「バスケはいつまでも僕の人生の一部」
33歳のケンバ・ウォーカーが引退を表明した。NBAで12シーズンのキャリアを過ごし、最後はフランスのモナコでプレーした彼が、現役生活に終止符を打つ。
2011年、当時ボブキャッツと呼ばれていたチームに1巡目9位で指名されてシャーロットにやって来たケンバは、小柄ながらも俊敏な動きと抜群の得点センスでホーネッツを牽引する存在となった。NBAに『スーパーチーム』化が進む時代にも、勝てないホーネッツを『チームの顔』として引っ張り続けたが、2019年オフにセルティックスへと移籍することに。彼にとっては優勝を狙える環境へのステップアップだったが、その後のキャリアは常にケガに悩まされるものとなった。
膝を悪くした後、試合に出てもかつてのキレが戻らない。一瞬のキレでオフェンスに違いを生み出してきた強みを失い、サイズがないことからのディフェンスの難が目に付くようになった。結局セルティックスを2年で去り、故郷のチームであるニックスで再起に懸けるも、シーズン半ばでローテ外に置かれてしまう。移籍先のサンダーで契約解除となった2022-23シーズン、NBAで最後に所属したマブスでは出場わずか9試合に終わった。
フランスでのプレーを経験した後、彼はSNSで引退を宣言した。「バスケは僕に想像もつかないほどのものを与えてくれた。この素晴らしい旅に本当に感謝している。今こうして振り返ると、自分がキャリアで成し遂げてきたことが信じられない。それは周囲の支えなくしては実現できなかった」と、彼はお世話になった人たちへの感謝を綴る。
そのメッセージは、「バスケはいつまでも僕の人生の一部であり、これでお別れではない。次の挑戦を楽しみにしている」という言葉で締められていた。
彼の新天地は早々に決まった。ホーネッツが新たなヘッドコーチのチャールズ・リーの就任会見を行った時、そこにはケンバの姿があった。移籍した後もずっとシャーロットに自宅を構えていた彼が、古巣に顔を出すのは不思議ではないが、結び付きはそれ以上に強かった。チャールズ・リーを支えるスタッフが発表されると、そこにスタッフとしてケンバの名前があった。
引退発表からわずか数日で、ケンバは愛着のあるホーネッツで指導者としてのキャリアをスタートさせる。コーチ業はこれから学ぶことで、少なくとも当面は今までもそうだったように若手の良き指南役だろうが、彼が退団してキャリアが下り坂になるとホーネッツの関係者やファンは常に「ケンバを呼び戻すべき」との声を上げていた。
ケンバは全盛期を過ごしたホーネッツでは勝てず、プレーオフには2度出場のみでどちらもファーストラウンド敗退。その後のキャリアも努力が報われたとは言い難い。だが、ホーネッツは引退する彼に最大限の愛情とリスペクトを持って、コーチとして第2の人生をスタートさせるチャンスを与えた。