クリス・ポール

優勝を狙うはずが、戦力ダウン&年俸削減のオフに

ポール・ジョージはクリッパーズとの契約を破棄した。この先はフリーエージェントとしてセブンティシクサーズやマジックと交渉し、クリッパーズも含めた中から新天地を選ぶことになる。

ただ、この時点でウォリアーズという選択肢は消えた。ウォリアーズはジョージ獲得を目指していたが、それはクリッパーズとのサイン&トレードしかなく、ジョージがフリーエージェントになった時点で獲得の可能性はほぼなくなった。クリッパーズがジョージに提示しようとしていない4年契約を用意した上で、クリッパーズには1巡目指名権に主力選手を組み合わせて交渉していたが、クリッパーズの合意は得られず、ジョージを逃してしまった。

そしてウォリアーズは、クリス・ポールの来シーズンの契約を破棄した。昨シーズンに思ったほどチームにフィットしなかったことで、ポールはもはや構想外だったが、来シーズン3000万ドル(約45億円)の契約はトレードを行う際のサラリーマッチに活用できた。ジョージ獲得のためのクリッパーズとの交渉には、ポールが含まれていたはずだ。だがトレードはまとまらず、ポールの去就をこれ以上は棚上げしておけない。

ポールはウォリアーズが優勝を目指す上で大きな貢献はできなかったが、今でもNBA屈指のプレーメーカーで、サラリーキャップに余裕があるチームで『若手の指南役』としてのニーズは多いはず。スパーズなどが彼に興味を示すと見られている。

これでウォリアーズの年俸総額から3000万ドルが消えた。結果としてウォリアーズは、ポールをトレードで獲得したおかげでジョーダン・プールの4年1億4000万ドル(約210億円)という重い契約から抜け出せた。何年もリーグトップの年俸を支払い、高額の贅沢税を支払っていたが、これに加えてクレイ・トンプソンも抜けることでサラリーキャップを下回る。

ただ、現実はウォリアーズ本来の狙いとは矛盾した方向へと進んでいる。ステフィン・カリーが全盛期の間は優勝を狙い続けるはずが、戦力ダウンが止まらない。まだクレイ・トンプソンの慰留をあきらめてはいないが、彼の気持ちはもう新天地へと向いている。『スプラッシュ・ブラザーズ』としてカリーと組み、とはいえ常に2番手を受け入れてきたクレイは、34歳で迎えるフリーエージェントを機にキャリアで初めてウォリアーズ以外でプレーしようとしている。彼を欲しがるチームがいくつもある中で、彼を最も必要としているのがウォリアーズなのは間違いないのだが、昨シーズンにベンチスタートに回された屈辱が、クレイの中で決定打になったのだろう。

46勝36敗の10位、プレーイン・トーナメントで敗れたチームに何のテコ入れもせず新たなシーズンに向かうことは考えられない。そこでポール・ジョージを獲得できれば最高だったのだが、クリッパーズとの交渉はまとめられず、クレイとポールが去る。まだオフは始まったばかりだが、すでに後手に回っているウォリアーズはここから強烈な巻き返しがない限り、カリーの晩年を無為に過ごすことになる。