取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

「目標があることが元気でいられる秘訣」

2月24日、昨年末のウインターカップを制した桜花学園の優勝祝賀会が行われた。多くの支援者が集まる前でマイクを握った井上眞一監督は「一昨年はすごく悔しい負け方をしたので、『今度こそは』の気持ちでやりました。冬場はインフルエンザとの戦いなんかもあって苦労しましたが、結果を出すことができてホッとしています」と挨拶した。

桜花学園のウインターカップ制覇は21回目、3冠達成は13回目。個人としては実に62回目の全国制覇を果たした井上監督は「全国優勝60回を目標にしてきて、それを2つ超えて、それで70回を目指そうとはなかなか言いづらくて、65回ぐらいでいいかな」と会場の笑いを誘った後、今後の目標をこう語った。

「少なくとも東京オリンピックまでは何とか元気に現役を続けたい。5人ぐらいは卒業生を日本代表に入れたいと思っています。非常に厳しいことですが、それを目標とします」

「来年も再来年もウチに来たいと言ってくれる子供たちがいますので、その選手たちのためにも、まだまだやれることはやっていきたい。70歳を超えましたが、目標があることが元気でいられる秘訣だと思っています。応援よろしくお願いします」。そう言ってスピーチを終えると、会場は大きな拍手に包まれた。

贈る言葉は「それぞれのチームでベストを尽くして」

会場には愛知学泉大の木村功監督の姿もあった。愛知学泉大は年初のオールジャパンで、桜花学園を1回戦敗退に追いやった相手。ただ、両校の監督は親交が深い。井上監督について尋ねると、木村監督は「勝利に対する執着心はすごいです。この年齢でまだあれだけの執着心があるのは半端じゃないですよ」と称えた。

「指導者はそれぞれ個性があるのでバスケットは同じではないのですが、指導者としての信念、『選手を育てるのに一番大事なのは基本である』という部分は共通しています。個人の基本をちゃんと教えるのは時間がかかるけど、安定したチーム力になる。私もそこを重要視しています」

また昨年のインカレを制した白鷗大学の佐藤智信監督も出席していた。「まずは勝ち続けていること。そして井上先生の勝つことへの執念。やれることは何でもやるという姿勢です。それはリクルートにしてもそうですし、相手のスカウティングとそれに対しての準備が全く抜けない。それがすごいところです」と桜花学園を称えた。

祝勝会とあって、選手たちもリラックスした様子。校歌斉唱の際には馬瓜ステファニーと出原菜月が壇上に立って指揮者を演じ、会場を盛り上げた。

ウインターカップ優勝を決めた際には、決勝で選手たちが戦術どおりにプレーしていなかったと怒っていた井上監督だが、この日ばかりは3冠を達成した代の選手たちを素直に称えた。

「ちゃらんぽらんなステファニーから大人しい子までいたんだけど、今はみんなが下級生を『そんなんじゃ勝てないよ』と厳しく指導している。その姿を見ていると、こいつらも成長したなと思います。『絶対勝ちたい』という僕の気持ちも理解して、一生懸命手伝ってくれました」

先日はバスケ部の卒業旅行があった。3年生が桜花学園を去る日まであと少し。ただ、このチームで過ごした絆はずっと残る。井上監督は言う。「僕が直接試合を見に行くことはないけど、向こうからオフに遊びに来てくれます。そういう姿を見ていると、桜花で良かったと思って卒業していってくれたんだろうと思います」

「それぞれのチームでベストを尽くして、ナショナルチームを目指してほしい」というのが、井上監督から卒業生への『贈る言葉』だ。