河村勇輝

ピッペンJr.の昇格は河村にとってのチャンス?

『ESPN』の新シーズン予想で、グリズリーズは『順位を大きく上げるであろうチーム』にトップで選ばれた。ジャ・モラントが銃にまつわるトラブルで長期出場停止を受け、再スタートを切ったかと思えばすぐに肩のケガでシーズン終了に。エースが年末年始の9試合にしか出場できなかっただけでなく、他の選手にもケガが相次いだ。

最も多く先発出場プレーしたのがジャレン・ジャクソンJr.の66試合で、デズモンド・ベインの42試合、サンティ・アルダマの35試合と続く。その次は若手のビンス・ウィリアムズJr.が33試合、大ベテランのビスマック・ビオンボが27試合。シーズンを通してラインナップが固定できないのでは、安定した戦いは望むべくもない。モラントの出場停止が明けるまでに開幕から6勝19敗と出遅れ、その後もチーム状態は上向かず、27勝55敗で西カンファレンス13位に終わった。

それでも、もともと若くポテンシャルのあるグリズリーズは大きな飛躍が期待される。昨シーズンが不振だった分、若い選手が経験を積んだし、1巡目9位でザック・イディーを指名することもできた。イディーは『大学最強ビッグマン』ではあるが俊敏さを欠き、NBA向きではないと見られているが、その高さとフィジカルは魅力。ジャレン・ジャクソンJr.という多彩な働きのできるパワーフォワードとの噛み合わせは良いはずで『化ける』可能性はある。

そのグリズリーズは先週、ママドゥ・ディアキテを解雇してロスター枠を1つ空けた。次に取る行動として予想されるのは、すでに3枠が埋まっている2ウェイ契約の選手を昇格させることだ。その一人であるスコッティ・ピッペンJr.は昨シーズンに21試合に出場して12.9得点と結果を残し、サマーリーグでも良いプレーを見せて信頼を高めた。モラントとマーカス・スマートが先発するであろうバックコートの控えはデリック・ローズで層が薄く、ピッペンJr.にはかなりの出場機会が見込まれる。2ウェイ契約ではシーズン50試合までしか出場できないこともあり、ピッペンJr.は通常契約にかなり近い位置にいると見ていいだろう。

ピッペンJr.が通常契約を勝ち取れば、2ウェイ契約の枠が1つ空き、エグジビット10契約でトレーニングキャンプに参加する河村勇輝にチャンスが出てくる。河村にとってはこれがNBAデビューへの最短ルートとなるが、グリズリーズに判断を急ぐ必要はない。ピッペンJr.の昇格の判断はシーズン開幕後でも十分。昨シーズンに急成長したGG・ジャクソンが右足の指を骨折して離脱したことで、このケガが長引くようであればフォワードの補強に枠を使うことになる。

『順位を大きく上げるであろうチーム』の筆頭ではあっても不確定要素の多いチーム状況を考えれば、何があっても動きやすいように枠を1つ空けたままにしておくメリットは大きい。グリズリーズの飛躍にはモラント、ベイン、ジャクソンJr.といった主力選手の活躍はもちろん、若手が成長を続けることも必要となる。ロスター枠を空けておくことは、各ポジションでのチーム内競争のモチベーションを高める効果もある。

日本のバスケファンにとっては河村のNBAデビューが一日も早く実現してほしいところだが、過酷な競争が長く続くことになりそうだ。それはもちろん、河村にとって大きな学びとなるに違いない。

グリズリーズ 通常契約(14選手)
ジャ・モラント
デズモンド・ベイン
ジャレン・ジャクソンJr.
マーカス・スマート
ブランドン・クラーク
ルーク・ケナード
ジョン・コンチャー
ザック・イディー
サンティ・アルダマ
デリック・ローズ
ジェイク・ララビア
ビンス・ウィリアムズJr.
GG・ジャクソン
ジェイレン・ウェルズ

グリズリーズ 2ウェイ契約(3選手)
スコッティ・ピッペンJr.
キャム・スペンサー
ジェイ・ハフ