ジェイレン・ブランソン

5年2億6900万ドルを得られる来年オフを待たず契約更新

ジェイレン・ブランソンが4年1億5650万ドル(約240億円)の契約延長に合意した。ブランソンはキャリア6年目を終えた27歳。ビラノバ大から2018年のNBAドラフトで2巡目33位指名を受けてマーベリックスに加入。ルカ・ドンチッチの控えポイントガードとして大きな注目を浴びないまま堅実なプレーでマブスを支えた後、2022年オフにニックスに移籍すると絶対的なエースとなりキャリアの飛躍を経験した。

加入2年目となった昨シーズンはレギュラーシーズン77試合に出場、平均35.4分の出場で28.7得点、6.7アシストを記録。ここに挙げた数字すべてがキャリアハイであり、チームも東カンファレンス2位、プレーオフではカンファレンスセミファイナル進出と結果を残した。

ニックスとブランソンの契約更新は当然行われるべきものだったが、このタイミングで、この金額で、というのは予想外だ。ブランソンはフリーエージェントだった2年前にニックスと4年1億ドル(約150億円)の契約を結んでおり、ブランソンが生涯収入を最大化するには、来年オフまで待って5年2億6900万ドル(約400億円)のマックス契約を結ぶべきだった。しかし彼は現行契約の最終年を破棄した上で、2025-26シーズンからの新たな4年契約にサインした。

NBAは非情なビジネスで、多くの選手がクラブの都合に振り回される。しかしスーパースターは別で、常に最大の収入を得られる契約を選び、クラブの選手編成その他に口を出し、気に入らないことがあれば契約が残っていてもトレードを要求して自分の行きたいチームに行く。中でも『収入の最大化』は絶対で、各チームのエースはほぼ例外なく自動的にその時点のルールで許される最大の契約を勝ち取っていく。

しかし、ブランソンは大幅な譲歩を受け入れた。それは彼にとってニックスが特別なチームだからだ。セカンドユニットのリーダーでしかなかった2巡目指名の選手に飛躍のチャンスを与えた。ブランソンの父リックはブルズ時代からトム・シボドーの副官であり、ニックスでもアシスタントコーチを務めている。そしてブランソンのエージェントを務めるサム・ローズは、ニックスの球団社長を務めるレオン・ローズの息子だ。

ただエースとしてプレーするだけではない様々な結び付きが、今回のブランソンの譲歩に繋がった。昨シーズン途中にOG・アヌノビーを、今オフにはミケル・ブリッジズを獲得してニックスの戦力は飛躍的に高まったが、選手年俸も膨れ上がる。サラリーキャップの厳しい制限をかわすのに最も有効なのは、エース級の選手の年俸を下げることだ。

これでニックスはセカンドエプロンを下回ることができ、ロスターを改善するための様々な手段が手元に残る。今はあらゆるチームがサラリーキャップの制限の厳しさに大苦戦しているだけに、ブランソンの譲歩には特別な価値がある。今回の契約更新リリース内で、レオン・ローズ球団社長は「ジェイレンが契約延長にサインしたことは、組織、ファン、この街に対する彼の献身と情熱を示している」とコメントしている。

2025-26シーズンの年俸はOG・アヌノビーが3950万ドル(約60億円)でブランソンは3500万ドル(約53億円)。契約満了の2029年まで、ブランソンの年俸はアヌノビーを下回り続ける。スター選手はチーム内の序列も気にするものだが、ブランソンはここでも譲歩を厭わなかった。

『ESPN』は、マヌ・ジノビリとトニー・パーカーを留めるためにティム・ダンカンが、ショーン・リビングストンとアンドレ・イグダーラを留めるためにケビン・デュラントが過去にこのような譲歩を受け入れたと指摘している。この2つの例はいずれもNBA優勝に繋がった。ニックスは大都市ニューヨークに本拠を置き、『エンタテインメントの殿堂』マディソン・スクエア・ガーデンをホームアリーナとするNBA最大級の人気チームだが、1973年を最後に半世紀も優勝から遠ざかっている。それでも現在のニックスには優勝を狙える実力があり、ブランソンの今回の譲歩はその可能性を大きく広げたと言える。