとケビン・ラブが離脱し、レブロンに頼らざるを得なかったウォリアーズとのシリーズでは、執拗なディフェンスで存在感を発揮した。

それでも、心のどこかに「申し訳ない気持ち」があったという。

「当時はニックスのチームメートのことが常に頭にあった。『これまでは負け続けて、自分もケガをしていたのに、今では素晴らしいエネルギーに満ちた環境でやれている』と思った。キャブズが自分を地獄から救い出してくれた感じもした。毎試合のようにテレビ中継されるし、連勝していた。本当にクレージーなことだけれど、どこかでニックスに悪い気がしていたんだ」

2015年のファイナルでキャブズは惜しくも敗れたものの、シャンパートは移籍2年目の昨シーズンは主にシックスマンとして起用され、ウォリアーズとのファイナルでは1勝3敗と追い詰められた状態からの大逆転優勝に貢献。

加入3シーズン目の今も平均25分ほどのプレータイムを得て、どんな状況でもチームに貢献できる存在として認められている。キャブズ移籍というチャンスをモノにしたことで、シャンパートは見事にスター選手の仲間入りを果たしたことになる。