アメリカ代表

レブロンの『支配力』が過度に働いた代表チーム

NBAのスーパースターが集結した『アベンジャーズ』は予定通りに金メダルを獲得した。それでも、世界のバスケのレベルが上がり、アメリカの1強状態に待ったをかける流れが感じられた大会でもあった。

フランス代表を長らく牽引したニコラス・バトゥームは代表引退を発表するとともに「アメリカは世界最高のチームだけど、僕らはそこに近付いている。敬意は持っているが怖がってはいない」と語った。セルビア代表のボグダン・ボグダノビッチも「今回の経験でこのチームはさらに強くなれる」とリベンジを期している。

アメリカは相変わらずスター選手を集めてコートに送り出し、『個の力』で戦うスタイルで、それは長い年月をかけてチーム力を高めていくライバルとは異なる。NBAの支配力は強く、国際大会で選手が消耗するのを望まない。選手たちもオリンピックを例外とすれば国際大会をさほどリスペクトしているわけではない。

今回のチームはレブロンの『支配力』が働き、レブロン、カリー、デュラントの力を発揮することが優先された。それはチーム力を高めるのとは反対のやり方だ。その弊害でカリーのシュートタッチが不調でもタイリース・ハリバートンの起用でオフェンスの幅を広げることはなかったし、レブロンに疲れが見えても彼自身が言い出さない限りはジェイソン・テイタムが投入されることはなかった。アンソニー・エドワーズもデビン・ブッカーも、ボールを託される機会が増えればもっと活躍できただろう。

レブロン、カリー、デュラントという『個の力』が今回の金メダル獲得の原動力となったが、もう大ベテランの年齢である3人が4年後のロサンゼルスでアメリカ代表のユニフォームを着ることは想像しづらい。そして、フランスやセルビアがこの大会での経験を次に繋げれば、アメリカにとってはさらに厄介な強敵となる。

レブロン、カリー、デュラントが去った後、アメリカ代表がメンバーを固定し、段階的にチームとしての成熟度を上げていく望みは薄い。大陸予選にNBAプレーヤーは出場しない。ワールドカップも若手が中心にならざるを得ない。ロスオリンピックでも選手を招集できるのはNBAの2025-26シーズン終了後で、本大会までの限られた時間はチームバスケを高めるよりもコンディション調整に使われる。

今回ベンチに追いやられたテイタムは4年後の代表招集に応じるだろうか? スティーブ・カーが退任していたとしても、グラント・ヒルがマネージャーとしてチームを取り仕切っている以上は一悶着ありそうだ。すでに30代のドリュー・ホリデーやアンソニー・デイビス、ジョエル・エンビードにデリック・ホワイトが2028年まで代表でプレーする可能性も高くはない。

ブッカーとエドワーズ、バム・アデバヨの献身ぶりは、アメリカ代表への愛着を強く感じさせるもので、彼らは4年後のアメリカ代表の中心となるだろう。そこに新たなオールスター級の選手が加わり、タレント力では他を圧倒する新たなアメリカ代表が誕生するが、それはもう『アベンジャーズ』ではない。その時、これからの4年間でチーム力を高めたライバルがアメリカ代表を凌駕しても驚かない。そうなった場合、アメリカが威信を取り戻すのは相当難しいミッションになるはずだ。それとも、ロスオリンピックの顔としてレブロン・ジェームズがアメリカ代表を引っ張っているだろうか?