ポテンシャルは評価されるも、プレーの幅を広げられず
2021年NBAドラフト組は全体1位指名のケイド・カニングハム(ピストンズ)、3位のエバン・モーブリー(キャバリアーズ)、4位でルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞したスコッティ・バーンズ(ラプターズ)、8位のフランツ・バグナー(マジック)がマックス額での契約延長に合意した。だが、トップ指名選手のすべてが大型契約を得られるわけではない。サラリーキャップの制限が厳しくなって市場が冷え込む中、ロケッツのジェイレン・グリーンがそうであるように、ウォリアーズのジョナサン・クミンガも延長契約をオファーされることなくシーズン始動を迎えようとしている。
クミンガはルーキーだった2021-22シーズンに70試合出場とローテーションに食い込み、NBA優勝に貢献した。ただ、その後の2年間でブレイクスルーに至っていない。スタメン出場は1年目が12試合で2年目が16試合、3年目の昨シーズンは46試合まで伸びたものの、レギュラーシーズン終盤に膝の炎症で6試合を欠場した際に、ルーキーのトレイス・ジャクソン・デイビスが大活躍。2巡目指名でシーズン序盤はほとんど出番がなかったにもかかわらず、試合に出るたびに何かをつかんで急成長してきたジャクソン・デイビスが一躍脚光を浴びることとなった。
クミンガは対照的に、主力の座をつかみきれないもどかしい状況にある。スラッシャーとしてのアタックは強力で、小さな選手にはパワーで圧倒し、ビッグマンはスピードで翻弄できるが、ディフェンスに波があってジャンプシュートも得意とは言えない。プレータイムが伸びず腹を立て、指揮官スティーブ・カーに不満をぶちまけたこともあった。
マックス額がそれに近い規模の契約延長を勝ち取るには、まず絶対的なレギュラーであることが求められる。ジャクソン・デイビスの台頭でクミンガの立場は弱くなり、それを補うにはスモールフォワードでもプレーできるべきなのだが、その部分でステップアップできていない。
今までであれば、4年目の若手が将来性を買われて大型契約を勝ち取るのは比較的簡単だったが状況は変わった。ウォリアーズはクミンガを評価していないわけではないが、彼が制限付きフリーエージェントになっても簡単に手を出せるチームがいないため、このタイミングで大型契約を与える必要がないのだ。特にウォリアーズには、ジョーダン・プールの3年目に与えたマックス契約が大失敗で、『王朝終焉』の一因としてしまった過去があるだけに、慎重になるのも無理はない。
かくしてクミンガは4年目の今シーズン、キャリアの浮沈を懸けて結果を残さなければならない。ジャクソン・デイビスのみならずグリーンまで押しのけてパワーフォワードの定位置を絶対的なものとするか、少なくともアンドリュー・ウィギンズに次ぐ2番手を確保するレベルでスモールフォワードをこなせるようになるか。彼の今後を考えれば後者のプレーの幅を広げる成長が望ましいだろうが、このどちらかをクリアすればウォリアーズは喜んでクミンガに延長契約を提示するはずだ。
トレードで手放すにはもったいないが、大型契約には値しない、というのが今のクミンガの評価。ただ、これが1年後も同じであることはあり得ない。今シーズンのパフォーマンス次第で、彼の運命はこの2つのいずれかに振れるはずだ。