今野紀花

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部

「どっちをやっていてもメリットがたくさんある」

3人制バスケットボール『3×3』の女子日本代表が本格始動し、3月21日から24日間の4日間強化合宿が行われた。今回の合宿には3×3を主戦場とする選手だけではなく、Wリーグの選手も加わった。さらにはこの春に高校を卒業し、NCAAの強豪ルイビル大へ進学する今野紀花の姿もあった。

「レベルが高い中で、もう一度3×3ができたことがうれしかった」と感想を語る今野は、3×3アジア大会、U-18アジア選手権でともに銀メダルを獲得した経験者だ。今回の合宿では11人の選手が3×3初経験ということもあり、ルールの違い、ボールの違いに戸惑う選手も見られたが、今野は堂々とプレーし、最年少ながらその実力を発揮していた。

5人制との一番の違いはコンタクトの差だろう。今野も「アジア大会で中国とやった時は、当たりが本当に強くて、5人制に比べたらファウルが全然鳴らなかったです」と言う。

だが、その経験があったからこそ、最年少ながらも持ち味を発揮することができた。「アジア大会を体験できたことが今回のアドバンテージになると思っていました。ベテランの選手が強く当たってきたんですけど、うまく対応できました。得意のドライブで得点できて良かったです」

今回の合宿は、5月24日から中国で行われるアジアカップ、6月18日からオランダで行われるワールドカップに向けた強化を目的としている。それでも、東京オリンピックの開催国枠が与えられなければ、個人ポイントを稼ぐ必要もある。「オリンピックは国内ランキング1位から100位の個人ポイントの合計で枠が決まるので、自分ももっと頑張りたい」と、今野も自国開催へのオリンピック出場を見据える。

その視野には5人制と3×3の両方でのオリンピック出場も入っている。「5人制と3×3は繋がるところがたくさんあるし、どっちをやっていてもメリットがたくさんあるので、どっちも本気でやりたいと思います。チャンスがあれば、どっちも挑戦したいという気持ちが本当にあるんです。」

今野紀花

フォーム変更により、3ポイントシュートが課題

2種目でのオリンピック出場へ意欲的な今野だが、それが簡単なことではないことはもちろん理解している。そして、客観的に自分を見ることのできる現実主義な彼女は、アメリカの大学で成功することがオリンピックに繋がると言う。

「オリンピックに出たいですが、実力がまだ追いついてない部分もあります。なので、まず大学で結果を残すことが一番頭にあって、オリンピックはその次にあるものだと思っています」

生粋のオールラウンダーとして高校女子バスケ界を席巻した今野だが、アメリカでその実力がすぐに通用するかは未知数だ。進学するルイビル大のスタイルも加味した上で、今野はアウトサイドシュートの必要性を感じている。

「ルイビルのバスケは中だけでなく外のプレーヤーも得点を取るので、3ポイントがないと全然やっていけないと感じています。そのために外のシュートを練習しています」

ペイントエリア付近で放つキャッチ&シュートや、ドライブからのジャンプシュートなどを高確率で沈める今野に、シュートが苦手なイメージはない。だが、3ポイントシュートは打ち方を変えたこともあり、フォームがまだ固まっていないと明かした。

「ゴールに近いところはワンハンド、3ポイントはツーハンドで打っていたんですけど、高校2年生の途中に3ポイントシュートもワンハンドに変えたんです。外もワンハンドに変えてから、自分のフォームが固まらなくて、確率も落ちたので。打てない状況が続いていて、まだワンハンドは自分のものになっていないので練習しています」

今野紀花

5人制と3×3の二刀流でのオリンピック出場を目指す

日本では178cmの身長は高い部類に入るが、アメリカではアドバンテージでなくなる可能性が高い。得意のドライブをさらに効果的にすることを考えても、3ポイントシュートの習得はアメリカでの成功に直結するだろう。

日本では主にシューティングガードとしてプレーしていた今野だが、ルイビル大では「2番か3番。もしかしたら1番。とにかくガードの上のポジションとは言われています」と、決まっていない様子。オールラウンダーの今野だからこそ、ヘッドコーチも起用法に迷っているのだろう。

3×3で個を磨き、アメリカ挑戦に備える今野。その先にある、5人制と3×3の二刀流でのオリンピック出場を目指す旅はこれからも続いていく。