文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

前日の反省を生かしたA東京、序盤に圧倒のパフォーマンス

前節に手首を痛めたディアンテ・ギャレットを欠くアルバルク東京だが、大阪エヴェッサの粘りのバスケに苦しみながらも2試合ともきっちりと勝利した。

立ち上がりが重かった前日の反省から、この試合では立ち上がりから攻守に完璧とも呼ぶべきパフォーマンスを展開する。インサイドで強みを見せるエグゼビア・ギブソンを、ジェフ・エアーズがきっちりマーク。チーム一丸のプレッシャーディフェンスも機能し、ギブソンにポストアップさせるパスを出させず、これを嫌ったギブソンが外に出てくることで大阪は攻めの形が作れず、リズムをつかめなかった。

一方、A東京が攻めに回れば、試合を重ねるごとに存在感を増すエアーズを大阪が徹底マーク。ところがA東京はこれを逆手に取り、伊藤大司がワイドオープンからのシュートを次々と決める。試合開始から2分少々で伊藤は3ポイントシュート2本を含む8得点を記録。その後、自身に警戒が集まると今度はパスをさばき始めてチームを操った。

第1クォーターの外国籍選手オン・ザ・コート数はA東京が「1」で大阪が「2」だったが、このズレを全く感じさせない出来で、22-8とA東京が圧倒する立ち上がりとなった。

第2クォーター、外国籍選手が1人になった大阪は、機動力が増したことで動きが良くなる。ギャレット不在のラインナップで噛み合わなくなったA東京は0-6のランを浴びる。だが、橋本尚明、合田怜など大阪のベンチスタートの選手がファイトする中でも、連続での良いプレーを許さずに主導権を渡さない。田中大貴がギブソンとのスピードのミスマッチを突いて豪快なドライブレイアップを沈め、最後は3ポイントシュートも決めて41-23とリードを広げて前半を終えた。

第3クォーターに緩むも勝負どころで再び強さを発揮

前半は盤石の試合運びを見せていたA東京だが、第3クォーターに緩みが出る。一方の大阪は相手のプレッシャーディフェンスにアジャスト。ギブソン頼みになることなく、今野翔太や相馬卓弥が積極的なアタックを見せてA東京を受け身に回らせる。

残り5分34秒にはフィジカルなディフェンスにイライラした田中が今野を突き飛ばしてアンスポーツマンライクファウルを取られ、これで点差は1桁に。第3クォーターは13-25というスコア以上に大阪の出来が良く、最終クォーターはどう転ぶか分からないと思われたが、A東京はこの勝負どころで強さを発揮する。

このところの不振を払拭するキレを見せる松井啓十郎が決めたこの試合2本目の3ポイントシュートからA東京が猛攻を開始。大阪以上に足を使って、揺さぶられてもズレを作らず、どこからでも手が伸びてくる激しいディナイでボールを引っかけ、ルーズボールは身体ごと飛び込む勢いで確保した。その間に良いシュートセレクションから得点を重ねていく。

残り6分4秒に相手のターンオーバーからファストブレイクを決めた田中のレイアップが決まって66-50、実に12-2のランで大阪を一気に突き放した。ちなみにここまでA東京が犯したチームファウルは1つだけ。ファウルをコントロールしつつ厳しいプレスを遂行し続けた。終盤まで攻守を締めたA東京が75-58で勝利している。

「チームみんなでディフェンスを頑張った結果です」

第3クォーターに猛反撃を見せながら、第4クォーターに入って突如失速してしまった大阪。桶谷大ヘッドコーチは「自分の采配ミス」と認めた。「根来(新之助)が当たっていたのでリチャード・ロビーを3番、根来を4番にすればよかったのに、日本人選手を全員入れ替えて、得点が止まってしまった」

敗因はやはりA東京の厳しいディフェンスに受け身になってしまったこと。「プレッシャーディフェンスに対しての対応です。慣れるのに時間がかかってしまった」と指揮官は語る。

オン・ザ・コート「1」の時間帯のほうが動きの良かった大阪。その原動力となった根来新之助は20分間のプレーで身体を張って攻守を支えつつ、自らも10得点と活躍。それでも「昨日負けて『今日こそは』と思っていたのですが、出だしがすべてでした」と反省しきり。「3.11ということもあり、もっと良いゲームをしたかったんですが、アルバルクさんにやられました」と完敗を認めた。

A東京にとってはギャレット不在の連戦で会心の2連勝。ギャレットの分まで、と言わんばかりに派手なドライブを連発し、ゲームハイの16得点を挙げた田中大貴は「出だしが良かったです」と満足気な表情を浮かべながらも「チームみんなでディフェンスを頑張った結果です」と、攻撃より守備での勝利であることを強調した。

伊藤拓摩ヘッドコーチは「いつもと違う役割の中で全員がチームに貢献してくれた」と大きな手応えをつかんだ様子。「なかなか落ち着かない、いろんなことが出てくるシーズンですが、すべてを成長する糧に変えていこうというマインドセットでやっています。ディアンテがケガとなっても、選手から『だからこそ良いプレーをしなきゃな』という声が上がって、ディアンテに頼らない試合運びを考えるようになりました。今日みたいな試合ができたのはチームにとって自信になります」