川崎ブレイブサンダース

「代表選手や帰化選手がいない中、日本人選手がステップアップしていくことが大事」

川崎ブレイブサンダースは8月26日、カワサキ文化会館で新体制記者会見を実施。北卓也GM、ロネン・ギンズブルグ新ヘッドコーチ、新加入の柏倉哲平、小針幸也、マシュー・ライト、アリゼ・ジョンソン、サッシャ・キリヤ・ジョーンズが登壇した。

冒頭のあいさつを行った北GMは、ベテランにプレータイムやスタッツが偏り、若手がなかなかブレイクしないという長年の課題に本格的なメスを入れるために、豊富な経験を持ち、選手育成にも長けたギンズブルグヘッドコーチを招聘したと説明。ロスター全員揃っての練習は先週よりスタートしているという。

続いてギンズブルグヘッドコーチがあいさつ。イスラエル出身のギンズブルグヘッドコーチは、チェコ代表監督として同国を史上初のユーロバスケット7位、ワールドカップ6位に導いた名将で、川崎としては史上初の外国人ヘッドコーチとなる。

60歳にして初めてユーラシア大陸を離れたギンズブルグヘッドコーチは、「ヨーロッパでやれることはやり尽くしたと思う。日本という国で大きなことを成し遂げるのが楽しみです」とコメント。チェコ代表監督として2016年のオリンピック最終予選と2019年のワールドカップで日本代表と対戦し、3年間でのチームの成長を目の当たりにしたことも来日の決め手の一つになったと明かし、「今の日本はヨーロッパでも大きな注目を集める国。ユーロの若い選手や有望な選手がどんどん加入しているし、私が欲しいと思った選手がBリーグに行ったこともあります」と話した。

また、川崎の日本人選手たちと接していて感じることを問われたギンズブルグヘッドコーチは、「日本の文化なのかもしれませんが、熱心だし指示をきちんと徹底してくれる」とポジティブな面を挙げた上で「もっと責任感を持ってほしい」と要望した。

「代表選手や帰化選手がいない中で、日本人がどれだけステップアップしていくかが大事です。現状は打てるはずのシュートを打たない選手が少なくありません。外国籍任せにせずに、打つべきシュートはもちろん普段なら打たないようなシュートであってもきちんと打ち切ってほしい。自覚と自信を持って、大きな良いプレーをしてほしいです」

自覚と自信——。これは今シーズンの川崎が何よりフォーカスしなければいけないものかもしれない。1試合の平均ポゼッション数の目標に「80」(昨シーズンのリーグ最高値は長崎ヴェルカの平均76.4)を掲げ、自チームの選手がシュートを打った瞬間からディフェンスがスタートするギンズブルクヘッドコーチのバスケットは、北GMいわく「5人でできるバスケではありません」。これまでのように主力にプレータイムとスタッツが偏る戦い方では成立せず、ロスター全員が「自分のパフォーマンスが勝敗を握っている」という認識が必須となる。

ギンズブルグヘッドコーチは「多くの選手にプレータイムを与えて、全員に自信を植え付けることが大切」と話した後、「逆に彼らが僕に『この選手は使える』と自信を持たせることも大切です」と続けた。選手全員が闘争心を持って戦うこと、そしてコーチと選手の双方向が良いコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことの大切さを強調した。

川崎ブレイブサンダース

柏倉「チームが変わるタイミングで入団できたことをうれしく思います」

新加入選手については北GMから次のような紹介があった。

小針幸也(PG/長崎ヴェルカから期限付移籍)
「スピードがあってディフェンスもハードにできる選手です。横浜出身かつ地元(川崎市の)桐光学園高校出身で、神奈川大でキャプテンをつとめていた点も評価しました」

柏倉哲平(PG/滋賀レイクスから移籍)
「ハードなディフェンスと精度の高い3ポイントシュートを持つ選手です。新しいチームに生まれ変わるために求心力のある選手が欲しかったので、キャプテンとして滋賀をB1に昇格させた手腕も評価しました」

マシュー・ライト(SG/京都ハンナリーズから移籍)
「得点をクリエイトする力のある選手です。ピックアンドロールのハンドラーにもなれるしパスもでき、3ポイントシュートも得意。得点面で期待したいです」

アリゼ・ジョンソン(PF/プエルトリコリーグから移籍、外国籍)
「NBAで長くプレーした選手です。クリエイトする力とリバウンド力があります。身体を張り、ボールが落ちる場所を予測してリバウンドを取ることができます」

サッシャ・キリヤ・ジョーンズ(C/スペインリーグから移籍)
「課題となっていたリバウンドで力を発揮でき、走力を含めた運動能力の高い選手です。3ポイントシュートも得意で腕も長い。主にインサイドでの活躍に期待しています」

選手たちも一言ずつスピーチした。柏倉は「チームが変わるタイミングで入団できたことをうれしく思います。求められるバスケットの水準は高いと思いますが、成長し、良いチームを作っていきたいです」、小針は「学生の頃から見ていた地元クラブに入団できるのがうれしいです。自分自身としては若手から中堅へと変わっていく大事なシーズンになるので、責任感を覚悟を持って、成長できる年にしたいです」とコメント。6つのNBAチームを渡り歩いたジョンソンは「リーダーシップを発揮し、リーグ優勝に向けてチーム一丸で戦っていきたい」と語った。

ニック・ファジーカスと藤井祐眞、長きにわたって川崎のバスケを牽引してきた2人がチームを離れた今シーズン、チームは東芝からDeNAに事業承継された2018年に次ぐ『第二の変革期』を進むことになる。ギンズブルグヘッドコーチ、新加入選手たちもそのことをよく理解し、『新しい時代を作る』というチャレンジに対する喜びと責任感を多分に備えていることがコメントの端々から感じられた。

生え抜きのベテランである篠山竜青、長谷川技が持つクラブのカルチャーとアイデンティティに、野心的なマインドを持つ新しいピースが掛け合わされることで、どのような化学反応が起きるのか。新しい川崎の歩みに引き続き注目したい。