宮澤夕貴

「プレータイムとかも関係なく、ちゃんと自分の仕事をしようとコートに入っています」

パリ五輪に向け、バスケ女子日本代表は12名の本大会メンバーに対し16名まで絞られており、激しいサバイバルレースが行われている。ワールドカップ2022以来となる代表復帰を果たした宮澤夕貴も当落線上の1人だ。

Wリーグでは優勝した富士通レッドウェーブのエースとして、プレーオフMVPを受賞するなどトップスターの宮澤だが、代表での立場は違う。恩塚亨ヘッドコーチ体制で初のビッグゲームとなったワールドカップで、グループリーグ5試合で合計2得点と何もできずに終わると、その後はずっと代表に呼ばれずにいた。それが今春、本人にとっても大きなサプライズとなる代表招集を受け、2年ぶりに復帰を果たした。

Wリーグでの活躍が示すように、現在の宮澤はもともと定評のあった3ポイントシュートと堅いディフェンスに加え、ドライブしてのチャンスメークなどプレーの幅を広げている。オールラウンダーとして進化を遂げ、名実ともにリーグ随一のスター選手となった。しかし、代表では2年のブランクもあり、戦術の習熟度などで出遅れていることは否めない。昨日の強化試合で9分10秒のプレータイムに留まったことは、現在の宮澤が代表においてコアメンバーの地位にいないことを明確に示している。

だが、そういった状況を宮澤は素直に受け入れている。「この代表でできることを楽しんでやろう。プレータイムとかも関係なく、ちゃんと自分の仕事をしようとコートに入っています」

そして課題を感じつつ、「もうちょっと良い判断ができればよかったというシーンが結構ありました。ただ、ディフェンスの面でアグレッシブにいけたところは、恩塚さんになってからの代表で1番良かったのかなとは思います」と、手応えも得ている。

宮澤夕貴

「もっとパフォーマンスが良くなったら、プレータイムも増えると思っています」

東京五輪では主力として銀メダル獲得に大きく貢献し、今シーズンのWリーグでの傑出したパフォーマンスを見れば、今回の代表でもすぐに主力としての大暴れを周囲は期待したくなるものだ。宮澤も「友達とか家族とか、代表で活躍することを周りの人がすごく期待してくれています」と言うが、「ただ、チーム(富士通)と代表では違います」と、現状を冷静に受け止めている。

だからこそ、短いプレータイムについても「今は割り切れています」と語りつつ、序列を高めて出番を増やしたいという強い思いも持っている。「もう自分の仕事をやるだけで、もっとパフォーマンスが良くなったら、プレータイムも増えると思います。でも、現段階では与えられた時間の中で自分ができる仕事をやるだけで、(起用法に)歯がゆいとか、 そういうのはないです。ただ、確かにもっとコートに立って、活躍したいっていう思いはあります」

パリ五輪のメンバー決定までアピールできる機会は限られているが、恩塚ヘッドコーチのチーム作りのやり方も進化し、宮澤は2年前よりもやりやすさを感じているという。「今はチームとしてこれをやらなきゃいけないっていうことが明確になっています。そこはすごく変わったところの1つです。恩塚さんからもこうしてほしいとか、そういうのをストレートに伝えてくれるのでやりやすいですし、やらなきゃいけないことが明確です」

宮澤の個の打開力は、今の代表メンバーにおいてもトップレベルだ。ここからチームにフィットすることができれば、インサイドもしっかり守ることができ、3ポイントシュートでの爆発力を備えた宮澤は、日本代表のレベルをもう1段階上に引き上げるXファクターとなれる。