長谷川技

文・写真=鈴木栄一

「もっとシュートを打っていかなければいけない」

3月24日、川崎ブレイブサンダースはレバンガ北海道とのホームゲームを92-77で制した。すべてのクォーターで相手を上回ったように試合の大半でリードを奪い、前日に続いての危なげない勝利を収めた川崎であるが、北卓也ヘッドコーチは「内容的にはあまり良くなかったです。前半、ファストブレイクとセカンドチャンスで取られすぎていました」と厳しく総括した。

特に、すでに勝敗は決しておりベンチメンバーが出ていたとはいえ、終了間際にノープレッシャーで3ポイントシュートを打たせ失点が77となったことに「75失点を目標にしているのに簡単に打たせてしまう。目標をクリアすることの大切さ、1本の重みを意識しないといけない」と苦言を呈した。

このようにスッキリとした勝ちと言えないのは長谷川技も同じで、「勝ちはしましたが、内容的にはリバウンドやルーズボールが徹底できていなかったので、そこを修正しないといけない。課題のある2試合だったと思います」と語る。

そして、自身のパフォーマンスについても「いつも通りディフェンスから入ってチャンスがあれば3ポイントシュートなど得点に絡んでいこうと思っていましたが、この2試合はあまりできなかったです」と反省する。

得点に絡む、というのは長谷川にとってここ数年のテーマだ。堅実なディフェンスについて北ヘッドコーチは絶大な信頼を寄せているが、ことオフェンスについてはもっとリングに向かって仕掛けてシュートを打ってほしいと度々言及している。

本人もこの点については十分に自覚しシーズン前には平均2桁得点を目標に掲げていたが、ここまでの達成状況は厳しい。そもそも2桁得点を取るには2点シュートなら最低でも5本打たないといけないが、24日の試合を終えた段階で長谷川の1試合平均シュート試投数は3.7本だ。

「もっとシュートを打っていかなければいけないですが、うまくいっていない。周囲に遠慮している部分はあるかもしれないです。メンタルの問題です」と、長谷川は原因を語る。しかし、ただ手をこまねいているわけではなく「ピック&ロールの練習を個人トレーニングでやっています。それを終盤になりましたが、もっと試合で使えるようにしていきたいです」と、プレーの幅を広げることでの課題改善を目指す。実際、この試合でもニック・ファジーカスとのコンビで、ピックを仕掛ける場面が見られた。

また、北ヘッドコーチが長谷川にもっとシュートを打ってほしいと叱咤するのは、今シーズンも現在3ポイントシュート成功率40%以上と非凡なシュート力を備えているから。本人はこの数字についても「僕が打つシュートは、ほぼ味方が崩してくれてコーナーで待ってノーマークで打っているもの。だから50%くらいは決めたい」と満足せず、さらなる精度向上を目指す。

長谷川技

「チームの流れが悪い時は僕を使ってほしい」

シーズン後半戦に入り、ファジーカスとバーノン・マクリン、シェーン・エドワーズの外国籍2人を同時起用するラインアップを使う時間帯が増えている。オフェンスの打開力はアップするこの実質オン・ザ・コート3だが、連携不足から守備に脆さも見せている。現状ではまだまだメリットより、デメリットの方が目立っていると言わざるを得ない。

このラインアップは、3番ポジションにエドワーズが入る布陣であり、それは長谷川がベンチに下がることになる。選手としてはできるだけ試合に出たいものだが、「オン3の調子が良ければそっちを使ってくれていいと思います」と、普段から控え目な長谷川は言う。

だが、同時に「(自分が3番に入る布陣の方が)ディフェンスでオン3より上という自信はあります。チームの流れが悪い時、ディフェンスが良くない時は僕を使ってほしいと思います」と、ディフェンスマンとしての矜持は隠さない。

川崎にとってオン3の成熟度が高まり守備力がアップすることは大きなプラスとなる。だが、長谷川がよりオフェンスに絡むことで、ファジーカスを含めた日本人4名と外国籍1人の通常ラインアップにおいて攻撃の厚みが増すことも同じくらい大きな強化となるのも忘れてはいけない。

27日、中地区2位の川崎は敵地に乗り込んで3ゲーム差で追っている中地区1位の新潟アルビレックスBBとの首位決戦を行う。先日の16日、17日にも同じく敵地で対戦し、この時は1勝1敗。あくまで結果論ではあるが、オン3を積極活用し、長谷川のプレータイムが20分だった16日は74-85で敗戦。ファウルトラブルもあってオン3を封印し、長谷川が30分出場した翌日は81-72で雪辱を果たしている。

「しっかりボールを守ることを意識しないといけない。新潟は強力な外国籍選手がいてアウトサイドも得意な選手もいます。人ではなく、しっかりボールを守りたい」と語る長谷川が、大一番の明暗を分けるキーマンとなってきても驚きはない。