写真=アフロスポーツ/bj-league

琉球と富山が見せた、bjリーグ集大成の名勝負!

bjリーグ最後のシーズン、そのファイナルが5月15日、有明コロシアムにて行われた。1万1038人の観客が見守る決勝の舞台に駒を進めたのは、琉球ゴールデンキングスと富山グラウジーズ。琉球が勝てば史上初の4度目V、富山が勝てば初優勝で、bjリーグが幕を下ろすこととなる。

試合開始から両チームとも「ハートは熱く、頭はクールに」の状態に入っていた。ディフェンスでは個人がそれぞれ自分のタスクをこなしながら、組織として綻びを見せない素晴らしい出来で、なおかつ相手のそのディフェンスを上回るオフェンスを披露。立ち上がりは「ファイナル」の名に相応しいハイレベルな得点の奪い合いとなった。

均衡を破ったのは沖縄で、イバン・ラベネルと津山尚大の連続5得点で22-17と抜け出す。富山はタイムアウトで一呼吸入れて反撃を試みるも、その後は得点が動かず第1ピリオドを終えた。

好守ともにハイレベルなチームが対戦するのだから、得点を奪い合う展開がそう長く続かないのは当然のこと。第1ピリオドの終盤からは一転して互いのディフェンスの良さが光るロースコアゲームとなった。第2ピリオドは5分を残して富山が5ファウル。ここが一つの勝負のアヤだったが、琉球はフリースローで得点を稼ぎながらも、フリーで放つ3ポイントシュートを落とすなどミスもあり、点差を広げることができない。

39-33と6点差でスタートした後半、琉球でただ一人のビッグマン、ラベネルが得点にリバウンドにと大車輪の活躍で立ち上がりからチームを牽引する。スタートから6-0のランで45-33と抜け出しにかかるも、ここからさらに鋭さを増す富山のディフェンスにスティールを連発されるなど、楽な試合展開にはさせてもらえない。

ゲームハイの22得点を挙げただけでなく、30分強の出場時間すべてでしっかり走ってチームを引っ張ったラベネル。ファイナルMVPを受賞した。

好守ともにハイレベルな展開、一つのミスが大きな差になる

それでも、富山がギアを上げたタイミングで琉球もミドルレンジからのシュートが入り始め、オフェンスリバウンドからの3ポイントシュート、スティールからパスをつないでの3ポイントシュートで得点を重ねる。第3ピリオドのラストプレーは、ラベネルの3ポイント。シーズンを通して4本しか3ポイントシュートを記録していないビッグマンの一撃は、富山に精神的なダメージを与えた。

60-52で始まった最終ピリオド。ここで富山にミスが出る。琉球のディフェンスを崩せず、点差がなかなか縮まらない試合展開にイライラしたデューク・クルーズが、判定に文句を付けてディフェンスに戻るのが遅れ、ゴール下にポッカリと空いたスペースを突かれて失点。この時間帯で両チーム通じて初めて出た凡ミスではあるが、これでは富山に流れは来ない。

富山は随所に良いプレーを見せていた。しかし琉球は付け入る隙を与えず、じわじわと点差を広げていく。残り4分52秒、オフィシャルタイムアウトの時点でスコアは70-55。15点差を追う富山はギャンブルに出なければならなかったが、ローテーションが少なかった影響で、ここで主力メンバーの足に疲れが出てしまう。

城宝匡史が3ポイントシュートを決め、ドリュー・ヴァイニーがインサイドで粘り強さを見せて琉球に追いすがるも、開いた点差を詰めることができないままタイムアップ。最終スコア86-74、琉球が理想的な試合運びでファイナルを制した。

素晴らしい集中力で好守ともに完璧なパフォーマンスを見せた琉球。「やり続ければ終盤に差が出る」という指揮官の指示を忠実に実行してタイトルを勝ち取った。

伊佐ヘッドコーチ「昨年の成績もあって、プレッシャーが大きかった」

伊佐勉ヘッドコーチは、勝利を手にしたゲームプランを試合後に明かしている。「富山もアップテンポのバスケをするチームなので、まずはやり続けようと選手には話していた。こちらは全員を起用するが、富山は7~8人で戦うチームなので、やり続ければ終盤に差が出る。選手たちは僕の考えをよく理解してプレーしてくれた」

自らを「泣き虫」と言う伊佐ヘッドコーチ。試合時間残り1分を切ってからは涙がこみ上げたそうだ。「マクレディとバーンズに『まだ泣くな、まだ泣くな』と言われました(笑)。昨年の成績もあって、プレッシャーが大きかった。涙はその涙です。勝った瞬間は、プレッシャーから解放された、と思いました」

琉球の優勝は2年ぶり。史上最多となる4度目のチャンピオンの誕生とともに、bjリーグは歴史に幕を下ろした。