富樫勇樹

「塁にボールを持たせてあげたい、気持ち良くバスケットをさせてあげたい気持ちはあります」

7月8日、パリ五輪に臨むバスケットボール男子日本代表のメンバー12名が発表された。ここから五輪本番に向けて何よりも重要なことは八村塁、渡邊雄太の大黒柱2人をいかにチームにフィットさせるかとなる。ここまで日本国内でオーストラリア代表、韓国代表とそれぞれ2試合を行なってきたが、2人はともに4試合すべてに欠場したため、限られた時間の中で簡単ではないミッションに挑む。

代表のキャプテンを務める富樫勇樹は、7日の試合終了後に「2人(八村、渡邊)が合流して、どういうバスケットができるのか。これからしっかり練習と試合を積んでいって、良いチームになっていったらいいなと思います」と、抱負を語った。

渡邊は昨年のワールドカップ2023に出場しているので、トム・ホーバスヘッドコーチの戦術に馴染みがあり、チームメートとの連携にも大きな不安はない。富樫も「雄太の場合は、ワールドカップにも出場していますし、あまり気にはしてないです。彼はオフボールでも活躍できる選手だと思っています」と言う。

一方、八村は今回が東京五輪以来となる代表活動で、ホーバスヘッドコーチと組むのは初めてだ。さらにチームメートの半分以上が初めてプレーする選手たちと、渡邊と状況は大きく違う。富樫は八村の強みを最大限に生かすために必要なこと、そのための練習の大切さを強調する。「塁もオフボールで活躍できますが、雄太以上にボールを持たせてあげたい、気持ちよくバスケットをさせたあげたい気持ちはあります。彼をどう生かしていけるのか、これは一緒に練習を積んでいかないと見えてこない。そこに関しては、これからだと思います」

富樫勇樹

「若手が(八村に対して)遠慮をしないことが一番だと思います」

そして富樫は、八村をうまくチームにフィットさせるための肝として『信頼』をキーワードに挙げた。「簡単なことではないですが、塁の場合は会ったことのない選手が半分以上の中でどう信頼を得て、コミュニケーションを取っていくかです。やっぱり、塁が周りの4人を信頼してプレーするようにならないと、五輪で戦うレベルのチームに勝利することはできません。ここからの3週間では、そういう面も踏まえて良いチームを作っていきたいです」

「例えば、この2試合の河村(勇輝)選手の勝負どころでのプレーなどを見て、塁も『彼にボールを預けてもいい』と多分、思えています。(NBAで活躍する選手の)レベルとなれば、信頼は本当に大事になってくると思います」

これまで面識のなかった若手にとって、八村は文字通り画面越しに見てきた憧れのスーパースターなため、萎縮してしまうのは理解できる。また、八村も控え目な性格で、自分から積極的に絡んでいくタイプではない。それも踏まえて、富樫は信頼に欠かせないコミュニケーションを深めるためには「若手が(八村に対して)遠慮をしないことが一番だと思います。それに、塁も大人になって帰ってきた気がするので、自分からうまくやってくれるんじゃないかという期待はしています」と語る。

また、富樫は八村、渡邊が加わったチームにおいて、自身のやるべき事をこう考えている。「特に塁が入れば、キャッチ&シュートで打つ場面が増えてくる可能性はあります。いろいろなコンビネーションをトムさんが試している中、自分の役割をしっかり考えながらやっていきたいです」

千葉ジェッツでの富樫は絶対的なエースとしてボールを託され、積極的にシュートを放っている。代表では一歩引いた立場でボールタッチ、シュートの回数は減っている。こういった背景からスタッツ面で彼が目立つことは少ないかもしれない。それでも、大舞台での経験が豊富で八村、渡邊らと若手を繋ぐ架け橋となるなど、富樫の担う役割や責任は大きい。